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月の宮へ

神々も帰路につき始めた頃、蒼も瑤姫を連れて輿に乗っていた。月の里の家へ向かうのだ。

瑤姫の侍女達は二人を残し皆先に家の方へ行っていて、向こうで準備して待っている。今日を過ごすと、忙しないが二か月後には母の帰還を待ってまたあっちで人の世の結婚式であった。はっきり言って、疲れたが、傍にいる瑤姫を見るとがんばろうという気持ちになった。

維心と維月が見送りに来てくれた。

「お兄様、では参ります。」

維心は頷いた。

「達者でいるのだぞ。またこちらへも来れば良い。我も行くゆえな。」

瑤姫はうっすらと涙を浮かべて維心を見ている。維心は柔らかく微笑んだ。

「我のたった一人の妹だ。幸せにしてやってくれ。」

維心は蒼に言う。蒼は頷いた。何があっても瑤姫を守りきらないと!

「維心様にも、母をよろしくお願い致します。」

維心は傍らの維月を見た。

「心配は要らぬ。我の傍に居る限り、傷一つ付けさせぬゆえ。」

「ご出発ー!!」

お付の龍が叫び、輿は空へ舞いあがった。維心と維月がそれを見送っていると、炎嘉がやって来て話しかけた。

「維心よ、我ももう去ぬ。」

維心は驚いてそちらを向いた。

「いつも明け方まで飲んでおるのではないのか。」

と宴席の方を振り返ると、炎嘉のために揃えた見目の良い女達の輪の中に居て、楽しそうに飲んでいるのは炎翔であった。

炎嘉もそれを見て笑った。

「フフン、あやつは我そっくりよ。美女ばかりの龍の宮へ参ると言うたら、共に行くと言ってきかなんだ。先ほどより楽しくて仕方がないようであるがの、このままでは誰か連れて帰ると言い出さんかとハラハラする。ヤツにも正妃ではないが、もう三人妃がおるのだ。これから先のことを思うても、ここで連れて帰っては先々困る。」

