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101 淡井恵子の番外編11
市川さんと彼女さんはとてもお似合いのカップルだった。
彼女さんは私との挨拶を終えると少し離れた席へ移動した。
「市川さん、彼女さん素敵ですね。
おふたりすごくお似合いです。
聞いてはいましたが、あんな素敵な彼女さんがいたなんて
市川さんが淡井さんに靡かなかったの分かります」
「そりゃあ、どーも。ありがとう。後で彼女に伝えとくよ。
早速本題なんだが……実は支店の誰にも話してないんだが俺と新井は
学生時代からの友達で親友なんだ。
で、ちらっと新井からは淡井さんとはいい感じになってるって聞いてたから、
昨日の彼女からの誘いに面食らってる」
「そうだったんですか」
昨日自分も淡井さんの様子を見ていたので、さもありなんと思った。
淡井さんは新井さんと市川さんが親友だなんて知らないものだから
二人をいいように手玉にとれると思っているのだろう。
淡井さん、人生そんなに甘くないですよ。
そっか、でも新井さん自身が淡井さんとのこと『いい感じになってる』って
言ってたんだとしたら……あちゃぁ~、私は絶望的なのかしら、とほほっ。
ここは聞きたくなかったかもぉ~。
「市川さん……私……」
私は感極まって万感の思いがこみ上げてくる。
オオバ―だよっ、美晴ぅ。でもでもっ、だって。
「どうした、米本!」
「すみません、自分だけ悦に入ってしまって。ちょっと興奮してます」
「えーっ、どういうこと?」
「私ね、淡井恵子さんの闇の部分を社内の誰よりも知ってると思います。
この情報はほんとにたまたま? 偶然のなせる業? で知り得たものなんです。
そしてそれに加え、自分の好奇心で更に詳しく調べてしまいまして……
市川さん、今確信しました。
私はこの日この時、市川さんのお役に立つべくして淡井さんのことを知る
運命だったのだと」
私が大仰に、だけど真剣に話していると……。
市川さんが目の前で受けて笑っていた。
「なんか、よく見えない話だけど、面白そうだよね。
ではその運命だったというわたくしめに、その話どうぞご教授くだされぇ~」
と、私との会話に乗ってくれた。
私……やっぱ、この人、好きだ。