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キャリーケースの女  作者: 瀬戸真朝
第一部 二章【みなこちゃんと、ゆかいなコンビニの仲間たち。】
4/39

2-2


そんなみなこちゃんと比べて……瑞穂さんは何でこんなにひどいのだろう!

うちに押しかけて来て既に一ヶ月が過ぎたが……正直、瑞穂さんの性別を疑う出来事があり過ぎる。


最初、(『家賃の半分は払うからルームメイトよ』と怒るが)居候なのだから料理ぐらいは作ってもらおうと思ったが、出てきた物は黒ずくめの料理たちで言葉を失った。

せめてラーメンぐらいは作れるかと思ったら、お湯が沸騰する前に麺を入れるという暴挙で、伸びまくっているラーメンを食べる羽目になった。

お腹を壊したくないし何よりもおいしく食べたいので、結局のところ俺が全て作っている。

それに片付けもすぐしなくて物を散らかすし、食べかすもよく落とすから掃除も大変だ。

更に瑞穂さんは無類の酒好きで、部屋には日本酒の瓶が日に日に増えていった。


「シュンー! あんたも飲みなさいよ」


未成年だって言っているのにも関わらず、たまに俺にまで飲ませてくる。

どうやら俺は強いらしく倒れこむほどは酔わない一方、瑞穂さんは酔い出すと所構わずごろごろ寝るから大変だったりする。

全然言うこと聞いてくれないし……。


「瑞穂さん、布団で寝て下さい!」

「やだぁーここで寝るもんー」


部屋のど真ん中で転がる瑞穂さんの腕を引っ張り、布団の上まで運ぶことも多々あるからやれやれだ。


それに一ヶ月が経って生活費を半分に割った額を請求したら、

「確かに『家賃と食費と光熱費は半分払う』とは言ったけれど、光熱費に水道代は入らないわ。悔しかったら辞書を引いてみる事ね」

なんて言われ……それを知った時のショックと言ったら!!

辞書の前で倒れ込んだ俺がいる……。

「いくら水使ってもタダっていいわね~」と言って、瑞穂さんは今もお風呂に浸かっていた。

く、悔しい……!


しかもこの前、家を出るタイミングが重なって一緒に最寄りの玉那駅まで歩くと、そのまま同じ電車に瑞穂さんも乗ってきた。


「そういえば、瑞穂さんはどこの駅で降りるんですか?」

「え、ここだけど?」


丁度ドアが開いて瑞穂さんは歩き始めたが、駅名を確認して慌てて俺も降りた。

そこはあの、中成大学・明王大学駅で、瑞穂さんは東口──中成大学の方に向かうから驚いた。

だって、あの瑞穂さんが佐藤先輩と同じ中成大だなんて!

悔しい……悔しすぎる。


そんな瑞穂さんもどこかの本屋でバイトをしていて、アパートを空けることもたまにあった。

だけどお互い暇になると、紙を切って作ったオセロをして勝敗を競った。

俺ばかり勝っていると瑞穂さんが悔しがって酒を飲み始めるから、結果的に困るのは俺なんだけど……。

瑞穂さんはいつだって本気で、いつだって向きになる。とても子供っぽい人だった。


それ以外にも、ひたすらトランプで(東京出身らしい瑞穂さんは〝大貧民〟が標準語だと譲らないが)大富豪をしたり、天気が良かったりすると外に散歩しに行ったりした。

どれも一人ではなかなかしにくいことで、そういう時に瑞穂さんが横にいると楽しいのも確かだった。

それに実家では姉貴と一緒に家事を手伝うのが当たり前だったし、結局のところ瑞穂さんの存在はそれほど重荷でもなかった。

生活費(水道代を除く)も半分だし!



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