匂ひおこせよ梅の花
昔々。と枕元で語られる菅原道真の物語。
母親は、柔和とは言い難いが知性と教養に満ち溢れた美しい女性であった。
寝付きの悪い才気煥発な娘は、飛ばされた道真を思ってーーーー
「飛梅」で泣く男がカラオケに一人。そしてその妻は歌詞に興味を全く示さずに自分の歌を選んでいる。
歌い終わった彼に、
「自分の歌を先に知っていて太宰府で梅見て感動したって客のメールに歌の作者が嘆いていた」
と無愛想な声で伝えた。夫はまだ、涙を拭っている。
冬、室蘭。
妻にメールする独居男が一人。
歳暮で貰った食材を使って見栄えの良い料理を作ったという写真付きのメールに、風呂上がりの髪を拭きながら、何て返そうかと悩む梅の花が一輪。
東風吹かば
匂ひおこせよ
梅の花
主なしとて
春な忘れそ