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予期されていた襲撃―万全の対策

 ザザッ!ザー・・・ザッ!

 世界にノイズが走る。

 視界が紅い文字で埋まる。

「――――――します」

 その声は一体誰のモノだったのだろう――。

 ――町長の屋敷・応接室――

「町長が不在ィ?! またあの人は何処へ行ったというのですか!」

 お~怒ってますねヨシノさん。しかも「また」って。

「昨日の内に約束してたではありませんか!まったくなにを考えてるんですか!」

「いえ、そのようなこと私に言われましても・・・。主が帰ってくるまで家の中で待っててくれると・・・」

 なんか応対に出てくれた人がしゅんとして可哀想になってきました・・・。

「え?町長ってそんなにホイホイ出掛けてもいい職業なんですか?」

「他の町の長はそんなことしないよ普通。正直見通しが甘かったとしか言いようがない。 話は伝えた筈だよね?」

「はい!私の口から町長にきちんと伝えて了解を得ました!」

「じゃあなんで今この場にアイツはいないんだぁあ!!」

 ヒッ!すごい顔になってますよ、ヨシノさん。

 その言葉に一同は肩を震わした。

「それで町長は何処にいったんだ?もしかしたら向かった方が早いんじゃないか?」

 ナイスアイデアー、エルメスちゃん。

「いえ、そのー、なんと言いますか・・・」

 言い淀む執事風の人。そういえば名前聞いてませんね、町長といいこの人といい。

「何処へ行ったか分からないんですよ・・・。朝に部屋へ向かった時にはもう部屋にいなかったので、深夜から出掛けているのかと・・・」

 なお今は昼だ。13時ぐらい?かな。

「ですが!こういったことは以前に何度か起きているのでもう少しで帰ってくると思います。だから大丈夫です!」

 それはもう大丈夫じゃないんじゃないかな・・・。

 私たちの空気が諦めた感じになっていると、その空気をぶち壊すかのように声が聞こえた。

「たーだーいーまー!」

 そんな声の後にドタドタッ!と音が近づいてくる。

「ふっ!とう!」

 くるくるくるくるシュタッ!

 おお!華麗な回転からの着地。

「やはり私を呼んだのは君だげぶふぁっ!」

 ドゴッ!

「遅ェェェェエエエエ!」

 速っ!ぶっ飛んで行きましたよ今!?

 華麗さを通り越して壁にめり込み気味の町長。

 そっとしておこう・・・

「って!なんてことしてるんですか!?流石にまずいんじゃないですか?こんなことしたら」

 思わずヨシノさんに対して声を荒げる私。

 慌てる私を見てヨシノさんは

「あぁ、そうでした言ってませんでしたね。彼女は知り合いなんですよ。俗に言う腐れ縁ってやつです」

 声は明るいのに顔は恐いという芸当をやりつつ、倒れ伏した町長に近づくヨシノさん。

「まずいのではないか?あれ以上は知り合いといえど死ぬのではないか?」

 焦るエルメスちゃん。

「ですけど、あれに近づくなんてどれだけ命知らずって話ですよ」

 そんな会話をしている内に辿り着いたヨシノさんは彼女に手をかざして

「癒しを」

 回復魔術の使い手だったんですねヨシノさんは。慈悲深い人ですね。なお顔は恐いままです。

「んっ!...何故私はここにいるんだ?」

 記憶無くしていらっしゃるー!

「もっかい叩けば治りますかね?その頭」

 まさしく鬼!といった形相のヨシノさん。迫力が違いますね。

「おいおい冗談も通じなくなってしまったのか君ィ?覚えているよ何もかもね」

 特徴的な透けるような服を身につけた少女が全てを見透かすような瞳で私たちを見る。正直怖いです。

「まずは遅れてしまったことを詫びよう。済まなかった英雄の末裔、魔王の娘よ」

 この人っ!

「エルメスちゃんはまだしも、私のことまで・・・!」

「何を驚くことがあるのだ?言った筈だぞ「何もかも覚えている」とな」

 どういうこと・・・?まるで私の先祖に会ったかのように喋ってるけど...。

「ふふっ。まぁいい今は、な。

 おっと、私としたことが名を名乗っていなかったな。私の名前は――」

「彼女はアスタルト、この町の長でありながら冒険者でもある最大級の変人です」

「・・・私の台詞を取らないでくれヨシノ」

 アスタルト?どこかで聞いたことあるような・・・。

「アスタルトだって!?昔、人との争いで死んだって・・・父は言っていたぞ。まさか偽者が騙っているのか?」

 知り合いなのかな?。少し気になるけど・・・。

「そう、先の茶番が始まった時に私は存在を消されていた。だが死ぬ必要は無かったという訳で。アスタルトという存在が魔族、人族の歴史の中で死んだということが大事だったのだ。それが魔王の望み」

「魔王の望み?部下が戦死することが?」

「さぁ・・・?彼女の、魔王の考えていることなんて本人しか分からないだろうな。私にはなぜ人間との戦争を止めたのかも理解の範疇を越えているね。こんな種族滅ぼしていいと思うんだがな」

 嘆息するアスタルト。結局魔族なのこの人?

