3.となりのとなりのクラスの子~トラブル~
ゼェ…ゼェ…
「タイムはどうだった」
西北は今にも消えそうな声で言った。
「あ…えーとね…9秒89だね!お疲れ様!」
「お…おう…」
タイムを言った瞬間西北の顔が一瞬曇った。
「今度は俺だね。計測よろしく!」
「おう」
悠人は急いでスタート地点まで向かった。
パン!
悠人は見た目より運動は苦手なほうではなかった。
タタタ…
悠人は隣の人を追い越していった。
悠人は決して早くはなかったが、4人中2位だった。
「お疲れさん」
西北は走り終わって息を切らしている悠人に駆け寄った。
「あ、ありがと…タイムは?」
「7秒01や。お前速いんやな…」
「それほどでも…」
悠人は照れくさそうに笑った。
体育の時間が終わり、悠人達は校舎へ戻った。
予想以上にこの学校はトラブルとかが少なくていいかもな、と悠人は思っていた。
ガララ…
悠人がドアを開け、教室に入ろうとした瞬間、事件は起こった。
パリンッ。ガダン!
「ウァァアアッ!」
声は1クラスまたいだ先の教室から聞こえてきた。
悠人と西北は何事かとその教室の前へと走った。
すでに先生たちによって鎮圧されていた。
どうやらケンカではないようだ。
先生達は、さっきの声の主らしき人を囲んで事情を聞いていた。
「どうしたんだろうね」
悠人は西北にヒソヒソ声で言った。
「さぁな。どうせ誰かが挑発でもしたんやろ」
西北は冷ややかな視線で暴れていた子を見た。
「ふぅん」
悠人は西北のような冷ややかな目で見たのではなくどこか心配そうな目で彼を見つめた。
しばらくその場にいると、予鈴が鳴った。
悠人と西北は教室に戻ったが、悠人はさっきの子の事が忘れられなかった。
家に帰ってきた悠人は、母のおかえり、の声にも答えずに2階の自分の部屋に直行した。
学校のカバンを床にポイと投げ捨て、パソコンの電源ボタンを押した。
悠人は別にパソコンが好きなわけでもなかったが、毎日興味が湧いたことなどを検索エンジンで調べていた。
気づけば0時を回り、はぁ。と溜息をつきベッドに入る。
ベッドに入り、すぐに深い眠りに落ちた。
「う……う~ん……」
悠斗は大仏のような顔をして起き上がり大きく伸びをした。
ふと目を時計にやると授業はとっくのとうに始まっていた。
悠斗は階段を駆け下り、母を探した。
「おい!母ちゃん!起こしてくれよ!」
悠斗は怒鳴りながらドアを勢い良く開けた。
しかし1階のリビングは時計の秒針の音のみが響き、机の上に小さな紙だけが置いてあった。