表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/108

36

36    





「水野だが、俺の妻と知り合いってこと?」



「奥さん、ほんとにお綺麗ですよねー」



今原は俺の質問に、質問とはかけ離れたことを言い出した。

ますます怪しい奴だ。



コイツ、何なのだ。



俺は呆れた感を醸し出したのだが目の前の男は場違いというか

雰囲気にそぐわない言葉を繰り出すのに|なんの躊躇も持たない人種《場の空気を読まない奴》

のようで、苛立ちながら俺はヤツの話を続けて聞かされた。



とにかくヤツは桃のことを綺麗だと何度も誉めそやす。

他所の男の伴侶を褒めることって、奴にとって何の意味があるというのだ。



何が目的なんだと、キモイ奴認定しかけた時のこと。



「いや、あんなにきれいな身体をいつも見られるなんて、羨まし過ぎて……。


それと水野さんは奥さんが他人に見られるのを許されていて

心の広い人だなぁ~って、僕ならもったいなくてとても人様には

見せたくないというか出したくないっていうか。


僕は狭量な人間なものですから。


水野さんのように心の広い人のお蔭で僕も含めて裸婦画の授業を取ってた

学生はとてもいい絵を描くことができました」




「裸婦って? なんだそれ」


「あぁ、僕は芸大卒で女性の裸を描く授業があって、その時のモデルが

奥さんでした。学期の途中からで短期間でしたが」



「その授業っていつだった? 大学だから平日なんじゃないのか? 

妻は休日のバイトはしているが平日に働いてるなんて聞いたことがない。


お前の勘違いじゃないのか?

第一俺が裸のモデルなんて許すわけないだろ!」



俺がイラついたまま話を続けたのと、許すわけないと言ったことで

流石のニブチン野郎も何かを察したようで


『すみません、つい見知った人の顔をみて懐かしくなったものですから、

馴れ馴れしく話し掛けてしまいました。


そうですね、僕の勘違いかもしれません。

申し訳ありませんでしたっ、失礼します』



と言い置き、彼は自分の元いたテリトリーに戻っていった。





裸のモデル、いくら考えても妻の桃からは遠い仕事だった。


よりによって先輩に向かって奥さんの裸が綺麗でしたなんて、アイッの頭は

ネジが何本か抜けているとしか思えない。


まったく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