炎嘉は炎翔の方へ歩いた。維心と維月は顔を見合わせた。血は争えないとはこのことか。

後ろ姿を見ていた維心が、フッと眉を寄せた。

「…維月、炎嘉は、何を申したのだ?」

唐突に聞かれて、維月は焦った。これって維心様に言ってもいいことなのかしら。口止めはされなかったけど…。

「あ、あの…お部屋に戻りまして、お話致します。」

「…もしかして、腕に痣が出てはおらなんだか?」

維月は息を飲んだ。維心には、何か見えているのか。その様子をチラッと見やった維心は、小さくため息をついた。

「…やはり、そうか。」

維心は険しい目になって炎嘉の後ろ姿を見続けていた。


月の里へ戻った蒼と瑤姫は、有や涼、恒、遙に出迎えられて地上へ降り立った。十六夜の姿はない。蒼はキョロキョロと回りを見回した。

「ただいま。十六夜は降りてないの?」

待ってるって言ってたのに。蒼は少し剥れた。

「いつも通り月に居るわよ。あなたのここでの結婚式にはまた来ると言ってたから、そんなに剥れないの。」

有は苦笑して言った。

《そいつはいつまで経っても親離れ出来ねぇんだよ。姿がなくても見てるって言ってるだろうが。》

十六夜の声がからかうように言う。その声を聞いて、なんだかホッとした。

「十六夜!だってここで待ってるって言ってたから…。」

十六夜は少し黙った。

《…気になることがあったんでな。今はあっちこっち見なきゃならねぇから、オレも忙しいんだ。お前も知っておかなきゃならねぇ事がある。また明日にでも話すさ。》

蒼は頷いた。

「じゃあ、また明日。」と有達を見て、「待っててくれてありがとう。改めて紹介するまでもないけど、これからここで一緒に暮らす、瑤姫だ。」

瑤姫は、美しく頭を下げた。

「よろしくお願い致しまする。有様、涼様、恒様、遙様。」

涼が笑って答えた。

「こちらこそよろしくね。いつも思うけど、呼び捨てでいいのよ。私達、そんなに偉くないから。」

瑤姫はためらった。

「でも、蒼様のご兄弟であられまするし」と蒼を見て、「やはり、そのように呼ばせて頂きまする。」

涼は肩をすくめた。

「いいわ。いいように呼んでもらえれば。」

蒼の屋敷の方では、瑤姫の侍女達が並んで待っている。蒼はそちらに足を向けた。

「じゃあ、また明日。村役場の方へも、明日挨拶に行って来るよ。」

また頭を下げた瑤姫を伴って、蒼は屋敷のほうへ歩いて行った。その姿を見送って、有はため息をついた。

「ついに先を越されちゃったわねぇ。」

涼は笑った。

「そうよね、有が一番先だと思っていたのに。」

「まさか蒼が一番先なんて、考えられもしなかったわね。」

有も笑いながら、家の中へと帰って行った。


蒼は、屋敷の中に入って、自分の部屋でくつろいでいた。

龍達に内装を任せた結果、作りこそ小さいものの、中身は龍の宮そっくりな出で立ちになっていた。まるで宮に居るようで、それでも落ち着く自分に驚いた。

建物もほとんど龍が建てた。人の大工も何人か雇っていたが、設計は龍なので、天井も高く、そして何より広い。美月が残したこの広大な敷地がなければ、とてもこれは建てられなかっただろう。二人+侍女10人を収容するには、あまりにも広すぎるような印象は否めなかった。

何より蒼が驚いたのは、美月の家が建て直され、こちらと長い廊下でつながっていたことだ。神には二階建ての概念がないのか、全部平屋であるので、とにかく大きな屋敷が出現した感じで、それは里の中でも際立ってしまっていた。いわく、これから神のお客様も多数訪れ、仮に瑤姫と蒼の間に子が生まれた場合、龍の宮ではなくこちらで祝いを催さねばならず、月の宮として機能する必要があるからなのだそうだ。

よって、神社に至っては、地下にまで渡り穴を掘り、居室を設けるなど、この一年で大大的な改装をされ、形こそはさすがに変えなかったものの、かなりしっかりとした、しかし美しいものになっていたのだった。

蒼はふと、龍の宮でも見かけた机の上に、自分のパソコンが乗っているのに目をとめた。なんだか、不釣合いなのだが、これがあちらとこちらの違いなのだろう。電気があり、ガスがあり、宮とは違う人間的な所もうまく融合させて、ここならではなものにして行こうと、蒼は思った。

龍の宮からついて来た侍女が、頭を下げて入って来た。

「蒼様、瑤姫様のご準備が整いましてございます。今からこちらへご案内してよろしいでしょうか。」

侍女も人の服装をしている。きっと慣れようと必死なのだろう。蒼は頷きながら、言った。

「待っていると伝えてくれ。それにしても、龍が人のふりをするのは大変だろう。ここには電気もあるし、君たちには大変なんじゃないか?」

侍女は話しかけられたことに驚いたようだが、答えた。

「…はい。最初は何もかも扱い方が分かり申せず、大変に困りました。ですが有様がたが大変に丁寧にお教えくださいましたので、今ではなんとか使いこなせましてございます。慣れてみると、とても便利なものでございますね。小さな突起を押せば、明かりはすぐに付きますし、火の番をしなくてよろしゅうございます。服も、脚に絡まることもなく、たいへん軽いのでご奉公しやすいのです。」

蒼は笑った。

「確かに女の人は大変だ。あんな裾の長い服で、いろいろ動き回るんだもんなあ。」

侍女も笑っていたが、ハッとして頭を下げた。

「瑤姫様をお呼びしなければ。失礼いたします。」

侍女が下がるとすぐに、瑤姫が白いネグリジェのような裾の長い夜具を来て入って来た。化粧も落として髪ももう結い上げていなかったが、それがまた美しくて、蒼はまた見とれた。

