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第二話 禁断魔術と約束

 「エリアナ、今月の魔獣討伐数、過去最多記録だ。改めてお前の功績を讃えよう。お前の500年分の資料を見ても今月の2569匹は上回っていない。天晴れじゃ。」


エリアナは今月、1ヶ月間における魔獣討伐数の自己最高記録を塗り替える事に成功した。

元々、リーフテイル王国の護衛魔法使いは1日に討伐した魔獣の数を記録して1ヶ月後、国王への報告に行かなければならないという決まりがある。その後、国王がそれらを確認して一年ごとに護衛魔法使い内での階級を決めていくのだ。


そのような決まりがあるにも関わらずエリアナは500年以上、魔獣討伐数No.1の座を譲らずに最も高い階級の最高位護衛魔法使いの座を守っている。さらに毎年自己最高記録を更新していくため、流石の護衛魔法使い達にも追いつけるものはいなかった。


「エリアナ、最高記録、更新おめでとう!お金沢山貰ったでしょ?早く僕に見せてよ。」


リンネは動物のくせに金の事が大好きでいつも見せろ見せろとエリアナを急かしてくる。


「ちょっと待ってください!リンネさん、私のお金奪って本とか買っちゃうから嫌ですよ。しかもリンネさん今月、魔獣討伐手伝ってくれなかったじゃないですか!」

「そうだけどぉ。」

リンネは一応は野生で暮らすフクロウであるため、もちろん狩りも上手い。

その狩りの上手さを活かしていつもはエリアナの魔獣討伐にも力を貸してくれるのだ。


しかし今月は「面倒くさいからやだー。」と言って何一つ手伝ってくれなかった。

「とにかく、リンネさんの手にはぜっっっっったいに渡しませんから!」

「だよねー。」

リンネは悲しそうに下を向いて俯いた。仕事をしないで金をもらうなどこのフクロウはどんな神経をしているのか。


※ ※ ※


エリアナがいつものようにリンネに買ってきてもらったパンを頬張っているとリンネが突然エリアナの方を見つめてきた。


「な、、、何ですか、、、。」

エリアナはもう既にリンネが言おうとしていることを察していた。

「最近さ、、、。」

「待ってください、リンネさん!」

リンネが話そうとするとすかさずエリアナがリンネの口の前に手を置いて話を中断した。


「リンネさんの言いたいことは分かっています。、、、つまり、、、パンの食べ過ぎを指摘したいのですよね!?」

「違うよ!!」


リンネはすぐに否定して見せた。エリアナの察しは間違っていたようだ。しかしエリアナはリンネの否定も聞かず早口で話を進める。


「自分でもわかってるんです!でもパンを食べずに生きていける人なんていますか!?いないですよね!」

「ちょっと、、、。」

「だからしょうがないんです!でも魔獣討伐でちゃんとカロリーは消費しています。なのでご安心を!!」

「ちょっと、、、。」

「別に太ってもいませんから!」

「ちょ、、、。」

「パンだけは絶対に譲りませんから!良いですね!?」

「ちょっと、ストップ!!」


リンネは早口のエリアナにようやく口を挟む事が出来た。


「僕が言いたいのはそんなことじゃないんだよ。」

「じゃあ何ですか。」

「、、、最近、魔獣討伐で使ってる魔法、いつもと違うよね。」


エリアナはそれを聞いた瞬間何故か反射的にリンネから顔を背けて下を向いてしまった。

リンネは改めてエリアナを見つめる。その顔はまさに真剣そのものだった。そしてこう言う。


「最近ずっと闇魔法使ってるでしょ。」

それを聞いてエリアナは身体中が大きく震えるような感覚に陥った。

エリアナの何かを突くように鋭い口調で言い放れたその言葉は確かにエリアナの心を惑わさせていた。


「闇魔法が1番効率的に魔獣討伐出来るのも知ってる。でも使い魔契約の時、約束したでしょ。忘れたの。」

使い魔契約の時に交わした約束。それを条件にリンネとエリアナは契約を結んだ。

「しかも、そんな世間から“魔族の魔法”なんて言われてる魔法そんな沢山使っちゃダメでしょ。ましてやリーフテイルでは禁断魔術なんだから。」

リンネは本当に真剣だった。その顔には少し怒りも混ざっている気がする。だからかはわからないが、どうしてもエリアナはリンネの顔を直視できなかった。


「今まで僕に内緒で使ってたよね。国にバレたら処刑されちゃうかもよ。」

そう言い残すとリンネはフクロウの姿で窓から飛んで行った。


「そんなの、わかってますよ…。」


リンネはずっとこのことを言わずに我慢して私についてきてくれたのだろうか。それを考えると申し訳なさで胸が一杯になった。


しかしその後は何事もなかったようにリンネはエリアナに会いにきた。


※ ※ ※


ーーリーフテイル王国東門にて。

大きな門の前にある一人の少女が立っている。

彼女は美しい金色の髪をなびかせながらふわふわとした獣人特有の耳を可愛らしく動かしていた。

「仕事受け入れてくれる人いるかなー。でもなー。うちは安月給なんだよなあ。」


少女は困ったようにくしゃくしゃと手で髪の毛をかいた。


そして少し門を見つめると決心を決めたようにリーフテイル王国へ足を踏み入れた。

「求人、やるかー。」

第二話です。1話の後書きで書きましたがエリアナ氏はまだニートになりませんでした…。3話ではきっとニートになるはずなので!次回もよろしくお願いします。

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