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第四話 お仕事退職&国から追放

国王から追放という決断を告げられた日から1日後。


エリアナは城内部にある大きな牢屋に閉じ込められていた。

国王から追放の命令を受けた時エリアナは城の中にある大広間に呼び出された。

エリアナはもっと人目に見られる所で公開処刑のような感じで呼び出されると思っていたのでびっくりした。

だが、今考えたら最高位護衛魔法使いは公には出されていない役職だったため当然だと思った。


「人を助けたからと言っても使ったのはあの恐ろしい禁断魔法だ。しかもそれを最高位護衛魔法使いになってから多くの頻度で使っていたという行為については流石に罰を受けてもらわなければならない。」


あの時国王はそう言った。国王の判断の"追放"というのはまだ罰としては軽い方だった。最悪、国内で禁断魔法を使ったものは処刑されるという事もあり得るのだ。


やはり国王はエリアナを酷く気に入っていたため罰を軽くしてくださったのだろう。

そしてエリアナは牢屋に入れられてから一度もリンネには会っていない。当然、牢屋には簡単に開けられるような窓もないため来れるわけがないのだが。


あの日、リンネはエリアナが闇魔法を使っていたのを見ていたのだろうか。しかし今、そんなことを考えてももう終わってしまったことだ。もうきっとリンネとは話すこともないのだろう。


「どうして私、闇魔法なんて使えるんでしょう、、、。」


エリアナは何処か遠くを見つめながら一人、小さな声でつぶやいた。


※ ※ ※


いよいよ今日の夜、追放の儀が行われる。


エリアナは朝、国王から呼び出されると心には思っていなかったことを国王から突然言われたためびっくりする。

「今日限り、町へ出る事を許そう。パン屋に行っても良い。護衛魔法使いの一人は付かせるがな。」

普通は禁断魔法使用者は大変危ないものなので外には出させないはずであったが、やはりここからも国王の優しさが溢れ出ていた。最高位護衛魔法使いの職も失うため今更、街にバレても別にいいというのもあるだろうが。

しかし、国に何が起こるかわからない以上危ないものは危ないため、お付きの護衛魔法使いはエリアナの次あたりの強さを持ったがっちりとした男の魔法使いが選ばれた。


「あ...ありがとうございます!」

エリアナは早速初めてのリーフテイル王国内に足を踏み入れる。


「わあ、、、!すごいです!」


そこにあったのは楽しそうに笑う大勢の人々、店に並ぶとてもとても美味しそうな食べ物、そして良い匂いを漂わせる沢山のパン屋があった。

「パン屋ってこんなにあるんですか!?」

エリアナは城に引きこもっていた時、リーフテイルにあるのは街角にあるパン屋だけだと思っていたのでとても心がたかぶった。


エリアナはその日、街中のパン屋を全て周り100個以上ものパンを買った。

今回、追放だけで罰金という罰を入れなかった国王に改めて感謝する。


「あら!可愛いお客さんね。初めてだから少し割り引きしてあげるわね。」


「威勢の良いお嬢ちゃんだな!うちのパン屋に弟子入りしていくか?」

などと店主たちは皆、エリアナを歓迎するように出迎えてくれた。


もう、ここには戻ってこないというのに。


エリアナがパンを食べながら嬉しそうに城に帰っている一方で、国王がエリアナに付かせた護衛魔法使いは流石にエリアナのパン愛にはついて行けずにヘロヘロになっていた。人々から見てそれは"罪人"とそれを見張る監視役などには全く見えず、貴族のお嬢様とそれに必死についていく執事にしか見えなかった。


※ ※ ※


エリアナは城に戻り、一人でむしゃむしゃと暗い牢屋の中でパンを食べていた。

そうすると牢屋の扉が遂に開かれた。エリアナはそれが開かれると同時に100個目のパンを食べ終える。

「馬車が用意出来たので今から行きたいと思います。」


※ ※ ※


エリアナは両手を紐で縛られた後、馬車の中に乗った。

「もう、戻れないんですね、、、。」

エリアナはそう、寂しそうに独り言を呟いた。

馬車が動き始めた。前へ前へ進んでいく音を聞くとエリアナは無性に悲しくなってきて涙をぽろぽろと流した。

進まないで欲しい。このまま何かが起こって馬車が止まってしまえば良いのに。こんな事を考えていたらエリアナはますます涙が止まらなくなってしまった。


「エリアナ!」


突然、誰かがエリアナの名前を叫んだ。

「エリアナ!今までありがとう。お前はよくやった、、、!」

その声は少し震えていて、でもどこか暖かく、優しい声だった。

エリアナはこんな罪人の自分に泣いてくれる人がいたのかと驚く。そして同時に嬉しさが込み上げてきてまた涙が頬を伝うのを感じた。

しかし先程の涙とは少し違う、そんなような気もした。

「ありがとうございます。エルリック国王、、、。ありがとう、リーフテイル、、、。」

エリアナはこの日、思い出の詰まったこの一つの道から別れを告げた。


※ ※ ※


「降りて大丈夫ですよ。」

エリアナは体を重そうにしながら暗い馬車から降りる。

するとそこに広がっていたのはただの森ばかり。

「ここはどこですか、、、?」

「さあ。私らもここまで運べば良いと国王に言われただけなので。でももう少し歩いたところに大きな国もあるらしいですよ。」


ではなぜそこまで連れて行ってくれないのか。

もしかしたらこれも国王からのちょっとした罰なのかもしれない。

「では、我々は国に帰ります。お元気で。」

そう言って馬車を引いていた男とその付き人はエリアナを置いて城に戻って行った。

「ここ、本当にどこなんだろう、、、。」

エリアナは一人、どこかもわからない場所をひたすら前へ前へと進んでいった。 


歩いていくと突然森が開けて明るい場所に出た。

そこからは雄大な空と共に大きな塔がそびえ立つ一つの国が見えた。

「あれは!」

エリアナはこの国について知っていた。


城にいた時、リンネが話してくれた遠くの国の話。

その国には大きな塔が立っていて周りは賑やかな店や人々があたりを囲んでいる。

そこは世界有数の"ギルドの街"とも言われる国であった。


その国の名前は「エルメリア王国」。

この国のギルドとの出会いがエリアナの人生を大きく変えることになるとは彼女はまだ知らなかった。


次回からは新しい章に入ります!次回もよろしくお願いします。

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