15☑ ◇残酷な日常
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◇残酷な日常
苦しみから抜け出し救われると考えていた私の目論見は、周囲四方八方から
無言の圧力で潰えた。
この日を境に私の無限ともいえる苦しみの日々がはじまった。
何も悪くないのに何一つ人生の中の大切な選択ができないという衝撃に
自分は打ちのめされた。
浮気され傷ついている自分の主張を誰もかれもが否定し、人の気持ちを
傷付け魂を痛めつけた裏切者は、私以外の人たちから鷹揚に許され、
そのことで私にも許されたと……早々と何事もなかった、自分の犯した浮気
など些細なことだったのだと己に言い聞かせているかのように、何食わぬ顔で
平然と食べ、安眠し、何の後悔も呵責もなさげな風に暮らしている。
そして自分が苦しめておきながら、更にこの先も私を苦しめようと
しているのだ。
夫と恵子の浮気を知る前と同じような毎日が、チクタクと時計の針が進むように
空しく進んでゆく。
夫を送り出し子供の世話に家事そしてまた仕事から帰って来る夫を出迎え、
たまには夫婦生活もいたしたりして。
違ったのは自分の抱えている感情だ。
自分の気持ちだけがどこかに置き去りにされたまま過ごす日々に、感情が
追いついていかない。
今までのように回数あるわけじゃあないけれど、夫婦生活もある。
家族会議のあった日の私の剣幕を聞いていたはずなのに……
その場では意気消沈していたはずなのに……
夫はチャレンジャーだった。私に何度拒絶されてもすり寄って来るのだ。
何度目かの攻防の末、私は疲れ果ててしまい身体を委ねてしまうことになる。
肉体的に弱い立場での攻防はかなり疲弊する。
私は身体を明け渡すことにした。
身体はくれてやる、魂の抜けた身体を……という気持ちで。