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第16話

 私の名前は早乙女清華さおとめ さやか

 高校一年生の美少女である。

 どれだけ美少女なのかと言えば、日本で二番目に美少女だ。


 ちなみに日本で一番美人なのは、私の異母姉。

 早乙女聖良だ。


 美人で優しく、清楚な……私の大好きなお姉様。

 そんなお姉様だが、最近、様子がおかしい。


「お帰りなさい、お姉様。……遅かったですね」

「……えぇ」


 たまに帰るのが遅くなった。

 私もお姉様も同じ学校に通っている。

 学年はお姉様の方が一つ上――高校二年生だけど、下校時刻にそれほど差はないはずだ。


「……お友達と、どこか遊びに出かけていたのですか?」

「まあ……そんなところね」


 お姉様は目を少しだけ逸らした。

 気まずそうな表情だ。

 それに少しだけ顔が赤い。


 ……怪しい。


「恋人ですか?」

「え?」


 試しに聞いてみた。

もちろん、冗談だったのだが……。


「ち、違うわ!」


 お姉様はいつになく、声を荒げて否定した。

 いつもはクールで落ち着いているお姉様が……。


「あ、あんなヘンタ……いえ、何でもないわ」


 ヘンタ……。

 変態!?


 気になることを言いかけたお姉様は、しかし気が付くといつもの落ち着いた表情に戻っていた。


「恋人とかではないわ。……友人よ。お爺様たちには、言わないでね。うるさいから」

「……え、えぇ、もちろん」


 私が頷くと、お姉様はスタスタと歩き去って行った。

 ……胸騒ぎがする。




 

 それからしばらくの時が経った、休日。


「~♪」


 その日のお姉様は、とても機嫌が良さそうだった。

 いつも、朝は不機嫌そうにしているのに、今日に限っては鼻歌まで歌っている。


 さらにいつもより、念入りに髪を梳かしている。

 そして普段はしない化粧も、バッチリと決めていた。


 ……ここまでは、いい。

 お友達と遊びに行くのだろうと、解釈できる。


 しかし気になったのは服装だ。

 シースルーのトップスに、黒いミニスカート。


 少し、露出が多い。

 同性の視線よりも異性の視線を意識するような、そんな格好だ。


 普段はこんな服、着ない。

 そもそも持っていたことが驚きだった。


「少し大胆すぎかしら? いや、でも、これくらいなら……」


 鏡の前でブツブツと呟くお姉様。

 かれこれ十分以上、自分の恰好を念入りに確認している。


 普段は適当なのに……。


 やはり、彼氏だろうか。

 きっと、そうだろう。

 同性の友人相手にここまでお洒落したり、服装に悩んだりするはずない。


 男の人に興味なさそうにしているお姉様にも、ついに春が来たということか。


 正直、複雑だ。

 大事なお姉様を、どこの馬の骨とも分からない男に渡したくない気持ちがある。


 でも、今のお姉様は楽しそうだ。

 肌も少し赤くなって……完全に恋する乙女の顔になってる。


 ……妹なら、やはりお姉様の恋路と幸せを応援するべきだろう。

 私は嫉妬の心を抑え込むと、心の中でお姉様にエールを送る。


 頑張れ!!


「……よし」


 私がエールを送るのと同じタイミングで、お姉様は小さく拳を握りしめた。

 どうやらお洒落には満足したらしい。

 

 それからお姉様は最後の仕上げと言わんばかりに、自分のスカートの中に手を入れた。

 そしてスカートの中から、黒いレースの、妙にセクシーな下着を抜き取り、鞄にしまった、


 ……え?

 え!?

 えぇぇぇぇ!?!?!?


 私は脳がフリーズした。

 その横をお姉様は鼻歌を歌いながら、通り過ぎる。


 そして出かけて行ってしまった。

 中に何も履かないまま。 


「え? な、何で……ど、どうして!?」


 下着を履かない理由が分からない。

 暑いから?

 いや、そんなはずない。 

 そもそもあんなスケスケヒラヒラで布面積の少ない下着なんて、履いてようが履いてなかろうが、体温管理には何の影響もないはずだ。


 まさか、お姉様の趣味?

 露出趣味!?


 いや、そんなはずがない!

 だって、清楚で可憐なお姉様にそんな特殊な性癖があるはずない!!


 じゃあ誰の……まさか!?

 彼氏の趣味!?


 変態って、言ってたし……。

 いや、でも、彼氏が変態だったとしても、お姉様が言いなりになる理由がない。


 ということは、まさか……。


「脅されてる!?」


 弱みを握られてる!?

 それで調教されてる!?


 えっちな本みたいに!?


 そ、そんな……。

 美人で清楚で可憐なお姉様を好き放題するなんて、うらやま……いや、違う!!

 

 許せない!!

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