予期されていた襲撃―終結、新たな騒乱へ―
「チィッ!」
【刀剣】の爪を掻い潜りながら攻撃を加えていく。しかし
「硬すぎだろっ!」
攻撃は当たる、だが致命傷には程遠い。思わず悪態を吐いてしまう。
まるで鎧を斬りつけてるみたいだな・・・。
「GRRRRRRRRRRR」
鬱陶しそうに唸る【刀剣】。まるで効いてないな・・・。うんざりするね。
「ふぅ・・・落ち着け」
きやすめ程度には落ち着く心。体と心を落ち着かせるのが大事なことだ。
剣を鞘に収め、九割の意識を自分へと向ける。
「GRRRR・・・」
いきなり動きを止めた俺を不審がる【刀剣】
「(我ガ剣閃、防グコト能ワズ)」
呑まれるな! 心にそう強く念じる。イメージするのは「線」。刀が描く「線」は昇華され鉄を切り裂く「閃」へと至る様子をイメージする。
溢れる殺気と体の熱で意識が暗くなるような錯覚に陥る。まだだ! 今じゃない。動きたがる体を押し止める。まるで熔鉱炉に突っ込まれている鉄の気分だ、固く、研ぎ澄まされている感覚が分かる。
「(真剣一体、我人ニ非ズ、剣ナリ)」
自分を消せ!俺は剣だ・・・!
ドクンッ!心臓が跳ねる音が大きく体内で響く。
「GRYAAAAAAAAAAA!!」
痺れを切らしたのか突然飛びかかってくる【刀剣】
来るッ!
十割の意識を【刀剣】に集中させ迎え撃つ用意をする。今まで溜め込んでいた力を開放し【刀剣】にぶつける。
「覇ァァァァァァァッ!」
斬る。その行為に無駄があってはいけない、師匠はそんなことを言っていた。
剣を収めた状態から抜き、敵を切り裂く抜刀術。対して剣を持った状態で、敵を切り裂く剣闘術。これらに共通するのは無駄があっては完璧とは言えない、一片の曇りがあってはいけないということ。
師匠からしたら及第点レベルの剣術だけど
「お前の鎧を斬るには十分だったみたいだな【刀剣】?」
【刀剣】は俺が刀を収めると同時に崩れ落ちた。体に横一文字の紅を付けて・・・。
――――――――――――――――――――――――
「今の一撃見えたか・・・?」
レイスに問うシャギル。
「見えなかったな・・・。斬る瞬間だけ殺気が溢れて、思わず身構えちまったけど。珍しい武器に珍しい構えねぇ、なんでこんな町に埋もれてたんだかね?」
「ふむ、確かに珍しい構えだったな。あの構えになった瞬間から気配と殺気が薄まってて、【刀剣】が不審がるのも当然だったな」
自分では一対一ならまず勝てないだろう。そう思ってしまう程の殺気をシノギから感じた。
「おーい!レイスー!シャギルー!返事をしてくれ!」
リーン団長の声が聞こえくる。団長の方は終わったみたいだな。
「ん、呼ばれているんだろ?行ってこいよ。今回は助かった、ありがとな」
「それはこちらの台詞だシノギ。今回の目的の一部である【刀剣】の討伐への協力感謝する」
「なぁなぁ!さっきの技がお前が言ってた技術ってやつか?」
「なんだ聞こえてたのか。師匠から教えてもらった基礎の技[静寂]だ。本当なら斬るときも殺気が溢れないんだが俺はまだ未熟だからな」
殺気を制御して意識を向けるのは難しい。自然体で斬り殺すなんてのは色んな意味で人外の領域だ。
「ふぅん。じゃあシノギは相当強いんだよな?勝負しようぜー!」
「止めとけレイス。俺らは仕事をしに来たんだ。遊びに来たんじゃない」
レイスを諌めるシャギル。仲良いんだな。
「ひっでぇ自分だけシノギと遊んでよー?俺だけ除け者ってか」
拗ねやがった・・・。子供か。
「分かった分かった。そろそろ本当に行くぞ!団長に報告だ」
「うぇーい」
気の抜けた返事と共にレイスとシャギルは姿を消した。
はぁ今日は疲れた。ギルドに報告だけするか・・・。町を騒がしてた【刀剣】も倒したし。
――――――――――――――――――――――――
「ご無事でしたか!シノギさん。メイブさんならもう戻ってきてますよ」
いつもの職員に声をかけられる。俺はもう最後の方だったみたいだな。たしかに【刀剣】付近の魔物はいなかったけれども。
町の中の魔物は掃討出来たみたいだな。良かった良かった。
「あ!シノギーこっちこっち」
内設されてる酒場の方から声をかけられる。
酒くせぇ!飲むのが早ぇ!出来上がってんじゃねぇか!
