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恵子との浮気を確信したからには、どうしても白状してもらわなければ
ならない、そんな気持ちで続けて夫を問い詰めてゆく。
「10月の駅横の駐輪場……にあなたいたのよね。
そしてあなたの側には顔見知りの女がいた。その女はあなたに言った。
『いいじゃない。黙ってれば分かんないんだから、これからも会おうよ』」
私の詰問に奈々子を抱っこして寝かしつけていた夫は娘を布団まで連れていき
寝かせた。
そして私の前に来ると『ごめん……』と言った。
「いつからなの? 10月なんて私が出産してから半年も経ってるでしょ」
「もっと前から恵子さんとは切れてる。
あの日はどうしても会って話がしたいと言われて道端で会っただけなんだ。
会ってくれないなら君に自分たちの関係をバラすと言われてね」
「一度だけの関係じゃなかったのね」
「すまない、誘惑に負けてしまった」
「もしかして、産院で会った頃からなの?」
「……」
「あななたち信じられない。
俊ちゃん、恵子は私の親しい友だちなのよ。
普通奥さんの友人となんて浮気する?」
一方的に私がしゃべるだけで『すまない』と言ったきりその後、
夫は口を噤んでしまった。
「恵子もあなたも最低っ。いつかふたりとも地獄に落ちればいいっ」
私は夫に嫌な言葉を吐き出すと、そのまま急いで風呂に入り
子供の寝ている部屋に布団を敷いて寝た。
あの後、俊がどうしてたかなんて、知らない。
私の気持ちはとうに決まっていた。
信頼を寄せ、大好きだった人から裏切られたのだからこのまま一緒に暮らす
なんてそんな選択肢ある?
なんたる罰ゲーム。
私はそんな罰ゲームはごめんだ。