瑤姫は恥ずかしそうに差し出された蒼の手を取った。

「私、このように素顔で人前に出るのは初めてでございまするゆえ、とても不安でございました。それに、人はこのようなものを着て眠るのでございますか?侍女達が調べて作ってくれたのですが…私には軽すぎて、何やら心もとのうございます。」

蒼は笑いながら瑤姫と共に、龍の宮でもあった寝台へと歩いた。

「別にそれに限ったものでもない。もしよければ、オレが着ているのと同じようなものでも、女の人は着て眠るよ。」

と蒼はスウェットスーツを指した。瑤姫は首をかしげている。

「…別に寝るときぐらい、着物でもいいと思うけど。今まで着て寝ていたものを、明日からは着るといい。」

蒼はそう言って、瑤姫を抱き上げて寝台へ降ろした。自分も隣で横になって、瑤姫の顔を上から見ると、瑤姫は目をつぶって固くなっていた。蒼は思わずフッと笑った。

「…瑤姫、それではオレがこれからまるで君を殺すかのようじゃないか。」

からかうように言うと、瑤姫は目を開けて心外なという顔をした。

「まあ蒼様、私はとても緊張してしまって、蒼様のようには…。」

「オレだって緊張してるさ」蒼は瑤姫の顔の両側に腕をついた。「こんなに美しい花嫁なんて、オレにはもったいないと、今でも思っているからな。」

瑤姫は微笑んだ。

「蒼様…」

蒼は瑤姫に口付けた。

その夜、蒼には、十六夜や維心の気持ちが、やっとわかるようになったような気がした。


龍の宮では、維心と維月は炎嘉を見送ったところであった。

やっぱり帰るのを渋っていた炎翔であったが、炎嘉には逆らえず、仕方なく名残惜しそうに帰って行った。帰り際炎嘉は、炎翔が忍んで来たら追い返すよう、維心に言って帰って行った。維心は苦笑して頷き、炎翔は絶望的な顔をしていた。確かに維心に阻まれれば炎翔には決してこの宮に近付くことは出来ないだろう。

「部屋へ帰る。」

維心は回りの龍達に言い、あとは臣下に任せて広間を後にした。維心が帰るのだから、維月も帰らなければならない。出入り口で待つ維心の方へ、維月は慌てて歩いた。ああ本当に、神達の習慣ったら…。

維月が黙って歩いているので、維心はそちらをハタと立ち止まって見た。

「どうしたのだ、維月。いつもなら、我が黙っていても話しておるものを。」

維月は維心を見た。

「まあ維心様、まるで私をおしゃべりの機械か何かのように」

維月が頬を膨らませて居ると、維心はその頬をつついた。

「すまぬ。何か気にかかることでもあるのか?」

維月は下を向いて歩き出した。

「…とてもかんざしや着物が重いので、一生懸命歩いていただけですわ。」

維心は眉を上げた。

「そんなに重いなら、我がここで脱がしてやっても良いぞ。我がどこで何をしようと、誰も何も言わん。」

維月は真っ赤になった。

「維心様!」

維心は笑いながら維月を抱き上げた。

「冗談だ。こうして運んで行ってやるゆえに。そのように浮かぬ顔をするでない。」

維心は軽々と維月を抱いて歩いている。首に手を回して落とされないようにびくびくしながら、維月はその腕に揺られていた。維心は、あの最後に心をつないだ時以来、とても穏やかになった気がする。めったに軽口など叩かなかった維心が、最近では維月をからかったりするようになった。そんな維心に、炎嘉のことを言うのは気が重かった。きっと死斑のことは気付いているのだと思うが、その先の頼まれたことは、言うべきなのだろうか。そんなことを考えながら、じっと維心の端正な顔を眺めていると、維心はまた立ち止まった。もう居間にまで到着していた。

