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2. トートロジーとか、間違いだと知っていても、つい使いがちな言葉とか

「よっし。次はそっちの番~。言えないならオレの勝ち~」


 ひとしきり笑って落ち着いたあと、話を元に戻す。さっきはオレが言ったから、次は相手の番だ。


「んー……ああ。『違和感を感じる』とか?」


「え? それ、間違い?」


 間違いと思っていなかった言葉を言われて聞き返すと、説明が追加された。


「トートロジーってやつだな。同語反復とも言う」


「ああ、『馬から落馬する』とかと同じか。違和感の『感』と『感じる』が重なってるんだな」


「そうそう。『頭痛が痛い』とかな」


「あー、よく聞くやつ。……てか、またオレの番じゃん」


 向こうがトートロジーの例をひょいひょい口に出すせいで、またオレの番になってしまった。


 目の前にいる顔はきょとんとして目を瞬かせていたが、さっきのやり取りを振り返って順番を数え終わったのか、その表情がにやりとしたものに変わった。


「これで言えなかったら俺の勝ちだな」


「くっ……うー……えー……『空目そらめ』」


 悩んで、迷って、仕方なしに口にした言葉に即座に言葉が返される。


「『空耳そらみみ』」


「あーもー! だから言いたくなかったのに!」


「いや、『空目』って来たら『空耳』って言うだろ」


「そーだけど!」


 「空目」も「空耳」も、見間違いとか聞き間違いとして使われるところをよく見るようになった言葉だが、本来はどちらかというと、存在しないものを見たり聞いたりする「幻覚」とか「幻聴」という意味に近い言葉なのだった。


 相手が誤用だと知らなければ、どちらも自分が使えるかと思っていたが、やはり知っていたらしい。


(地味に詳しいんだよな……悔しい)


 む、と眉を寄せる。


「けどさー、『空目』も『空耳』も、つい使っちゃうよなー。誤用って知ってはいるんだけど」


 再び自分の番になったため、知っている誤用を思い出そうとしつつ、時間稼ぎにそんなことを話す。


「まあなー。『見間違い』とか『聞き間違い』って言うよりも言いやすいからかな」


「それ系で言うとー……あ。『耳障りがよい』とか?」


「あー、本来は『耳障りな音』とか否定的な意味で使うんだよな」


「そうそう。そういえば、こっちの方は、似てても『目障り』が肯定的な意味で誤用されるのは見たことないなー」


「たしかに。んー……次、俺か……『課金する』とか?」


 言われた言葉に思わず両手で顔を覆った。


「あー……使う。使っちゃう……。そう。間違いって知ってるんだよ。ちょっと前に知ったんだよ。けど、使っちゃうんだよなー……」


「これはなー……ソシャゲに『課金する』とか普通に言っちゃうよな」


「そう。本来はお金の支払いを課するってことだから、支払う側が『課金する』は違うんだよなー……知ったときは、へーって思ったけど……支払う側が言うなら『課金される』が正しいって知ってても、つい、なー……」


「『無課金』って言い方なら、ギリギリ、セーフ?」


「いやー、どうだろ」


 なんだか微妙にダメージを受けてしまった。


 次はまたオレの番か。


今回の話で言及した誤用:

・違和感を感じる

・馬から落馬する

・頭痛が痛い

空目そらめ

空耳そらみみ

・耳障りがよい

・課金する


補足:

・トートロジー、同語反復、重言じゅうげんは、言葉の強調方法であり、誤用ではないという話もあるようです。


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  • 【注記】
  • ※言葉の使われ方は変わるもののため、当小説内に記載している内容について「正しい」「間違っている」などと主張するものではありません。
     執筆時点で「誤用と言われていた」「そう思う人もいる」くらいに考えてください。
    ※書いている人は、言葉について専門的に学んだわけではないため、正しい知識を得たい方はご自身で調べるなどしてください。
    ※あくまでも「小説」です。たまに脱線して誤用以外の話をすることもあります。
     誤用について学びたいという用途には適さないため、そういう目的の方は、他の方の書いた誤用についてのエッセイなどを読む方がよいかと思います。
+注意+

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