「そういえばヨシノは何の用件で私に会いに来たんだ?シノギとやらはいないし、早く帰って来た意味がないんだが」

 プルプル震えているヨシノさん。活火山を彷彿させる動きですよ・・・!

「どうした?ほれ、早く用件を言え」

「っだぁあぁあ!!いい加減怒りますよ!怒っていいですよね!?」

 あ、怒った。エルメスちゃんとお茶請けのお菓子を二人でポリポリ食べて傍観中。

「何を言ってる?既に怒っているだろう君は。私がいつもより早く帰ってきたのに・・・」

 冷静に返すアスタルト。

 あれで早かったのか・・・。遅刻するのが基本みたいですね

 ヨシノさんとアスタルトの口論(?)は暫くすると終わりました。

「ふぅ、取り乱しました申し訳ありません。それでは本題に入りましょう。エルメスさんお願いします」

 ボソッと、君のせいじゃないのかとか聞こえたけどヨシノさんが目で止めてました。

「あ、ああ。これをご主人様からアスタルト、つまり貴女宛に届けに来た」

「ふむ、この手紙は確かに私が受け取った。時に魔王の娘よ、魔王は元気か?」

「・・・父は相変わらず元気。それよりもなぜ貴女が人間に紛れて生活、しかも町長なんて地位のある人になっているの?」

「人の世に紛れることが私の仕事だからね。町長になったのは完全に成り行きだがな」 

 その言葉に考える素振りを見せずに即答するアスタルト。

「成り行き・・・。そんな簡単になれるものなのヨシノ?」

「そんなわけないじゃないですか!町の人たちの信頼を勝ち取らないないとなれない職業ですよ、長というのは」

 そんなヨシノさんの言葉を笑うように

「信頼なんて不確かな物はコロコロ変わるからな。タイミングとその時の情勢に合ったことを言っていたら注目するものだよ人は。見たいものを視て、聞きたいことを聴く、それが人間だ」

 途中から吐き捨てるように言い方を変えたアスタルト。嫌な思い出でもあるのかな。

「まぁ私のことは置いといて。用件は君のご主人とやらの手紙を私に届けることだけかな?」

 まぁ私は特に用はないけど・・・。ヨシノさんやエルメスちゃんは?

「今回の私の用件は町長への案内だけだから、特にない」

「私も手紙を届けたから・・・」

 二人とも特にないのね。

「そうか・・・。なら今日は早くヨシノの家へ帰るがいい」

「なんでですか?まだ昼ですよ」

 いきなりの催促にびっくりする私たち。

「それはだな――」

「ご報告します!アスタルト様!」

 扉を蹴り開けるかのように入ってきた守衛。

 護衛に対し無言で続きを求めるアスタルト。

「魔物がこの町に攻めてきましたっ!如何なさいますか?」

「選択の余地などない。何のために最近、傭兵を雇ったと思っている?」

「はっ!かしこまりました!連携をとって撃退します」

「戦闘での権利は「やつ」に任せてある。一昨日にも防衛の依頼をギルドに出してある。

だが!町人に手を出させるな、いいな!」

「任せてください!指一本触れさせません!」

 嵐のように過ぎていく会話。なんか町長としての威厳を今見た気がする。

「依頼を出してあるって言ったり、傭兵を雇っておいたってどういうことですか?」

「簡単なことだ。この、魔物の襲撃というのは起きることが決まっていたのだ」

 既に決まっている?

「これは別に予知や預言ではない。何も特別なことはしていないぞ」

 自慢するわけでもなく、当然のことを言うみたいに言った。

「まだ約束の時間まで少しあるな・・・。ちょうどいい説明してやろう」

 その落ち着き払った態度を見てヨシノさんが怒る。

「私たちは助けに行かなくていいんですか?!貴女は町長なんですよ!なぜ、そこまで落ち着いていられるんですか?私だけでも――!」

「落ち着けヨシノ、しばらくすれば襲撃は収まる。今君が行ったところで何も事態は好転しない、むしろ悪化する可能性だってある」

「なぜですか?!」

「言わなければ分からないのか? 君は地位を持ち人望もある。極端なことを言えば君を守るために死ぬ人もいるだろう。だから君のような人はそんな簡単に外を出歩いてはいけないんだ。それぐらい分かるだろう?」

 んぅ?なんだろうこの釈然としない感じは。

「くっ!確かに・・・。けどなにもせずにただ待っているなんて、私には出来ない!」

「ここで大人しく待っているのが正解だ。それが民の為なんだ!」

 外の喧騒が一段と激しくなってきた。

「あの~私たちもここにいた方がいいんですか?」

 恐る恐る聞いてしまう。

「さっきも言ったがもうじき収まる。ほらね――」

 ズズンッ!

 外から聞こえてくる喧騒は地響きと同時に静かになった。

 まるでアスタルトの言葉に反応するかのように・・・。

  

 うーん、拙い文ですいません。

 

  

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