予期されていた襲撃―【刀剣】の力
――フウランの町・市街地――
「ふぅ、これで何体目だ?魔物を殺したの」
流石に辟易してくるぜ、そんなに強くないとはいえいかんせん量が多い。二十ぐらいから数えてないけどなっ!
「ギシャアアアアァア!」
「ええい!多いんだよ!何でこんなにランドワームばっかいるんだよ!」
感覚増幅の技術は想像以上に負担がかかる。常人の数倍の感覚を持つことは人の身には重すぎる。
ムラマサも飽きてきたらしい。さっきから嫌な感情をビンビン伝えてくる。俺も嫌なんだよ!この量は!
「ん?流れが変わった・・・か?」
少し敵の波が引いた。
「なんだ?つか、おかしくないか・・・。魔物は違う種類な魔物と協力はしないはずだろ?」
嫌な予感がするな・・・っ!
視界の端を影が過った。
「GRRRRRRRRRRR!!」
瞬間、目の前が爆ぜて粉塵が撒き散らされる。
「おいおい・・・。予想以上のやつがきたぞ・・・ッ!!」
息つく隙もなく影が首を狙ってくる。
デカイ・・・爪か?
分析しつつ回避を続ける。挙動は四足動物のソレだが早さと重さが段違いだ。よって受けるのは下策、かすっただけで致命傷だぞ!
獣の行動で立ち込めていた粉塵が晴れる。そこにいたのは――
「GRYAAAAAAAAAAAAA!!」
「虎・・・か?」
疑問符が付いたのは色と形がおかしかったからだ。
縦縞模様ではなく金色の桜の花弁、体の色は鈍い銀。最近聞いた特徴と一致している。
ということは
「お前が【刀剣】か!?」
「GAAAAAAAAAAAAAAA!!」
本能的に耳を塞ぎたくなる。
俺に返事した訳ではないだろうが何度目かの雄叫びを上げる【刀剣】。それに反応して包囲網を敷くランドワーム。
やはりおかしい・・・。まるでランドワームに命令しているみたいじゃないか。
膠着状態だ。下手に動くとランドワームに圧されるこの状況、どう打開する?
すると、突然包囲網が崩れた。ラッキー!
「フッ!」
「ギギッ!」
背後なランドワームを斬って包囲網から脱出する。
「大丈夫か少年?」
「よってたかるとか魔物ってエグいな」
そこには黒衣を着た二人の少年がいた。
俺が何も喋らないでいると
「手助けは要らなかったか少年?」
バツの悪い顔で謝ってきた。
「いやこっちこそ悪い、正直助かったわ」
なんともいえない空気が辺りを漂う。だー、こういうの苦手なんだよな。
「悪いけど手伝ってもらえるか?包囲網がなければ勝てるんだが・・・」
「やつは【刀剣】だろう。少年の剣が通ると思わないが?」
「剣は通る、そういう技術があるんだよ。任せてくれ」
「ふむ目的は同じのようだな・・・、その提案に乗る。少しの間だが協力しよう。俺はシャギル、アイツはレイスだ」
「俺はシノギだ。早速だけど包囲網の斬り込み任せていいか?」
「任せておけ! おいレイス!少し退け!」
今までランドワームの包囲網の中で斬っていたレイスと呼ばれた少年は顔をこちらに向けずに
「おう!話はすんだか!?任せたぜシャギル!」
頷いたシャギルはレイスが包囲網から出るのを確認せずに口を開き詠唱を始めた。
「燃え墜ちる烈日の咆哮、汝らの生を焼き払わん」
極限まで切り詰められた魔術。芸術すら感じさせる制御能力。コイツらただ者じゃないな。
魔術は詠唱し放つだけなら簡単だ。魔導書に記されいる文言を一時一句間違えずに詠唱すると、魔術になってこの世界に干渉して現象になる。
なーんだ簡単じゃん!っていざ使ってみると痛い目を見る。そしてどんな魔術でも詠唱はまぁまぁ長い。
例えば初級の火の魔術フレイムは
「術の双腕、世に秘められし熱を撃て」
これが2節で唱えられる初歩的な魔術。これを詠唱しても駆け出しじゃ魔物一匹殺せない。
ここで重要なのは詩。術は自分が理解してるかしてないかで大きく変わり、言葉の意味でも大きく変わる。
[双腕][秘められし熱][撃て]
フレイムの魔法はこの三つで成り立っている。この三つのうちどれかが違う詩に変わるとそれはフレイムではない別の魔術に変わる。
[双腕]は発動する場所。[秘められし熱]は強さ。
[撃て]は現象になったあとの動き。
という風な意味に大まかになっている、と思う。
これを詠唱すると、二つの腕からそこそこの火がかなりの速さで手の向きに合わせて出る。
まぁこれ以外でも性能に変化をだせるんだが・・・。
ムラマサとの勝負の時に使った魔術は自爆魔術と言われるものでかなり特殊な部類になる。自分が死ぬ、もしくは死にかける前提だが威力はお墨付きで範囲も広い。
アレは魔術の向きが敵と自分にも向いているから詠唱しなくても発動できる。いちいち敵を確認しなくていいからな。
こんなことを考えてる場合じゃないな・・・。あの魔術は[烈日][汝らの生][焼き払わん]
その詩から推測すると[烈日]は太陽。ターゲットは敵の命。[焼き払わん]は広範囲。
つまりあのランドワームの群れは全員焼け死ぬ。
「プロミネンスハウル!!」
レイスが完全に退いたところで魔術が発動した。
群れが爆発した。あまりの熱量に思わず顔を覆ってしまう。
恐ろしく制御が細かい魔術だ。爆発は家屋に被害を出さず敵だけを文字通りに焼き払った。
俺には到底真似できない芸当だな・・・。
「これを避けるか・・・!? 任したぞシノギ!【刀剣】を討て!」
膝をついて言うシャギル。
「合点だ、ゆっくり休んでろ!レイスはシャギルの周囲の魔物を頼む」
「いきなり呼び捨てぇ!?ったく生意気だな!任しとけ」
目の前にはあの魔術を避けて悠然と立つ【刀剣】。
相手にとって不足は無ぇ!!
ムラマサを腰だめに構えて【刀剣】の下へ走る。対する【刀剣】も爪を構える。
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「GAAAAAAAAAAAAAAA!!」
互いの武器が交差し固い金属音と共に火花を散らした。




