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銀の月が見える夜  作者: 八十浦カイリ
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第九話 招集

雪穂は再び、あの教会を訪れることになった。

「色々説明することがあるから、放課後教会まで来てくれ」

伊織にそう言われたので、そちらに向かうことにしたのだ。元々今日は風子と遊ぶ予定があったものの、風子は怪我をしたので早く帰されることになったし、

正直面倒だったが、行かない理由はなかった。

「ま、あたしも色々気になることはあるもんなぁ」

悪魔との戦い方もそうだが、何より自分が今後どうすべきというのが気にかかった。


「こんな風に誰かに戦わされるっていうのが、まず信じられないもんなぁ…」

誰かにこれをやれと言われたらノーを突きつけたくなる反抗期真っただ中の性分である雪穂には、自分が戦いに向かう姿が想像できなかった。

教会の大きなドアを開ける。自然と、背筋がピンと張るような気がした。

「よう、早かったじゃねーか」

ドアを開けると、伊織が雪穂のことを出迎える。

「あの後全校集会からの授業中止で帰り。おかげで冬休み潰れそう」

「そりