6 番外編
「これ?
これはねえ
ヒマつぶしに
見ようと思って
仕事の合間に
撮りためた
結婚式の
番外編
たまたま式場で
カメラを向けた
見ず知らずの
参列者たちの
素朴なつぶやき
ねえ
これ見て
孫娘の
披露宴で
あっちもこっちも
笑いさざめく最中に
あるおばあさんが
答えて言ったの
ちょっと離れて
座ってる
傍らの
おじいさんを
振り返りながら
私に向かって
答えてくれたの
即答だった
忘れもしない
『生まれ変わったら?
生まれ変わっても
またこの人と
一緒になるわ
この年に
なるまでかかって
やっとこさっとこ
慣れたのに
また違う人と
最初っから
始めるなんて
冗談じゃない
面倒じゃないの
考えただけで
ゾッとするわ』
何度聞いても
笑えて泣けるの
これ絶対
名言よね」
「結婚式の
番外編?
他人の幸せの
クライマックスに
居合わせるなんて
商売してると
人間めでたく
なるもんだな
こんなもの撮って
自分の不幸を
慰めてるのか?
でも俺も
このおばあさんには
異議なしだ
特に君は
絶対
肝に銘じとけ
もしもだよ
もしも
何かの間違いで
いつの日か
君が
どこぞの哀れな
男をひとり
捕まえでもした日にゃ
絶対に
手放すなよな
もう二度と
そんなチャンスは
巡ってなんか
来ないと思え」
「私ったら
あんたのことを
サンドバッグの
代わりにしてた
いつ何どき
八つ当たりしても
暴言吐いても
“のれんに腕押し
ぬかに釘”
それをいいことに
知らず知らず
甘えてた
例によって
大失態で
くさくさして
なんでいつも
私に構うの!
しつこすぎる!って
ついつい
癇癪起こしたら
返す言葉も
しどろもどろに
ヘソ曲げちゃった
ごめんなさい
これでもほんとは
心の中で
ありがとうって
叫んでたのに
うまく口から
出なかったのよ」
「気にするな
片思いを
持て余すのは
お互い様だ
俺だって
つい最近まで
そうだった
イライラしてる
君を見ながら
慰めの言葉一つも
かけてやれずに
もどかしかった
君の気持ちは
痛いほど
わかっちゃいるのに
器用じゃないし
ついつい
軽口叩いたら
思ったとおり
君の機嫌は
悪化の一途
だから
お詫びというのも
何だけど
笑うのも
泣くのも
怒るのも
それから俺に
殴りかかるのも
男みたいに
豪快な君を
1回だけ俺が
撮ってやる
番外編の
一番最後に
付け足しとくから
いつか見てみろ
今を笑える
日が来たら
思うにこいつは
番外編の
どれにも負けない
傑作中の
傑作だぜ
お天気みたいに
ころころ変わる
君の表情
追いかけてたら
撮ってるこっちも
楽しくなる
だから
見てみろよな
俺がもうじき
隊に戻って
いなくなったら
いつか必ず」




