第六話 進化
はい、というわけで。
現在私は、
植物魔法をひたすら重ね掛けするという、地味すぎる単純作業を淡々と続けております。
……せめて仲間が欲しい。(切実)
ここがどこかもわからない。
リスポーン地点の再設定もできない。
魔法は通らない。
レベルも上がらない。
運営、よくこんな八方ふさがりの仕様を悪ノリで実装したな!
さっきまでは、いろんな場所に芽を生やしては移動、を繰り返していた。
でも今は方針変更。
ひとつの植物に、成長魔法を重ね掛け。
その結果――
めちゃくちゃでかい木が生えている。
植物魔法、レベル40を超えたあたりから上がりにくくなったんだよね。
だから、威力の増した魔法を何重にも重ねるしかない。
そのせいで。
見上げても、一番上が見えない。
東京の代表的なスカイツリーより高いんじゃないかってくらい。
……やりすぎた?
ピロリン♪
【おめでとう!レベルが上がったよ!レベル10なので、進化ができます。】
やった!!
やっとレベル上がった!!
……って。
進化?
バナナの進化って、何になるの?
そう思った瞬間、
目の前に透明なパネルが現れる。
――
進化先:
〔バナナの木〕
――
……おい。
バナナの次、バナナの木?
いや、理屈はわかるよ?
植物だし。順当だよ?
でも。
バナナの木って、動けなくない?
根、張るよね?
むしろマイナスでは?
選択肢、これしかないし。
ピロリン♪
【早く選んでね!進化は拒否できません。】
見越してるよね?
絶対、私が迷うのわかって言ってるよね?
……ほんと自由だな、運営。
仕方がない。
腹をくくって、〔バナナの木〕に触れる。
ピロリン♪
【おめでとう!〔バナナ〕が〔バナナの木〕に進化しました!】
テンション高いな、相変わらず。
――そして。
私は、バナナの木になった。
動けない。
地面に、しっかり根を張っている。
完全固定式。
詰みでは?
ピロリン♪
【大丈夫だよ!〔バナナの木〕になったことで、食べ物じゃなくなったから。モンスターに襲われないよ。】
……。
……え?
襲われない?
それ、けっこう優秀な種族(?)じゃない?
まあ……動けないから、プラスマイナスゼロってことで……!
だよね?
襲われなくても、動けなかったら、ほぼ意味なくなるよね?
そうだよね?
……まあ、バナナから良い方向に進化した、ってことでいいのかな。
周囲を見渡そうと思えば、360度見られるのは救いだね。
……そういえば、種族特有のスキルっていうのがあるんだっけ。
バナナのときはなかったけど。
たぶん、運営がアイデアを思いつかなかったんだろうな。
というわけで、私のステータスです!
――
プレイヤー名:なのは
種族:バナナの木
レベル:10
経験値:0 / 1000
所持金:0
HP:190 / 190
MP:3000 / 3000
攻撃力:75
防御力:75
敏捷性:75
ステータスポイント:9
スキル:
《風魔法 Lv.5》
《植物魔法 Lv.60》
《MP自然回復・中》
《HP自然回復・中》
《片手剣 Lv.1》
《瞑想》
《気配遮断 Lv.3》
《魔力操作 Lv.7》
種族スキル:
《バナナ・クリエイト Lv.1》
称号:
《チュートリアル未満》
《デスループの住人》
《魔物断ち》
――
……いや、植物魔法だけ飛び抜けてるな。
魔力操作も上がったけど、次に魔法を使うときは、もっと魔力の流れを意識してみようか。
……魔力も、ずいぶん増えたなあ。魔力切れ、何度も起こしてたもんね。
MP自然回復とHP自然回復は、使った量に応じて上がるタイプのスキル。
パッシブだけど、フルのまま過ごしても上がらない。
MPはけっこう枯渇してるはずなのに。
MP自然回復・大になると思ったのになあ。
うまくいかないね。
……なんで種族スキルに触れていないのかって?
ツッコミが追いつかないからだよ。
まあ、詳細を確認してから、一気にいこうか。
――
《バナナ・クリエイト》
自分の木にバナナを生やす。そのバナナは配下となり、乗り移ることもできる。
だが、所詮はバナナなので、何もできない。
スキルレベルの数だけバナナを生やせる。
………。
何このくs……ごm......ん゙ん゙。
なにこのスキル?
ほぼ役に立たなくない?
なんでこんな種族スキルを実装したの? 運営?
「所詮はバナナ」って、バナナのこと見下しすぎだろ。
一度、運営の頭の中を覗いてみたい。
一度、運営の頭の中を覗いてみたい。
まあ、いったん置いておいて、とりあえず使ってみるか。
「《バナナ・クリエイト》」
……自分で唱えておいてなんだけど、ダサい。
もっとマシな名前なかったの?
「バナナ」って言葉が入った瞬間、すべてが台無しになるこの感じ。なんなんだろう。
誰か、ちょっと検証してみてください。
……まあ、「バナナ」が入っててカッコいい言葉なんて、あまり思いつかないけど。
「……?」
なんか、よくわからない。
説明には「乗り移れる」って書いてあったよね。
ちょっと意識してみるか。
――乗り移れ。
……。
……お?
バナナに、乗り移れた。
まあ、動けるようにはなったけど……
これ、あんまり意味なくない?
だって、さっきの状態と同じでしょ?
……いや。
むしろ悪くない?
だってさっきは、モンスターに襲われなかったけど。
このバナナ状態だと――
ピロリン♪
【大正解!バナナの木の時はモンスターに襲われないけど、バナナの状態だと食べ物扱いだから、襲われます!】
ほら!!
進化した利点、ないじゃん!!
……っていうか運営、それでいいのか。
私の考え、完全に読み取ってるよね?
もうこれ、異世界の神みたいな存在じゃん。
まあ、五感まで再現できるゲームなんだし。
思考が読まれてても、そこまで不思議では――
……って。
「ギャーーーー!」
無事、考え事をしている間に。
パクリ、と食べられました。
……うん。
まだまだ、道のりは長いね。
「種族」というのと、「種族スキル」ってのを追加しました。
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