表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
キャリーケースの女  作者: 瀬戸真朝
第二部 八章【失わなければ、手に入らない。】
32/39

8-4

「えっ……」


割れた音が部屋で響く。

だが放心している俺とみなこちゃんをよそに、佐藤先輩はまっすぐとみなこちゃんを見た。


「オレが好きなのは、お前だ。美奈子」


みなこちゃんはそう聞いて、ただ泣くばかりだった。

そんなみなこちゃんをゆっくりと、まるで割れないように毛布で包む込むかのように先輩は抱き締める。


二人の姿を見届けて、部屋を出て行こうとした。

そんな俺に先輩が気付き、みなこちゃんを抱き締めていた腕の力を解いた。


「中井。ありがとな」


そう言った佐藤先輩は、真正面から俺のことを見てくれていた。

そして先輩の緩めた腕の中でみなこちゃんが俺の方を向くと、何かに気付いた様子で慌ててスカートのポケットに手を入れていた。


「俊也クン、これ……出る時かけてきたから」


俺に向かって、みなこちゃんは手を伸ばしてくる。

受け取ったそれは、新聞受けに入っていたあの封筒の中にあった鍵だった。

急いでいて玄関で落としたままだった。


「俊也クンの優しさにずっと甘えててごめん。でも、瑞穂ちゃんをよろしくね」


みなこちゃんは涙声だったけど、それは嬉し涙のように見える。

それにずっと思い悩んでいたことから解放されたのもあって、少しぎこちないが晴れ晴れとした笑顔を見せてくれていた。

俺は受け取った鍵をポケットに入れ、「うん。ありがとう」と返した後に部屋を出た。

それから、瑞穂さんに何度もかけたが電話に出なかった。

再び探す宛もなく寒空の下を走っていたが、あることに気付いて足を止めた。


──こんなに走っても、背中が汗を全然かいていない。

元々、俺は汗っかきではなかったのだ。

ではどうして、引っ越してから汗がひどかったのか……今では分かる。


「瑞穂さん……」


眠れない夜は先輩の布団に潜り込んでいたという瑞穂さん。

ずっと俺の背中で泣いていたのに、俺は全然そんな瑞穂さんに気付けずにいてしまった。

一刻も早く、瑞穂さんを見付けたい。


その時、一人の名前が思い浮かんだ。


「大越……!」

大越なら瑞穂さんの居場所について、何か知っているかもしれない。

そう思って、俺は大越に連絡した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