勇者の買い物
―主都ケルブ市街地―
「すいませーん!待ってください!」
ん?後ろから誰か来るな・・・。
「ちょっ!?待ってくださいよー!。」
ったく、誰だこんな大声張り上げてるやつは・・・。集中して買い物が出来ないじゃないか。
「シノギさん!無視しないでくださいよー!?」
どうやら呼ばれているのは俺だったらしい。少し待つか・・・。
「はぁはぁ・・・」
「街中ではあはあ言ってるやつに知り合いはいないんだがな・・・?」
「誰のせいだと思っているんです!?ゴホッ!」
おいおい・・・とりあえず背中をさするか。
「むせてるけど大丈夫か?無理に運動するからじゃないのか?」
「貴方という人は・・・ふぅ、少しは落ち着きました。ありがとうございます。」
「気にするな、身体を大切にしろよ。じゃあな。」
さて、買い物再開だ。
「はい、分かりました。って違う違う、そうじゃなくて!話があってきたんです!」
ふーん、話ねぇ。
「まず自己紹介させてください。私の名前はシグルドです。先程会議で顔を会わせてるはずなんですが・・・?。」
あー、被った人だな。
「覚えてるよ。若造って言われてたよな?さっき。」
「そうです。若造って言われてました。実際、新参もいいとこなんで特に腹はたちませんけどね。」
そこんところは割りきってんだな。
「んで、新参の若造のシグルドさんが何のご用ですか?俺見てのとおり買い物で忙しいの。」
「すいません。お時間はあまり取らせませんので、本題に入りましょう。」
簡単に纏めてみると彼の話というのは。
・お偉いさん方が俺らの動向を気にしていて、俺らに護衛を付けて安全な旅にしてほしいこと
・シグルドをその護衛として同行させたいこと
・シグルドは勇者同好会とやらに所属していて俺らのファンだということ
・・・どうこうってイッパイ言ってるね!
その話を考えると・・・
「その話は護衛の被り物をした監視だろうな。変なことしないように釘を刺してるつもりだろう。」
ふむふむ、頷くシグルド。
「シグルドは護衛もとい監視として俺に付いてきたいのか?命令なら逆らえないかもしれんが・・・」
「それについては大丈夫です。剣は嗜み程度ですが使えますし、その命令は不服どころか大歓迎です!」
「・・・気になったんだが勇者同好会ってなんだ?俺らが勇者として活動してから一年ぐらいしか経ってないはずなんだが。」
「勇者同好会というのは・・・・・・」
勇者一行の活動とやらを色んな所に広める会らしい。
冷静に考えると怖いな。自分の知らない人が一行の活動を広めているのは。
「というわけで、これから護衛として勇者様の身辺を守らせていただきます!」
はぁ、また変なのが付いてきたな・・・。
とりあえず買い物を済ませるか。
「よし!なら買い物を手伝ってくれ。あと、ついでに戦争が終わってからの2~3カ月、魔獣とかの被害がある街を教えてくれ。」
「魔獣の被害ですか?うーん、この主都周辺の情報で良いですか?あ、このお肉美味しそうですね。」
「そうだな、まずは近くからで良い次の行く場所の目安になる。お、ホントだ!レベルの高いGカウだな、宿屋で調理してもらうか。」
「目安ですか・・・。最近はフウランの村の近くに魔獣を含めた魔物が湧いてると噂を聞きますね。私もご相伴に預かって良いですか?」
フウランか・・・この主都から南に歩いたら1日ぐらいだな。
「最初の目的地はフウランにするか!情報収集も兼ねて2度目のデクダルの旅を始めるかな。おう、全然いいぞ。きっと美味いぞぉ。」
普通に話してたけど他の人からしたら2つの話をしてる変人じゃないか?シグルドも良く話せてるな・・・、コイツが護衛(監視)なら退屈しなそうだ。
とりあえず、明日も旅に備えて用意するとするか。
明後日ぐらいにはこの街を出たいところだしな。