表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/8

7 エンスト


「自転車で

ちょっとそこまで

散歩するって

言ったとたん


寝ていたソファから

跳ね起きて


今何時だと

思ってる?

危ないだろ?

世話が焼ける!って

けちょんけちょんに

けなした挙げ句


車でドライブ

してくれた


とはいっても

ポンコツ車じゃ

やっぱりエンスト


自転車で

行けばよかった

損した なんて

また言っちゃった

憎まれ口


顔を見てると

ついつい

出ちゃうの

無意識に


あんたは

お手上げだって

首振って


シート倒して

運転席で

勝手に

眠りこけたけど


隣で見上げた

空の満月

なんて明るかったこと


何にもない

真夜中の山奥で

お月さまだけが

煌々と照って


嫌いなはずの

音楽まで

スイッチ押して

聞かせてくれて


運転手は隣で

ふて寝して


エンスト直る

見込みもなくて

いつ帰れるとも

知れないのに


何にも

ちっとも

怖くなかった


いつの間にか

きれいさっぱり

気が晴れた


そして

口に出しては

言えないけど

心の中で

叫んでた


エンスト万歳って」 



「いったい

今何時だか

判ってるのか?


夜中に女が

1人でそこらを

サイクリング?


それじゃ痴漢に

手を貸してるだろ

自分から 


襲い甲斐がある

女かどうか

襲う前に

確かめるほど

世の中の

痴漢は

暇じゃないんだ


心中

怒り心頭なのに

顔睨んでると

怒る気が

失せてくるから

始末が悪い


君が

『いっしょについて

来てほしい』なんて

か弱いフリして

頼むような

女じゃないって

わかってるから

 

だから余計に

始末が悪い


眠くて眠くて

しょうがないのに

ああ

腹が立つ


ほったらかしにも

できないだろ

察してくれよ

この鈍感


恩着せがましく

した罰か?


よりによって

えらく侘しい

この山奥で

エンストなんて


ごめんよ


ブツクサ言いつつ

これでも

喜ぶ顔見たさで

ハンドル握って

連れ出したのに


君と2人で

今日は野宿だ


こんなことなら

最初から

自転車で

一回りしてきた方が

はるかに気分も

晴れただろうに

面目ない


かといって

口で言うのも

癪だから


音楽なんか

好きでもないけど

今日だけは

かけてやる


明日の朝まで

一晩がまんだ


襲ったりなんか

頼まれたって

しやしないから

安心しろ


たぬき1匹

通りもしない

山奥で


エンストの

ポンコツ車の

小さな屋根の

その下で


俺なんかと

一晩いっしょじゃ

落ち着かないか?


それにしても

物好きなこと


満月に星は

見えないんだって

何度言ったら

わかるんだ?


好きにしろ


見てたきゃ

朝まで

空見上げてろ


俺は勝手に

眠っちまうぞ」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