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4 T字路の右と左
「レンガ道を
突き当たって
左に行けば
美術館
右に行ったら
動物園
思えば奇妙な
隣り合わせよね
あんたは
失恋ほやほやで
私は万年
片思い
『気晴らしでも』って
珍しく
意気投合したわりに
案の定
ここぞというとき
水と油で
気が合わない
別に
恋人同士でもなし
あんたは右で
私は左
上等じゃない
なのに
1人で歩いた
美術館
なんでだろう
ちっとも
楽しくなかったのよね」
「俺を捨てて
ケロっとしてる
昔の彼女が
憎たらしくて
何だか無性に
気が立ってた
無邪気な顔して
君が内心
間違いなく
俺のことを
無様な奴と
笑ってるのが
これまた無性に
癪にさわった
暇つぶしだか
憂さ晴らしだか
2人で向かった
T字路で
俺たち見事に
右と左に
バイバイだった
いい年した
男がひとり
動物園を
ほっつき回って
何の嬉しい
ことがある?
入口を
入って早々
ボヤいてた
口を開けば
二言目には
食ってかかって
くる君だけど
案外それで
ちょうどいい
気がまぎれて
憂さ晴らしには
手ごろな相手
引きずってでも
動物園に
君を連れて
入るんだった」