表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シーと新生の方途  作者: ユッキー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/8

第3章



 ──(くだ)を通した鼻で呼吸をつづけ──



 病室の広い窓から、春の新鮮な陽が差し込み、真っ白なシーツに真新しいぬくもりを与えていた。

 4歳になった幼女の鼻には生まれた時から管が通され、この県立こども病院から一度も外に出たことはなかった。当然、太陽の光を浴びることも、風が頬をくすぐることも、樹々のざわめきや花の匂いも知らない。

 成長するにつれて、少しずつ身体も大きくなり動くようになったが、やはりまだその丸い頬の顔から表情は生まれなかった。


 その日もシングルマザーの母親は、仕事のために夜にならないと来れないため、幼女はひとりベットの上で起きていた。広い窓からは、薄青い空が広がり白いふんわりとした雲が流れている。幼女がじっと無表情のまま見つめていると、スズメのさえずりが聴こえて来た。自由に生きる喜びをあらわすかのようなさえずりが……


 もちろん幼女も、難病を(かか)えた小さな身体で懸命に生きている。まだ何も表情も意思も示さないが、スズメのさえずりを聴きながら、生きることを諦めていないし、管を通した鼻で呼吸もつづけている。


 しばらくすると、日課となっているセラピー犬の白いゴールデンレトリバーがやって来た。ベットの上に長い顔を乗せ、やさしい眼差しで幼女を見つめる。幼女とセラピー犬は、じっと見つめ合った。

 するとはじめて幼女は、セラピー犬の長い顔の方へ、その壊れそうな小さな指を広げ、ゆっくりと手を伸ばした。何事にもまったく反応を示さなかった幼女が、ついにセラピー犬へ小さな手を伸ばし興味を示したのだ。

 そしてセラピー犬は、その小さな手を受け止めるかのように、さらにじっとあたたかな眼差しで幼女を見つめつづけた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