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第二話 やよいの提案

夜宵の漢字、いちいちコピペするの面倒なので、ひらがなで行きます。

「お姉ちゃんの名前、何? 私、スカビオサだよ。きれいな花なんだ」


夕飯の席で、やよいが聞いてくる。


「私は、なのは。なのはなから取ったの」

「私は、ルマギよ。ヤグルマギクから。素敵でしょう?」


……聞かれたの、私なんだけど。

お母さん、ほんとちゃっかりしてる。


「キャラは? 見つけたら声かけたいな。

私は顔立ちも身長も変えてないよ。黒い髪で、透明な目」

「私は、目も髪も青よ。顔立ちも身長も変えてないわ」


二人とも、ちゃんと“人”だ。


「私は……」


キャラ……バナナなんだよね。

キャラメイクはしたよ? ちゃんと。

した、けど……。


「お姉ちゃんは?」

「私は、えっと……目も髪も黄色なんだけど……! なんだけど……!」

「なんだけど?」


逃げ場がない。


「チュートリアルで、バナナの皮に滑って転んだら、バナナになった」

「……え?」


お母さんとやよいが、そろってきょとんとする。

そして、ほんの一拍置いて――


「バナナ!? なんで!?」

「はー、面白い」


二人は、爆笑した。


「いや、冗談じゃないから!

事実だからね、これ! 本当に!」


「ほんと、お姉ちゃんのことだから、何か面白いことしてくるかなって思ったら……」

「「バナナ!」」


……いや、バナナ言うな!

事実だけども!


「いや、私、何にもしてないよ?」

「いやお姉ちゃん、ゲームするたびにバグとか、めちゃくちゃレアな仕様に引っかかって、結果的に面白くなるじゃん」

「そうよ。今回は何をやらかしたのか、楽しみにしてたの」


「「予想の斜め上!」」


最後の、そろうな!


「違うよ。そんなことない」

「キャラメイクのとき、間違ってボタン押して変なキャラになったことは?」

「RPGで変なバグに引っかかって、抜け出せなくなったこともあったわよ?」

「お姉ちゃんの画面だけ、時間止まってたこともあったよね?」


……うっ。

全部、事実。


毎回、笑われるんだよね。

なんで? 私、悪運だけはやたら強いんだけど。

まあ、そのぶん別のところでは運いいけどさ。


「今回はバグだから。あとで運営に問い合わせるもん」

「「がんばれ~!」」


ぜんぜん信じてなさそうな声に見送られて、私は部屋に戻り、再びゲームを起動する。


……運営への問い合わせボタンって、これか。


「すみません。バグで、バナナになっているんですけど……」

「……へ?」


すぐに電話がつながり、事情を説明する。

向こうの人、めちゃくちゃ驚いてる。

まあ、私だって信じられないよ?


「すみません、少々お待ちください」


ツー、ツー、ツー……という音とともに、通話が切れた。


……え?

なんで?

何があったの?


「すみません。それ、仕様です」

「ふざけんなっ!」


折り返しの電話、第一声がこれ。

信じられる? 仕様なんだって。


「目と髪の色が黄色、という条件を満たすと、チュートリアルにバナナの皮が出現するようになってまして……」

「そこで転ぶと、バナナになります。すごい悪運ですね」

「え……?」

「運営の、悪ノリです。まさか引っかかるとは……」


悪ノリに引っかかった私って何。

向こうの人に同情されてるし。


……ちっとも、うれしくないんだけど!


「まあ、がんばってください。」


その一言を残して、電話は切れた。


……いや、無理ゲー!

どうやってがんばれっていうの!?

体、動かせないんだけど! 何もできないんだけど!


――と、思った矢先。


またしてもモンスターに食べられ、死亡。

そして即、リスポーン。


ピロリン♪

という、やけに明るい音とともに、


【おめでとうございます。

称号《デスループ依存症》を獲得しました。

本称号は《デスループの常連》の上位称号のため、統合されます。

称号《デスループの住人》を獲得しました。】


……というアナウンスが響いた。


ふざけんな!


さらに続けて――


【おめでとうございます。称号《チュートリアル未満》を獲得しました。】


……は?


《デスループの住人》

獲得条件:《デスループの常連》《デスループ依存症》を所持し、一定時間内に複数回死亡する。

効果:死亡時、所持金2倍/死亡時のデスペナルティ無効化/リスポーンまでの待機時間なし/死亡時、インベントリ枠が1増加


……いや、めちゃくちゃ効果いいな。

所持金ゼロだから意味ないけど!

インベントリ、使えないから意味ないけど!


《チュートリアル未満》

獲得条件:ゲーム開始から、一定時間一ミリも動かない。

効果:すべてのバフ・デバフ無効化


……これも!

地味に、いい効果!

違う! 私が動けないだけだから!


運営!

ふざけるのも大概にしろ!


ピロリン♪


【おめでとうございます。称号《魔物断ち(笑)》を獲得しました。】


もう!

運営! 暇なの!?

別の仕事して! (笑)いらないから!


《魔物断ち(笑)》

獲得条件:ゲーム開始から、一定時間モンスターを一体も倒さない。

効果:モンスターから攻撃されなくなる(※食べ物扱いの場合、本効果は適用されません)


……意味ないじゃん!


バナナだから、ダメなの!?

そこ、厳密に区別するの!?


……もう、なんか疲れた。

今日はここまでにして、お風呂入って寝よ。


ログアウトして、風呂を沸かしに行くと――


「あ、お姉ちゃん。どうだった?」

「真昼、何があったか話しなさい」


お母さんとやよいが、ワクワクした目で待ち構えていた。


「……仕様だって」


仕方なくそう答えると、二人は一瞬きょとんとして――

次の瞬間、爆笑。


ちょっと、いろいろひどくない?


「しかも、《デスループの住人》《チュートリアル未満》《魔物断ち(笑)》っていう称号もらった」


正直に称号を伝えると、笑いはさらに激しくなる。


「もう、お姉ちゃん、完全にネタ枠じゃん」

「あー、おなか痛い」

「ひどくない? もう一回言うけど、ひどくない?」


……げせぬ。

ほんと、なんで私だけ?


「バナナって、動けるの?」

「動けるわけないじゃん! 動けてたら苦労しないよ」


当たり前のことを聞いてくるやよいに、即答する。


「じゃあ、何もできないの?」

「そうだよ」


なんか文句あるか!


「あ、お姉ちゃん。魔法使って、自分自身を動かすのは?」


――それだ。


「ありがとう。それ、明日試してみる」


笑いすぎて息も絶え絶えなやよいの提案に、素直に乗ることにした。

……たまには、役に立つね。

笑う以外で。

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