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Lucky & Unlucky  ~アドベクシュ冒険譚~  作者: 暇犬
アドベクシュ冒険譚05章 ~狂乱の蛇神編~
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13 レガード、退屈する!

 燃えさかる焚火を囲んで魔将と会話した夜から数日が経過していた。

 謎だらけの言葉を残して姿を消したヒュディウスからは、何の音沙汰もない。

 レガードはイリアが居所と定めた建物のすぐ近くに拠点を移し、時折ふらりと樹海へと消えていく。あの日以来、二人が言葉を交わすことはなかった。彼が食糧調達のための狩りをしているだけではないだろう事は理解できたが、それ以上の事は分からなかった。

 水汲みをし、炊事洗濯をする。

 神殿では下働きの者たちがやっていた仕事を、己自身を生かすためにしなければならなかった。

 そして、空いた時間で遺跡内を探索する。

 逃走手段の発見と生活資材の発掘が当初の目的だったが、前者は冒険者ですらない彼女の足での大樹海突破はとても無理であると断念し、後者も彼女が暮らす建物以外の場所にはまったく生活のにおいがしないという現実から絶望的だった。

 遺跡の正体を探るべくあれこれと自分なりに発見と考察を繰り返したものの、神殿によって刷り込まれた知識しか持ち合わせのない身では、大博士よろしく革新的な仮説を打ち出し、真実を発見するなどという芸当を行うのは到底不可能だった。体験や経験に裏打ちされた体系づいた知識こそが初めて人を生かす知恵となる。一方的に刷り込まれ、あちこちから切り張りした知識の山など、所詮、生きることには何の役にも立たないことを、彼女は身をもって知った。

 退屈と無縁の一日はあっという間に過ぎ、疲れ果てた身体を横たえるとあっという間に翌日の朝がやってくる――彼女はそんな日々を過ごしていた。


 少し曇りがちなその日の空の下、彼女は中庭に石を積み重ねて作った作業台の上で前日に完成した燻製肉を切り分け、燻した木の葉を巻いて切り分ける作業を行っていた。

 レガードから奪ったミスリルナイフは抜群の切れ味を見せ、作業のスムーズな進行に一役買っていた。

 レガードとともに行った獲物の解体にはまだ、若干の抵抗を覚えたが、獲物が原形を失い肉塊となった後の作業は、比較的容易だった。

『命は他者の命を食らうことでしか存在しえない』

 その真理を幼い頃の彼女に初めて教えたのは、義父のライアットだった。

 高神官であると同時に冒険者でもある義父に連れられ、幼い姉達と共に行ったキャンプにおいて、ライアットは罠を仕掛けて捕らえた獲物を彼女達の眼前で殺して見せた。 彼の行った非道な振る舞いに、幼い姉妹達は涙を流して抗議し、やがて彼に口を閉ざし背を向けた。だが、その夜には育ち盛りの少女達は空腹を覚え、眼の前で殺されたばかりの獲物の肉を口にせざるを得なかった。

『お前達の命をつなぐため、死んでいったものへの感謝の心を忘れるな』

 葉巻を燻らせる冒険者ライアットの言葉と肉汁がたっぷりと絞り出されたスープを心からおいしく感じた事は、神殿の経典の文句よりも重く少女達の心に刻まれた。その体験があって初めて、彼女達は経典の文言の裏に隠された人の業の一旦を理解したといってもよいだろう。


 ふと聞き覚えのある足音とともに背後に気配を感じた。心当たりのありすぎるその気配の主を振り返る事もなく、彼女はそのまま己の作業に没頭した。

 挨拶の一つでも交わし、敵対関係の相手との接点を探して懐柔方法を模索する。それが現実的な解決策であると頭で理解できても、今の余裕のないイリアには不可能な芸当だった。相手と言葉を交わさぬ事で壊れそうな己の世界を守ることが精一杯だった。