「はいはい。今行きますよっと。 ん?」
ドンっと足に何かが接触した。
「あ、ごめんなさい!」
そう言って走ってギルドの外へ出ていってしまった。何だったんだ・・・?
「何してるのー?早くぅ!」
酔っぱらいの相手は疲れるんだけどな。
「お、来た来たーメインゲストの登場です!はい皆さん拍手ー」
パチパチパチパチ
ギルド中から響く拍手。なんのドッキリだコレ?あまりにも唐突すぎて反応できないでいると近くにいた冒険者が
「いやーお前さん良くやってくれたよ!なんせあの【刀剣】を倒しちまうんだからな」
あぁそのことについてか。
「あれは傭兵が雑魚を散らしてくれたからだ。俺は【刀剣】に一太刀浴びせただけだ」
「いやいや!それでも倒してくれたことには変わりない。ほら飲め!今日の功労者だからな」
「んじゃお言葉に甘えて」
喉を鳴らしながらジョッキの中を一気のみする。
「ガハハハハ!いい飲みっぷりじゃねーか!」
まぁな。これでも酒は飲める方だからね。
そんな喧騒のなか透き通るような声が響いた。
「そこの主ら――シノギとメイブといったか?二階へ来てくれ」
喧騒が止む。
背後の声に顔を向けると小さい女の子がいた。
「なんだこのチビッ子?」
「ほほう。妾をちび呼ばわりか!殺してほしいのか童?」
一瞬にして空気が凍り、膨れ上がった殺気が俺に刺さる。
「悪かったよ。女に対してチビッ子はないよなー。ごめんごめん」
自分でも軽薄な台詞だと思う。だが口は止めれんのだ!
「フン!身の程を、そして礼儀を弁えろ童。妾は気の長い方ではない。もう一度だけ言うぞ二階に来い」
引っ込めてくれたか・・・。
「ついてけば良いんだな。おいメイブ!行くぞ。ご指名だ」
「ふぁーい。今行きますよー」
と言いつつ動かないメイブ。まだ酔っぱらってんのかコイツ。
「おぶって行くぞ、いいか?」
「任せたー」
しょうがねえなー。
よいしょっと。
「アンタ何者だ?足音全然しないし、俺に話しかけた時気配消してたろ?」
「クカッ!面白い童だのう。足音が聞こえないのは主が未熟なだけ。気配を感じ取れないのも然りだ。何者だなどと下らない質問はするでない、ヒントは既にばらまかれておる」
む。反論出来ない。しかしヒント・・・ねぇ。
「んじゃあ質問変えるわ。アンタみたいなプロがなんで案内人なんてチャチな仕事してんだ?」
「ほう?いい着眼点だ。これは仕事ではなく、知人からの頼みだからやってやってるだけだ」
そういうことね。
「ふぅん、納得したわ。で知人って?」
「詮索しすぎじゃ。焦る男はカッコ悪いのぅ」
「カッコ悪くないし。知識欲満たしたいだけだし」
本当ですよ?
「それこそどっちでもええじゃろ。っと」
着いたみたいじゃの、と言いつつ扉を開く少女。
「妾の仕事はここまでじゃ。ここから先はヤツの管轄じゃ」
ヤツ・・・一体誰だ?なんとなく予想はつくが、まさかな。
「来てくれましたかシノギ!」
そこには
「覚えてますよね?!私ですよ私。シルファンですよ!」
いわゆる予想通りで
「今はギルドマスターなんて大層な職に就いてますけど、シノギの為なら私は身を粉にして動きますよ!」
ある意味予定外の
「あれ?なんで固まってるんですか?もしもーし」
人物がいた。
騒動の臭いしかしねぇぞ、オイ。




