表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
キャリーケースの女  作者: 瀬戸真朝
第一部 五章【突然の出来事、しかも二回。】
16/39

5-2


どこに行ったのか分からなかったが、しばらくして店の裏の方から声が聞こえてきた。

よく聞き取れなかったが、一人分の女性の声しか聞こえない。

理由は分からないが、瑞穂さんがみなこちゃんを何か怯えさせるようなことをしているような気がして心配になった。


「ダメですよ、瑞穂さん!」


俺が影から現れると、二人とも驚いた様子だったが、先に反応したのはみなこちゃんだった。


「大丈夫だよー、ちょっとお話してただけだから」


そうやっていつものように笑うみなこちゃんを見て、一安心した。

だが瑞穂さんを見ると、下を向いたまま座り込んでいて、表情が分からなかった。


「久しぶりに会ったから、瑞穂ちゃんもびっくりしちゃったみたい。もう大丈夫だし、瑞穂ちゃんも帰るみたいだから。ね?」


みなこちゃんが笑いかけると、瑞穂さんは少しの間の後に頷いた。

みなこちゃんの言い方はまるで、小さな子供を言い聞かせているかのようだった。

そして瑞穂さんは立ち上がろうとしたが、途端によろめいた。

慌てて俺は瑞穂さんの横に行き、腕を持った。


「私、先にお店戻るね。俊也クンも早めに戻って来てね」


みなこちゃんはそう言って戻ったが、せめて駅までは送ろうと瑞穂さんを立たせた。瑞穂さんがおかしい。


「駅まで送りますから……瑞穂さんって、みなこちゃんと友達だったんですね」


髪が邪魔で、瑞穂さんの表情は相変わらず見えなかった。

だが腕を支えたままニ、三歩歩くと、瑞穂さんは掴んでいた俺の手を勢いよく離した。


「一人で帰れるから、いい」


俺のことも見ずにそう言うと、駅の方に走り出してしまった。

ただ、一瞬顔が見えると瑞穂さんが泣いているようにも見えた。


けれど、心配しつつ明け方近くになって帰ると瑞穂さんはいつものように寝ていた。

翌日起きた後も、瑞穂さんはいつも通りのわがまま全開で笑っていて、その様子から今更掘り返す気にならなかった。

それにみなこちゃんも何もないようだし、あの夜見た気がする涙はやっぱり気のせいだったのかと思うと段々気にしなくなっていた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