「今度はなんだ?維月。」

「…こんな方法があるのなら、先ほども全て抱いて行っていただけばよかったと思って。とても楽なのですもん。」

維心は目を丸くしたが、すぐに声を立てて笑った。

「こやつめ、王の私に運び屋をさせるつもりであるのか。」

維月は維心があまりに笑うので、ちょっと腹が立った。

「まあ維心様、では他の龍に運ばせるおつもりですの?」

維心は、ふと笑うのをやめた。

「それはない。ほかの龍にこのようなこと、させてはならぬ。」

維月はにっこり笑った。神様って本当に正直なのね…。そう思うと、なぜかとても愛おしくなって、維月は首に手を回したまま、維心に口付けていた。

ハッとして、慌てて離れた維月が暴れたので、維心はバランスを崩して、居間の大きなソファの方へそのまま倒れた。維月は顔を伏せて離れようとした。

「申し訳ありません、維心様。私…自分からこのような…王であられるのに。」

私、人の乗りが本当に直らないのだわ。ここは龍の宮、このかたは王、私は女。女は、でしゃばってはならないのが神の世界の常なのに。王から望まれもしないのに、キスするなんて…。何より、恥ずかしすぎる。維心は、維月をひょいとこちらへ向かせた。

「何を謝っておるのだ。主から初めて我に口付たのだろうが。それの何が悪い。」

別に怒っているようでもない。維心は、ただ、不思議に思っているようだった。

「だって…神の女は、望まれもしないのに、こんなことしないでしょう?」

維月は下を向いている。維心はその顔を上げさせた。

「我がなぜそれを望んでいないと思うのだ。それほど我は、主に冷たくあったか?」

本当に心配しているような表情に、維月はまた愛おしさを感じた。これではいけないのに。十六夜を愛しているのに。でも、私はこのかたをも愛しているのだわ。

「いいえ、維心様」

維月は維心に口付た。維心がそれを受けながら、そっと心をつないで来るのがわかった。維月は心の中で維心に言った。《愛しているわ…。》

維心はハッとしたように口唇を離すと、維月を見た。

「…我は主からの誘いは断れぬのだぞ。」

心がつながったままだったので、維心が何を考えているのかわかった。維月は慌てて言った。

「維心様、奥へ…ここは居間でございますわ。」

「構わぬ。」

我関せずな維心に、維月はじたばたと抵抗した。

「誰が来るかわかりませんのに…そんなつもりで申し上げたのではありません!維心様!」

維心はフフンと笑って維月を押え付けた。

「我がその重い着物とかんざしを取ってしもうてやるゆえにな。」

こうなると、ダメだ。いくら優しいとはいえやはり維心は王なので、一度決めたら曲げてはくれない。維月は覚悟した。

そしてそのまま、そこで朝まで過ごすことになったのだった。


朝になって目を覚ますと、隣で維心が眠っていた。回りに散乱していた着物やかんざしは無くなり、いつの間にか布団が掛けられてあった。襦袢姿で布団から出るのも恥ずかしく、おそらく召使い達は知っていて、私達が寝るのを待って回りをそっと片づけたのだろうなと思うと、召使いの顔を見るのも恥ずかしかった。維心は、やっぱり王なのだ。何をやっても許されるので、こんな感じになったのだろうな…と維月は思った。それでも、素直に育っている方ではあるのだけど。

維月は恥ずかしいので維心と一緒に起きようと思い、維心の隣りにもぞもぞとくっついて横になった。

「ん…」

維心が目を開けた。どうするのだろうと思って見ていると、真っ先に確認したのは維月の場所であった。まどろみながら手で維月の場所を確認し、グッと自分の方へ寄せると、また目を閉じようとした。