 背負っていた独特な意匠のスタッフをその場に放り出して木陰にどっかりと腰をおろしたレガードは、干し肉を噛み切り、水筒の水で喉をうるおす。

「お前、随分と手慣れてるな」

 燻製肉をさばくイリアの手つきを見ながら、ぽつりとレガードが意外そうにつぶやいた。

 それは冬空の《アテレスタ》で彼女が学んだことの一つだった。神殿の下働きや街の有志達に交じって行った炊き出しを手伝う過程で、彼女は様々な作業に加わった。もう随分と昔の事のようにも思えるが、あれからまだ半年とは経っていない。

 騒乱の中に置かれ、決して居心地の良い環境ではなかった。だが、まったく孤独というわけでもなかった。

 人と交わる事が当たり前の中で生きてきたイリアは、すぐそばにいるレガードと言葉を交わさぬことに苦痛を感じ始めていた。

 言葉を交わさぬことで逆にその存在を強く意識し、様々な想像が浮かび上がる。そのような己の状態をあまりよくないと考えた彼女は、しばしの葛藤の後で、先日来、疑問に感じていたことをそのまま彼にぶつけることにした。

「以前の洗礼はどちらで受けられたのですか?」

 何気ない問いだったが、レガードは答えた。

「さあな、なにぶんヒュディウス任せだったんでな。おかげで死にかけた」

 イリアの手がぴたりと止まった。レガードを振り返る。レガードは続けた。

「最初は滝をくぐるといきなり別世界だ。なんとなく面白かったんで暴れまわっているうちに奴が迎えに来た」

 イリアの表情が険しくなる。

「お前達のやり方をヒュディウスから聞いて、二度目は無理やりどっかの巫女につき合ってもらったがな……、また訳の分らん『青い世界』に踏み込んだところで、そいつは そのまま世界に飲みこまれて消えちまった」

「なんて事を……」

「さすがに二度も危ない目にあえば、三度目はまともにというのが人情だろう? まあ、そういうことだ」

「巻き込まれた方に申し訳ないと思わないのですか、貴方は!」

 わずかに声に怒気がこもる。最近の自分は怒ってばかりだ、とふと彼女は思った。

「知るか。ヘタ打った奴の問題だろう? 神殿だって慌てて不始末を隠したんじゃないのか?」

 的確な指摘だった。そんな騒ぎがあれば、必ず《ぺネロペイヤ》大神殿には伝わっているはずだった。

 冒険者など所詮、有象無象。

 つながりを持たぬはぐれ冒険者の行方と神殿のメンツを天秤にかけ、後者に重きを置く神殿関係者が存在することは、イリアにだって少しは理解できる。

「だからといって、それでも……」

 その先は言葉にできなかった。

 結局、冒険者と神殿巫女の命のどちらが重いとか、創世神の威光をもって支配する側の神殿がいかに傲慢な存在か、という議論になるのだろう。そして、それは先日の魔将との議論の時のように、神殿巫女としての己のあり方をまた根底から揺るがせてしまうことがたやすく予想された。

 己の世界の狭さを否定できず、唇をかみしめ、悔しそうにうつむくイリアの姿を横目に、レガードは続けた。

「別にお前が気にする事じゃない。お前が俺に協力できないっていうならそれでもいい。幸い不死身の体だからな。同じことを繰り返せばいい。ヒュディウスに一働きしてもらえば済む事だし、その程度の貸しは作ってある。あと一人、巫女を犠牲にしさえすれば、俺もようやくこの面倒事から解放される。大事なお前の代わりに犠牲になってくれそうなめでたい奴らもいるみたいだしな……」

