1.入学〜喧嘩は仲良しの元?〜
1.入学
「はぁぁぁぁあ!?」悠人の大声に殆どの人がこちらを見た。
やっと自分が入学した高校を、間違えた事に気付いたのだった。
しばし興奮気味だったが我を取り戻し、自分のクラスを確認し、悠人は教室へ向かった。
ガラ……
「おはよ……うご………」
悠人は硬直した。
教室の中にはとても同じ生物とは思えないような見た目の者しかいなかったのだ。
耳や口にピアスをしている者、鼻にピアスをして牧場にいる牛にしか見えない者もいた。
悠人は忍者のごとく忍び足で自分の席に座った。
先生はまだ来ていない。教室の中も静かだ。
しん、としたこの間がとても悠人にとって不愉快だった。
悠人はキョロキョロを周りを見渡すが他の人と目が合わないようにずっと壁にある掲示物などに視線を向けた。
「よろしくな」
声の主は隣の席のヤンキーだった。
いきなりデカい声で言われたので驚いたが、悠人も「よ、よろしくお願いし…ます…」と答えた。
「緊張しとんのか?なんや、気にするたぁない。仲良くしようや」ヤンキーは言った。
「こちらこそ…」
体から魂が抜けたような声だった。
悠人はどうしてもこちらから話しかけることができなかった。
ダン!
いきなり教室のドアが開き、悠人は思わずゥァッ、と声をあげた。
日誌を教卓に置くと、いきなりチョークを持って黒板に自分の名前を書き始めた。
「鬼丸 竜也だ。俺はこのクラスの担任だ。よろしく。」
短い挨拶を終え、点呼を行った。
「西北 雷」
「ぅい」
どうやら隣の男は西北と言うらしい。外見はどう見てもヤンキーだが悪い奴ではなさそうだ。
「中島 悠人」
「…はい」
全員の名前を呼び終わると鬼丸は「いまから入学式だ。体育館に移動する。名前の順について来い」
生徒は全員廊下に出て歩き始めた。
悠人には入学式と聞いて一つ疑問に思う事があった。はたして、お袋と親父は来るのだろうか。親父は仕事があるから多分来ないが、お袋は間違えて桜ヶ丘高校の入学式に出席している可能性もあった。きっと息子が出てると思ってずっと他人の子供をビデオカメラで撮っているのだろう。
悠人はスタスタと体育館へ向かった。
中へ入ると紅白の幕みたいなものが体育館の壁面に貼られていた。
悠人は保護者席の真横の席だった。
隣を見るとヤクザしかいなかった。
やはりお袋は来なかったのだ……
まぁ、実際来ない方が嬉しいのだが。
その時、体育館の片隅から大きな声が聞こえた。
「ゆぅぅくぅぅぅんんん!」
体全体に鳥肌が立った。
絶対来ないと思ってたが来てしまった。
あの、母が。
「きゃぁ!ゆぅぅくぅぅぅんんん!かっこぃぃいいいい!」
ええい、黙れ。悠人は今にも口から言葉が出そうになった。
俺はジャ◯ーズじゃないし、恥ずかしいからどっか行ってほしかった。
「只今より、新桜ヶ丘高校入学式を開式致します。」ヤクザみたいな教頭が言った。
この高校は先生はヤクザで、生徒はヤンキーで、保護者もヤクザという
極悪一貫高校だったのだ。
悠人は朝起きたのが早かったこともあり、入学式中はかなりウトウトしていた。
校長や市の教育委員会の職員の人が挨拶をし、そろそろ閉式というところで事件は起きた。
バン!
体育館の重そうな鉄扉が通勤電車のドアのように勢いよく開いたのだ。
その瞬間体育館の中がざわついたが、式は進行している。
その重厚な扉の奥から出てきたのは、スーツ姿のヤクザだった。
出てきたヤクザが一人だけならマシだが後ろにぞろぞろと手下が体育館の中に入ってきた。
どうやら親分の息子が悠人と同学年の新入生のようだ。子供想いだな、と悠人は思ったが、子供からしてみたらなんて恥ずかしいのだろう。
体育館の床にツバを吐き捨て、空いているパイプ椅子に音を立てながら座った。
再び静まり、式は閉式を迎えた。
来賓、保護者、生徒の順に体育館から出たが、外ではさっき式の途中で入ってきたヤクザとその息子が大乱闘を繰り広げていた。
「二度とくんな!クソ親父!」
「なんやとテメェ」
「やんのかゴラァ!」
お母さんが二人の間にたって困った顔をしている。そりゃそうだよなとと思いつつ、自分のクラスがある校舎へ悠人は向かった。
一話をお読みいただきありがとうございます。赤トマトです。
なるべくgdgdにしないよう努めますので、これからも是非読んでくださると光栄です!