表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/25

第1話

 俺――氷室春樹のクラスには“聖女様”がいる。


 早乙女聖良。

 今、この学校でもっとも美人で可愛らしいと噂される、美少女だ。


 遠い北欧にルーツを感じさせる、整った顔立ち。

 絹のように美しい銀髪に、宝石のように煌めく碧い瞳。

 すらっとした長い手足。

 制服の上からでもしっかりと分かる、メリハリのある体つき。


 何より名門出身故に感じさせる、優雅な立ち居振る舞い。

 そして何より、どんな相手にも優しく、穏やかに接する姿は、気品と清らかさを感じさせる。


 そんな彼女を誰かが“聖女様”と呼び出し、それは自然と学校中の生徒に膾炙された。

 ……まあ、彼女の性格云々だけでなく、逆から読むと「良“聖女”乙女早」になるから、という理由も大きいが。


 そんな美少女、早乙女は俺の隣の席に座っている。

 もちろん、だからと言ってどうと言うことはない。


 たまにその横顔を眺めて「うわ、睫毛なが!」と見惚れたり、胸をチラ見して「デカっ……」と驚嘆したりする程度だ。


 特に会話もなく、挨拶を交わす程度の関係……のはずだった。

 一週間前までは。


「おはよう、氷室さん」

「あぁ……おはよう。早乙女さん」


 俺が挨拶を返すと、早乙女は微笑を浮かべた。

 慈悲深そうな、聖女の微笑みだ。

 

 そして彼女は席に着く。

 ここまでは、普通だ。


 席に着いてしばらく、彼女は携帯を取り出した。

 そして何やら操作を始める。

 同時に俺の携帯が僅かに振動した。


 メッセージが届いていた。


『今日は黒』


 早乙女からのメッセージだ。

 思わず隣の席に視線を向ける。


 すると早乙女は悪戯っぽく微笑み、ウィンクをした。

 ……いや、意味分からん。


 ここ一週間、毎朝、早乙女はこのような謎のメッセージを送りつけてくる。


 今日は黒。今日は白。今日は青。今日は赤。今日はピンク。

 何かの色について、聞いてくる。


『何の話?』


 メッセージを送り返してみると、すぐに返答が来た。


『何だと思う?』


 分かるわけないだろ。

 と、言いたいところだが薄々察しがついている。

 アレの色なんじゃないかと。


 しかし早乙女がそんなことを俺に教えてくれる理由が分からない。

 何より、あの“聖女”様がそんなことするか? と疑問が湧く。

 

 しかし、だからこそ、気になる。

 本当にスカートの中身について、教えてくれているのかどうか。

 本当にその色の下着を履いているのか。


 モヤモヤする。


 そのせいか授業も集中できず、気が付くと三時限目を終えていた。

 もう、昼休みだ。

 学食で何を食べようかな……そう思っていると。


 後ろから袖を引かれた。

 そこには聖女様……早乙女がいた。


 一瞬、ドキっとする。


「何か用か?」


 聞き返すと、早乙女は悪戯っぽく微笑んだ。

 そして俺の耳元で、囁いた。


「今、履いてないから」

「……は?」

「じゃあ、放課後、またね。氷室()?」

 

 早乙女は微笑むと、俺に軽く手を振って別れてしまった。

 一方、俺は早乙女の言葉の意味を理解するのに、少し時間を要した。


 履いてない……。

 何を?


 ……パンツを!?


 そんな、馬鹿な!!


ブックマーク、評価等いただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