維月は腕を頭に回してこちらを向かせ、軽く口付けた。するとパチッと目を開け、維月を見た。

「目が覚めておったのか。」

「はい」維月は微笑んだ。「でも、回りがきれいに片づけられていて…。」

維心は回りをチラッと見た。

「さもあろう。でなければ召使い達の怠慢であるの。」

やっぱり。と維月は思った。維心は別に恥ずかしくないのだ。

「だって維心様、このような所でこのような…」

維月はこれ以上は言わないでおこうと思った。人の世でも言うには恥ずかしい。

維心はにやりと笑った。

「主の責よ。主からあのように誘われては、我に断る術はありはせぬ。召使い達も驚いたのではないか?」

維月は思わず起き上がった。

「まあ維心様!私は別にお誘いした訳ではありませんのに!それに、奥の部屋へって言ったではありませんか。」

維心も起き上がった。

「そうか、奥か。では、参ろうぞ。」

維心は維月を抱き上げて立ち上がった。

「何をおっしゃっておられます?!今ではございません!」

声に気付いた召使いが頭を下げて現れた。

「王、お目覚めでございまするか。お手水はいかがなさいますか。」

ああよかった…と維月が思っていると、維心は言った。

「まだ、良い。しばらくしたら呼ぶゆえに。」

「ええ?!」

と維月が言う。召使いは頭を下げて下がって行った。

「さあ、参ろうぞ。昨日は我が応えたのであるから、今度は主の番だ、維月。有無は言わさぬ。」

寝台に下ろされながら、維月は言った。

「ですが維心様…このように何度も…あの、またお子が…。」

維心は眉を寄せてしばらく黙ったが、言った。

「…構わぬ。」

「維心様?!」

維月はびっくりした。それは月の里へ帰れなくなることを意味するのではないか。

「もう、構わぬ。十六夜に消されようと、我はもう充分に生きた。主と離れて、我はもう生きて行けぬ。」

維心はきつく抱きしめたあと、戸惑う維月と再び体を重ねた。


蒼は、朝の光に目が覚めた。

横に気配がし、それが瑤姫だとわかると、また暖かい気持ちになるのがわかった。瑤姫はまだ眠っていたが、本当に愛らしく、美しかった。この姫が自分の妻になったなんて、まだ実感がわかない。でも、昨夜のことは夢ではない。自分は瑤姫を、この容姿だけでなく本当に愛しているのだと、心底思った。他の誰にも触らせたくない、一緒に居たい…。そういう気持ちを、やっと蒼は知ることが出来たのだった。

しばらく寝顔を見つめていると、瑤姫が目を覚ました。蒼に気付くと、慌てて布団に顔をうずめた。

「お、おはようございます蒼様。私、寝起きでとてもお見せ出来る顔ではございませんので、少し失礼してお手水を…」

おずおずと背を向けて起き出そうとする瑤姫を、蒼は抱き止めた。

「なぜそんなことを?とてもきれいなのに。」

瑤姫は真っ赤になってもがいた。

「おやめくださいませ。私、こんな姿で恥ずかしゅうございます。」

ふと見ると、まだ夜具が乱れたままだった。蒼は瑤姫をこちらに向かせた。

「もうオレの妻なのだから、そんなこと気にすることないじゃないか。それに…まだ起きるには早い。」

瑤姫はさらに、白い肌を赤くした。それを見た蒼は笑って、また瑤姫に口付けた。


ようやく起き出したのは、昼近くになってからだった。

侍女達はなんでもないように早めの昼食を出してくれ、蒼が向こうの家のほうへ渡ったのは昼を過ぎていた。

十六夜が、建て替えられた新しい家の、自分の部屋で待っていた。

「おう蒼、遅せぇじゃねぇか。やっと親離れ出来たみてぇだな。」

ニッと笑う十六夜に、蒼は恥ずかしくなって下を向いた。

「な、なんだよ十六夜。オレは別に十六夜にべったりって訳じゃないじゃないか。」

十六夜は笑った。

「そうかあ?お前はしょっちゅう十六夜十六夜ってうるせぇじゃねぇかよ。」

う、と蒼は詰まった。確かにオレはなんでも十六夜に…。

「ま、まあそうなんだけど…。」

十六夜はため息をついて言った。

「とにかく、座りな。お前に話すことがある。」

蒼は近くにある椅子に座った。

「何かあったのか?」

蒼が言うと、十六夜は頷いた。

「炎嘉だ。」十六夜は蒼に言った。「あいつはもうすぐ死ぬ。」


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