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✿ 桜の華 ― *艶やかに舞う* ―   作者: 設楽理沙


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74  戸惑いを隠せない 



「さっき話したことはほんとのことよ、作り話なんかじゃないの。



 あの日、俊くんが恵子に会いに行ったのは、浮気してた時に撮られてたビデオ

からの画像? っていうのかなぁ、自分と会わないのならそれをあんたに見せる

って脅されて、それで会いに行ってたのよ。



 だから、あの日はほんとにロビーで話してただけで、ふたりはホテルの部屋になんて入ってなかったのよ。


 ほんとに恵子もすごいことするもんよね。


 だから、俊くんは濡れ衣であんたに刺されたってわけ。

 どうせ刺すなら恵子にすればよかったわよね。あははは」



「どうして今頃になって、そんな大事な話を……」

 桃は絶句するしかなかった。




 康江からしてみれば、仕方のないことだったのだ。

 話してなかったのには、特にこれという理由はなかった。


 ただ、桃が精神的に参っていたこと、俊との間に起きたあの日のことや俊とのことについて桃から記憶が戻ったという話が出てなかったこと、そして娘である桃の俊への裏切りに対する頑なまでの姿勢を見ていて、話したところで馬耳東風だろうなどと判断していたためでもあった。



 話をしてもよかったのだが、これまで話す機会もなく、敢えて話さずとも

いいのかもしれないという思いもあった。


 康江の中でこの件に関して、すべてが曖昧な境界線上にあった。


 とはいえ、これまで娘に事の真相を話さずにきたこと――――それは、康江の欠点ともいえる、相手の気持ちを多くは慮れないところにあったのではないかとも思えなくはない……。


 しかしながら、一方で無意識のうちに、娘が勘違いから起こしたであろう

傷害事件で、苦しむことを予見していたからかもしれない。


          ◇ ◇ ◇ ◇



 母親から今更に聞かされた俊の真実に桃は戸惑いを隠せなかった。




 あははっ、ほんとに今更だわ。

 それに3年前に真実を知らされていたとして何かが変わった? 


 混乱するばかりで精神的に不安定になっただけの話じゃないだろうか。


 到底俊との生活を始められたとも思えず、また今頃になって何故

真実を話したのかと、母親を責めるのもなんだかなぁ~と思うのだった。




 これまで当時の事件や俊のことは考えないように暮らしてきた。


 だが、別の真実があったと分かり、ひとつだけ俊に言いたいことができた。


 どうして、恵子に脅されていると私に話してくれなかったのかと、

言いたかった、詰りたかった。


 あははっ、だけど今更よね。

 私が俊を刺したという事実は消えない。


 ほんとっ、ほんとっ、私ったら馬鹿だ。



 お母さんの言う通りよ。

 恵子を一刺しして再起不能にしてやればよかったのよ。


 あの悪党め! 




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