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関ヶ原から十四年、遂に大坂の陣です。しかし再び…。

関ヶ原の戦が終了してから十四年は特に何もなく過ぎていきました。そして遂に大坂の陣が始まろうとしているのですが…再び変事が!?

「おおっ、これが名古屋城か…さすがは天下普請の大城、壮大なものだな」

どうも、結城秀康です。今は慶長十九(1614)年です。俺はまだ無事に生きています。史実より長生きしてるし!それはともかく俺は今、尾張国の名古屋に来ています。此処は皆様ご存知の通り、弟の義直君の為に家康さんが諸大名に命じて造らせた天下普請の城です。しかもこの天守閣、他の城の天守を見た時も感動したけど、前世(現代)に見た鉄筋コンクリートの物と見た目が同じな木造天守、やはり違う感慨が湧きおこるものです…何せ太平洋戦争の空襲で燃える前の天守だし!しかも出来立てほやほや!ああ、この時代に転生してきてこれは最高です!ああ、写メに撮りたい!何でここにスマホが無いんだ!!


オホン…それはさておき、俺が何故名古屋に来ているのかというと、家康さんの後方支援の為です。そうです、遂に大坂の陣が始まるのです!関ヶ原から早や十四年、此処までは一応平穏に来ましたがやはり家康さんは豊臣をこのままにしておくつもりは無いようで、方広寺の鐘の件で色々いちゃもんつけて豊臣に戦支度をさせてしまいました…まあ、豊臣は豊臣でこのままにしておくつもりは無かったようです…特に淀殿が。

というわけで、家康さんは豊臣を滅ぼす為に全国の大名に号令を発しました。現在、二十万を超える軍勢が大坂城を囲んでいます。

対する豊臣は豊臣恩顧の大名に号令するも反応はなく、浪人達を集めて大坂城に籠っています。その数、豊臣は十万を号していますが実際は五万もいれば御の字位のようです。武将の方も真田信繁さんは俺の家臣だし、後藤又兵衛さんは本来の史実と違って黒田さんと細川さんの領地が隣り合っていなかったからか、黒田長政さんとの仲はあまりよろしくはないようですが出奔するにまでは至ってなく、今回の戦も普通に黒田軍の中にいるので、何処まで揃っているのやらといった所です。

そして今回の戦は二代将軍である家直君の初陣でもあります。家康さんとしてはここでしっかり自分の後継者たる家直君に箔を付けておきたい所のようで、駿府を発つ前に少し話をしましたが年甲斐もなくとても張り切っておられました。

ちなみに何故俺が後方支援なのかというと、そこは俺個人の線引きの為でもあります。あくまでもこの戦は徳川の天下統一の為の総仕上げであるので、大御所たる家康さんと後継者たる家直君の手で行うという事に意味があると戦を始める前に俺がそう主張し、皆もそれを認めてくれたという話なのです。ちなみに結城家としては跡継ぎの康直君(次男)が四千の兵を率いて参陣しています。康直君も初陣ですが、富正さんと信繁さんを補佐に付けてあるのでまあ大丈夫かなと思っています。とはいえ、俺も何もせずに江戸で留守居というわけにもいかないので、義直君の居城の完成状況の確認も込みで名古屋まで出張り後方支援に従事する事になったので今は此処にいるというわけです。この戦が無事に終わって家直君や康直君に自信と経験が付けば俺のやる事もあまり無くなるだろうし、結城家も康直君に譲って今度こそ左団扇生活の為の準備に入れるはずです。ああ、ここまで長かった…この十四年、江戸と下総と駿府を行き来しながら政務に従事するばかりで、たまの休みだってぐうたらする時間なんてほぼ無かったし…でも、これが終われば遂に、遂にお気楽人生を迎える事が出来る!さあ、その為にもこの戦はしっかり徳川に勝利してもらうよう俺も頑張るぞ!とか思っていたのですが…。


「大御所様が倒れただと!?」

「はっ、一昨日夕餉を召し上がってしばらくした後、急に苦しみだされて…」

「まさか…毒か?」

「いえ、医師の見立てでは毒の類ではないと…されど未だ意識は回復されず、大坂の諸将達は皆口々に不安を申しているとか」

大坂よりの急使のその知らせに俺は全身から冷や汗が流れる。何で!?何でここに来て突然そんな展開に!あんなに人一倍健康に気を遣っていた家康さんが!?まずいぞ…この状況のまま放置すれば大坂での戦どころか徳川幕府そのものが空中分解しかねない。家直君もおそらく奔走はしているだろうが、何分経験不足の彼に対して未だ心服していない者もいる。今までは家康さんと俺で何とか抑えてきたが…ともかく、このままにしておくわけにはいかない!