 それがマリナやエルシーを指していることに気づき、イリアはキッと顔をあげた。

「姉さま達に手を出すことは絶対に許しません」

 レガードから奪い取ったナイフを手にイリアは彼を睨みつける。涼しそうな顔でレガードはそれを受け流した。

「だったら、さっさと俺に協力することだ」

「卑怯です、貴方は!」

「それが世の中というものさ。誰もが正しいやり方で胸を張って生きられる訳じゃない。まっとうではないやり方でのし上がり、他者に罪をなすりつけ、嘘という化粧を塗りたくって涼しい顔をする。恥はどこぞの屑かごにでも放り込み、闘争という名の競争に勝ち残った者のみが勝者となって美酒に酔う。そんな世界が嫌だというなら、お前はそのナイフを俺に突き立てて自ら勝者となるか、己に突き立て敗者となって退場しろ。お前が死んだところで一時は悲しむ奴らも、やがては皆、別の幸せを見つけて生きていく。所詮、代わりの利かぬ者などいないのだからな!」

 強烈な言葉がイリアを打ちのめす。名刀の刃のような切れ味のレガードの言葉にイリアは反論できなかった。

 彼の世界はイリアの世界とは全く対極にあるもの。交わる事も受け入れることもできないそれが、もう一つの世の中の真実であることに、彼女は気づき始めていた。

 だが、その先で己がどうすべきか……。正解を導くことは今の彼女にはできなかった。

 私は《アテレスタ》を彷徨ったあの頃と何一つ変わっていない――その現実のみが彼女を打ちのめした。

 苦悩するイリアの姿を眺めながらレガードは一つ大きくあくびをする。

 ――退屈だ……。

 久しぶりに人の世界に身を置き、暴れまわった戦闘の快感を思い出す。

 うまいものをたらふく食らい、力あるものを踏みつけ屈服させる。時に予想だにせぬ危機にぶつかり、それをさらに力任せにねじ伏せる。己の欲望を充足させることで得られる快楽に際限はない。いつか倒れ伏すまでそれを味わいつくすことのできる武器が今のレガードにはある。

 ――ここも、そろそろ、おさらばだな。

 得た力で世界を踏みつけてやろう。

 自由都市を、王国を、神殿を。

 己を勝者と錯覚し、つまらぬ枠の中で上手に小賢しく生きる身の程をわきまえぬ弱者どもに、拠り所を失う恐怖を与え、右往左往しながら醜態をさらす様を見下ろしながら飲む酒は、また格別だろう。

