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キャリーケースの女  作者: 瀬戸真朝
第二部 七章【瑞穂の物語】
24/39

7-3


そんな生活をしつつ、高校には毎日通っていた。

都立の進学校だったが山間に位置し自然に囲まれていたため通学は不便だったが瑞穂にとって授業は苦痛どころか、知らないことを知れるので楽しみだった。


しかし一方で、テレビを見る環境がなく携帯電話も持っていなかった瑞穂はクラスの女子と話が合わず、学校でもずっと孤立していた。

それでも、高校で初めて友達が出来た。

良い子だとクラスでも評判の女子で、周りの目を気にせずに瑞穂と接し、流行の話題ではなく学校の話などをしてくれた。

結局高校時代は当たり障りのない話をするぐらいの関係だったが、それでも瑞穂にとってかけがえのない友達で、本来持つ明るさをその子の前では出せた。


しかし教員の前の瑞穂は大人しく授業態度も真面目だったため、夜に男の家に行くような生徒だとは担任さえも思わなかった。

面談の際も義母は適当に話していて、家に帰っていないことも担任は気付かなかった。

結局、高校に上がってからも表面上は明るい五人家族のままだった。



そして相変わらず、読書だけが唯一の楽しみだった。

高校の図書室は小中と比にならない規模で、部費が払えなかった瑞穂は部活に入らず、夕方までずっと図書室で本を読んで過ごしていた。

成績が悪いと奨学金が打ち切られてしまうのもあり、テスト前だけは必死に図書室で勉強した。


そんな生活で最終下校時刻まで図書室に毎日いると、放課後に残るメンバーは限られてくる。

進級が近くなった季節。

まだ気温は低く、少しでも温かな日差しが入るように瑞穂は窓の近くの席を選んでいた。

そんな窓際の中でも一番端の席が特にお気に入りで座っていると、自分と向かい側の席にいつも同じ男子が座っていることに気付いた。


黒髪で身長はやや高めで、読んでいる本のタイトルを見ると歴史小説が多かった。

制服を着崩している男子はよくいたがその人は第一ボタンだけ外し、ネクタイも少し緩く締めているぐらいだった。

その程良くルーズそうな姿が、融通の利きそうなイメージを瑞穂に少し抱かせた。

顔に覚えはなかったが、後に教室が離れている特進クラスの人だと知った。

相手は瑞穂の存在に気付いていないようだったが、最後まで残っていると図書室を出る時間が大抵重なり、必然と門を出るまでの道のりが一緒になる。

だが寡黙そうで話し掛けにくく、瑞穂と言葉を交わすことはなかった。



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