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104 淡井恵子の番外編14
俺が声を掛けて相談した総務の米本さんが、偶然にも淡井さんの良くない行状を
知っていたこと、そしてその事件は紙面の片隅ではあるけれど掲載されていて
証拠として十分であることなど、米本さんから聞いた話を全て新井に話した。
「驚いた。とんだ食わせ者に騙されるところだった。
市川、嫌な役どころなのに、教えてくれてサンキュー。
完璧だったよ。
俺を納得させるには十分、完璧だ」
「新井、元気出せよ。
実はお前を元気づけるためにダブルデートをご用意しておりますー。
カップルの相手はなかなか可愛くて良い子をチョイスさせて
いただいております」
「誰?」
「話に出てる米本さんな。ちょっと元気でたか」
「ははっ、米本さんか……いいな。
じゃぁ、その日はお言葉に甘えて弾けるとしますか」
「おう、そうしようぜ」
「ところで淡井さんの誘いはどうすんの? 沙織ちゃんが悲しむぞ」
「泣かせないよ。上手いこと断る。誰も彼女から恨まれないようにな。
だから、お前は普通にしてろ。
そのうち、どうしてお前からの誘いがなくなったのかも分かると思うから。
自然にフェードアウトでいいんじゃないかな」
新井を説得した日から2日後、俺は淡井さんにメールを送った。
『先日の返事だけど、止めておきます。
話してなかったけど俺と新井は学生時代からの友人で親しくしてます。
それで新井があなたと何度か食事に行ってるっていうのをたまたま昨日
聞いたので……分かるよね?
交際はしてないんだろうけど、たまたま昨日親友が淡井さんを何度か食事に
誘ってるって知って、やっぱり俺は気軽に映画に行くっていうのは違うかなと
思うので、折角誘ってもらったのにすみません。
会社では今まで通り同僚として仲良くしてください。市川』