 不敵な笑みを浮かべてごろりと横になろうしたその瞬間だった。

 暗い色をした雲が空を覆い始めた遺跡全体の大気が……大きく震えた。

 反射的に身を起こしたレガードの対面でイリアもまた、驚きの表情を浮かべて空を眺めている。

「結界が……光りました……」

 レガードには見えなかったが、イリアには見えたようだった。

「他に何か見えたか」

「いえ、ほんの一瞬の事でしたから、ただ、何かいやな胸騒ぎがします」

 東の空を見つめたままイリアはそうつぶやいた。レガードの勘もまた何かが近付きつつあることを彼に知らせていた。

 傍らに無造作に放り出されたスタッフを拾い上げる。同時に闘争本能のスイッチがかちりと入った。

 体内のマナを覚醒しつつ意識を周囲に広く拡散する。ごくわずかに震え続ける都市の大気の向こうに、複数の気配が感じられた。

 闘争と血の匂いを予感する。

「どこへ……行かれるのですか?」

 レガードとは異なるやり方で敏感に異変を察知しているらしく、不安そうにイリアが尋ねた。

「来客らしい。そろそろ面白くなりそうだ。お前はどこかに隠れていろ。巻き込まれても助けは期待するな」

 レガードは歩き始める。

 歩みは徐々に早まり、やがて高揚する戦意とともに彼はいつしか一陣の風となって滅び去った街並みを駆け抜けた。



 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



 北の地に広がる大樹海。

 外部からの侵入を拒絶するかのような広大な緑の海には、危険な猛獣が潜み、人界未踏の地を演出するのに一役買っていた。

 だが、大樹海には、遺跡へとつづく秘密の通路が存在した。

 獣道に偽装されたその通路を通って、負傷した身体を支え合って逃走する一行の姿があった。

「御老、お怪我は大丈夫ですか?」

「ヒョヒョ、こんなもの唾つけとけば治る、主らの方が深手であろう」

「我らとて元冒険者。この程度、けがのうちに入りませぬ」

 身体のあちらこちらにアクセサリーを付けた兎族の老人の言葉に二人の従者が笑った。

 漂泊の調停者にして最後の兎族総族長の老人と、その従者である狼犬族のスケイルと虎猫族のトーカク。

 すでに冒険者を引退しているが、戦士としては超一流の腕を持ち、獣人族の調停者の補佐を十分に果たすことのできる頭脳と見識をもつ二人は犬族、猫族それぞれの総族長からの信頼も厚い猛者である。複雑な部族間抗争の調停者としての老人を、助け支え続けてきた優秀な人材だった。

 獣人総族長会議が蛇族の里に暗殺部隊を送り込むことを決定すると同時に、三人は部隊とは別ルートを使って、ひそかに蛇族の里へと向かった。

 混乱する事態と解決の為、首府近くの村落に潜伏していた三人だったが、暗殺部隊の失敗によって計画は余儀なく変更されることとなった。蛇族の裏切り者の襲撃から身を守りつつ、彼らは大樹海に眠る失われた遺跡へと足を向けた。

 だが、遺跡まであと少しというところで再度の襲撃に出会い、彼らは命からがら大樹海へと逃げ込むこととなった。襲撃者はやはり蛇族の里より追ってきた半獣人の若者達であったが、それまでの追手とは段違いの力量だった。

 禁忌を犯すことで身に付けた力で変化へんげした彼らとの戦闘で、トーカクとスケイルは幾度も深手を負った。樹海に身を潜めつつ二十人近くいた追手の半数以上を葬ったものの、すでに回復薬は底をつき、三人とも満身創痍の状態だった。

「あと少しじゃ。どうにか逃げ込みさえすれば、落ち着いて回復もできよう」

 ようやく遺跡の城壁が見えてきた一行は安どの表情を浮かべたが、すぐにそれは消えた。

「泳がされたか……」

「そのようだな」

 それぞれの武器を手にしてスケイルとトーカクが背後の木々を睨みつける。城壁を視認することで追跡者の気配は、その速度を一気に上げて迫りつつあった。

 下生えの草や茂みが不気味に鳴る。数匹の巨大な何かが音もなくにじり寄る。

 立ち込める異様な殺気を敏感に感じ取り一目散に逃げたしたらしく、鳥獣たちの気配は周囲に微塵も感じられない。

「トーカク!」

 どうにか城壁のすぐ近くまで来たところでもと来た道を突然引き返し始めた相棒を、スケイルが引きとめようとした。

立ち止ったトーカクが振り返る事はない。虎猫族の中でも希少な白虎種の彼だったが、その自慢の白い毛皮はあちらこちらに血がにじんでいた。

「いつも通りだ。俺が攻めてお前が守り、そして勝つ!」

 長年の相棒の言葉にためらいは微塵も感じられなかった。傷の痛みをその精神力で凌駕し、気迫が空っぽの体力を補い、その肉体を突き動かす。いかなる状況であっても一度戦場に経てば、彼らはいつでも百パーセントの状態だった。

 互いの意思はすでに通じ合っている。

「相手は手練れだ。気をつけろ」

「手練れ? 違うな、奴らは獣人の誇りを失くした只の化け物だ。そんなものに負ける訳なかろう」

「なら早めに戻れ」

「そのつもりだ!」

 言葉と同時にそのたくましい肉体が膨張し変貌をとげる。獣戦士化したトーカクは、力強く地を蹴り、樹海の木々の中へと消えた。少し離れた場所ですぐさま戦闘音がはじけ飛び、周囲の木々の狭間に木霊する。

「スケさん、カクさん、済まぬ」

 老人の言葉にスケイルは笑った。

「行きましょう、御老。いつものことです」

「そうじゃな」

 小さく笑い合い、先を急ごうとしたその瞬間だった。とっさにスケイルが小柄な老人を小脇に抱え、その場を飛び離れた。一瞬遅れて巨大な何かがとびこみ、二人が立っていた地面に大穴を穿った。

