100 ◇支店のイベントのその後
100 淡井恵子の番外編10
◇支店のイベントのその後
支店で行われたイベントの翌日の昼休みに入る直前に、総務課まで
伝票を渡しにきた市川さんからこそっと耳打ちされた。
「米本さん、ちょっと相談に乗ってほしいことがあるのでメールアドレス
教えてもらってもい~い?」
「?……あぁ、はい。いいですよ」
そしてその夜、市川さんからのメールが届いた。
『実は昨日、淡井さんと映画の話で盛り上がったんだけど、その時に映画を
見にいきませんかって誘われちゃってね。
米本さんも知ってると思うけど俺、彼女いるでしょ?
それだけでも、淡井さんとのデートはないんだけども……実は他にもデート
できない理由があるんだよね。
で、そういうことも併せて相談っていうか……淡井さんがどういう人なのか、
知ってる範囲でいいから教えてもらえないかと思って』
私は市川さんからのお願いメールを読んで『よっしゃー!』って思わず
叫んじゃった。
淡井さんの過去の数々の行状を知っている身としては『二股くらいやってのける玉
だって分かってたわー』の心境である。
翌土曜日、私たちは奇しくも……って、私が指定したのだけれど従姉が挙げた
結婚式場のあるあの惨劇の起きた同じラウンジで待ち合わせをした。
いやぁ~、ここって待ち合わせなんかにちょうどいいのよ。
決してわざとじゃない。
恋人がいることは市川さんから前もって聞いていたんだけど、
この日、市川さんは彼女さんと一緒に現れた。
ほんとに恋人が市川さんのように誠実な人だといいなと思った。
彼女に誤解を与えたくないからということだった。