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⑷『茫洋足る、風景模写』
⑷『茫洋足る、風景模写』
㈠
茫洋足るものよ、どうにかなれよ、と俺は、俺自身に対して、注文を付ける。確かに、茫洋として居る風景であるから、俺は俺で、それをどうにか変化させようと試みたのは、何度もあることなんだと、記憶してはいるのだ。
㈡
それでも、どうにもならない。これは、例えば安部公房の『壁』の様な話ではない。俺の場合、見える景色が広すぎて、収集が付かないと言ったほうが、適切だろう。俺は如何すれば良い。難しい世界に入っちまったよ、と嘆くしかないのだ。
㈢
それでも、この小説を終わりまで書くからには、風景模写を描くことを、続けなければならないし、であるからして、例えば、視覚を変容させることで、模写の方法論を変化させると、風景模写の上塗りは出来るのである。