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キャリーケースの女  作者: 瀬戸真朝
第二部 七章【瑞穂の物語】
22/39

7-1

○第七章


昼前から白く重い雲に街中が包まれていた。

それでも、大学の最寄りから新宿方面に向かって一駅の場所にあるこの街も、クリスマスの飾り付けによって赤と緑の色が溢れている。

バイト先である〝晃文堂こうぶんどう書店〟の店内にもクリスマスツリーが飾られていた。


「長谷川さん、お疲れさん」

「お疲れ様です」


いつものように店長に挨拶して店から瑞穂は出る。

だが、いつもと違って夕方からではなく開店から昼過ぎまでという時間にシフトを入れたため、店を出ても外が明るいことに違和感があった。

ジーパンに黒のコートを羽織っていたが、それでも十二月の寒さは身に染みる。


荷物になるキャリーケースはバイト前に駅のロッカーに預けていた。

少し距離があったが、引き取りに再び駅に向かおうと歩く。

その途中で、紺一色のスカートとブレザーに赤いネクタイを締めた女子高生二人組と擦れ違った。

その二人が通り過ぎると、瑞穂は振り返る。

──あれは、瑞穂が卒業した高校の制服だった。

紺一色は地味そうに見えて、近隣の高校はチェックのスカートばかりなのでかえって目立つ。

なので、少し前までは地域住民なら一目見て学区三位の高校のものだとすぐ分かる。

だが瑞穂が卒業した翌年の入学生から、紺の上に水色の線が入ったチェックのスカートに変わった。

したがって、紺のあの制服を着ているのは今の三年生しかおらず、瑞穂も久しぶりに懐かしい制服を見掛けた。


ふと、駅に続く道の途中にベンチを見付けて座った。

あの制服を着ていたのはもう二年以上も前だと考えると、必然と高校時代のことを思い返す。

更に遠くにあの観覧車が見えると、思考の海から逃れられるわけもなかった。

幸いなことに時間なら果てしなくある。


瑞穂はベンチに深く寄り掛かると、ゆっくりと深く息を吸った。


*      *      *


両親は幼い頃に離婚した。

母には既に男がいたため瑞穂は父方に引き取られたが、その父も間もなく再婚した。

その再婚相手は父よりも随分と年上で、瑞穂より少し年上の男の連れ子が二人いた。

義母はもちろん、父もその子たちには優しくしたが、両親ともに瑞穂には辛く当たった。



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