 湿りがちな地面をものともせずに土砂を巻き上げ、もうもうと立ち込める煙の中でとぐろを巻く一匹の大蛇の姿があった。

 抱えた老人を下ろすとスケイルは素早く斧槍を構えた。

 口を大きく開き、派手な縞模様の胴体を揺らして威嚇する大蛇の向こう側にさらにもう一匹、木々の間を縫うようにしてこちらに近づく大蛇の姿がある。

 そして気配がさらにもう一つ。

 上半身を人の形に保ちつつ下半身のみを蛇形化させた異様な存在が現れた。ラミアの男性版といったところだろうか。

 老人を背にしたスケイルは三体の追跡者にあっという間に囲まれていた。

 少し離れた場所から聞こえる戦闘音はさらに激しさを増しつつある。木々をなぎ倒し、大地に大穴を穿つ激しい破壊音が幾度も続いた。トーカクも手一杯らしく、援護は望めないだろう。

 追跡者たちは三方からじりじりとにじり寄り、十分な間合いを取ったところで動きを止めた。中央に位置した異形の男が口を開く。

「随分と手間をかけさせてくれたな。ワン公。この片目の礼はさせてもらうぞ」

 つぶれた片目を見せつけるようにして、彼はスケイルを睨みつける。記憶にはないが数日続いた逃避行の最中の遭遇戦で、つけたものだろう。

「ニャンコが助けに来れるなどと思うなよ! すぐにバラバラに引き裂いてやる」

 縞柄の大蛇が続いた。物言う蛇というのも滑稽だが、その力は侮るべきものではない。三体目の漆黒の大蛇が無言で飛びかかろうとする気配を素早く察知し、スケイルは返答代わりに斧槍を振りぬいた。常人には目に見えぬスピードで振りぬかれた一撃は、空を引き裂く衝撃波となって地面を切断する。直撃すればただでは済まない。

 三体の追跡者は慌てて距離をとる。

 余裕を見せつつ斧槍を担ぎ、スケイルは三体を睨みつける。だが、その内心にさほどの余裕はなかった。

 如何にか精神力でこらえているが、気力も体力もつきかけている。

 老人を守りつつ、トーカクを援護してきた彼は、長期戦では消耗が激しく、トーカク以上に深手を負っていた。相棒の消耗を見越して使い方の難しい切り札の獣戦士化を使ったトーカクは、友と主を生き延びさせるのを優先し、己が無事に戻ってこれることを考えてはいないのだろう。

「禁忌をおかして得た力。お主らその意味が分かっておるのかよ?」

 睨みつけるスケイルの背後から兎族の老人が声をかけた。

「これは俺達選ばれし者が得るべくして得た力。純粋種共がデカイ顔したいがために作った下らねえ禁忌なぞクソくらえだ! これからは俺達が、いやこの俺様が蛇族を支配し獣人族の頂点に立ってやる!」

 陶酔した表情で異形の男が叫んだ。

「愚か者が……。騙され利用されておるとも知らずに……。お主にそう吹き込んだのはアシェイトルか?」

「黙れ、ジジイ! 奴がでかい顔していられるのは今だけだ! お前を連れていけば大幹部になどと言われて単純な奴らは目の色を変えているが、賢く偉大な俺様は違う。ここでお前を殺しておけば、お前の隠し持っている秘宝とやらは奴の手には渡らねえ。完全な力を得られぬ今なら、この俺が奴になりかわってやれるはずだ」

「成程、もはや聞く耳持たずということか、ヒョヒョ」

 愚者を戒める言葉は存在しない。

 悲しげに笑う老人に縞柄の大蛇が襲いかかる。《神速》で強化したスケイルが飛びかかりその胴体を切り裂いた。《斧槍》の一撃を身体に受け、大蛇が大きくひるんだ。チャンスとばかりに追撃をかけようとするが、連続技コンビネーションは叩きこめなかった。



2016/05/05 初稿


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