「馬引け!すぐに大坂に向かうぞ!」

俺は手勢(一応、身辺警護と仕事に従事する為の兵を三百程連れて来ている)を率い大坂へ急行する事にしたのであった。


~大坂・徳川本陣にて~

「…父上!」

「家直様、何度も申しておりますように皆の前で私を父と呼ぶのは御控えください。あなたはあくまでも徳川家康様の御子であり、将軍なのですから」

俺が到着すると、不安そうな表情の家直君が飛んでくるように出迎えて俺を父と呼ぶので、まずはそれを嗜める。プライベートな場でならともかく、皆の前で俺が家直君より上の立場である形を取るのは良くないからだ。これは俺も家康さんも何度も言っている事なのだが…この状況では落ち着けというのも無理があるか。

「大御所様は?」

「此処では十分な治療は不可との事で京の都へ…」

む、行き違いになったか。

「それで、戦況の方は?」

「豊臣方も様子を見ているのか全く動きはなく…こちらの諸将も今はそれぞれの陣で待機しているようですが、大御所様無しで戦が続けられるのかと皆口々に…」

ちっ、思った通り家直君一人ではまとめきれないか…あまり介入したくなかったがやむを得ないか。

「本陣の横に俺の馬印を立てろ!そして諸将に『結城秀康此処にあり!これより大御所様に代わって戦の指揮を執る!諸将は至急本陣へ参集すべし!』と伝えろ!」

俺の命に使い番が各諸将の陣へ走る。

「ち…結城殿」

「家直様、出過ぎた真似とは思いますがあなたは初陣、まずは私に従ってもらいます…良いですね。但しあくまでも総大将はあなただという事はお忘れなく」

「はい、分かりました。よろしくお願し…する。結城殿」

俺の言葉に家直君は力を落としたような何処かほっとしたような表情でそう答える…この戦の間に少しは自信をつけさせないとならないな。家康さんも本来の史実では大坂の陣が終わった次の年に死んでいるし、しかも今回倒れて人事不省状態、年齢も考えればもしかしたらこのままという可能性も否定出来ない。もしそうなれば将軍である家直君に頑張ってもらわなければならないしな。この先の事を考えると不安だが…今はとりあえず目の前の戦だ。


~数刻後、本陣にて~

徳川本陣には参陣している各諸将が集まっていた。

「集まったな。戦の最中に招集した事は誠に申し訳なく思う。皆も知っての通り、大御所様におかれては数日前に倒れたまま今も意識は回復されておらぬ。本来ならば大御所様抜きでこの戦を続ける事は難しいのかもしれない…しかし、大御所様がこの戦を始めた理由は戦の無い世を造る為の総仕上げを行う事にある!皆も知っての通り豊臣は戦をし続ける事しか出来ぬ家、乱世が生んだ権化ともいうべき存在である!このまま豊臣があり続ければまた新たな戦の火種となるのみ!既にこの世の者達の多くは百年以上続く乱世に苦しんでいる!大御所様はそれを感じ、この戦を以て乱世に終止符を打つべく豊臣を滅ぼす決意をしたのである!ならば此処に集いし我らが成す事は何か!その大御所様の意志を貫徹する事にこそある!よって、この秀康、大御所様の不肖の子たるこの身では不足かもしれぬが、それを継ぎこの戦の指揮を執る決意をした次第である。皆も思う所はあるやもしれぬが今は私に従っていただきたい」

俺はそう言って頭を下げる。これが家康さんだったらもっと偉そうに命令口調で言えたのだろうが、俺の立場は将軍の実父ではあるが、あくまでも幕府の政治に参加する大名の一人に過ぎないのでこういう形を取ったのであった。

「頭をお上げくだされ結城殿。あなたが指揮を執る事、この場にいる誰も異を唱える事は元よりございませぬぞ」

そう口火を切ったのは家康さんの相談役として参陣していた真田十徳斎(昌幸)さんであった。ちなみにこの人もまだ生きてます…っていうか、とても元気です。おそらく本来の史実とは違って配流されてないから、その分ストレスも感じてないのが要因かなぁとは思っていますが。

「十徳斎殿…」

「結城殿、あなたはこの儂をも出し抜いて関ヶ原の戦の大勝利の礎を築かれた。さらに大御所様や家直様を良く補佐し、我ら外様の者達に対しても分け隔てなく接してくださった。それは此処にいる全ての諸将が分かっている事、そのあなたが指揮を執るというのならそれに対して否やはございませぬぞ。なあ、皆の衆!」

『応っ!我ら一同、結城秀康様の指揮に従い、将軍家直様の御為に働きまする!』

十徳斎さんの言葉に居並ぶ諸将がそう一斉に声を上げる。

「皆、ありがとう。ならばこれより軍議を行う!これ以上豊臣に付け入る隙を与えぬ為にも早急に戦を進めるぞ!」

『応っ!!』


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― 新着の感想 ―
[一言] ストレス要素が亡くなった結果、寿命が延びてそうな信之兄ちゃんがいますねこれは。
[一言] 秀康殿、左団扇と言いつつどんどん実績を積み上げて…。 これは隠居出来そうにないですね。 お労しや、兄上……(草葉の陰から秀忠君 真面目な話、島原一揆にも駆り出されそうな勢い。
[一言] 健康マニアの家康さんは、常時自家製漢方薬を服用していたが、その原料に水銀が… あの歳まで生きていたこと自体が規制なんだよな~…
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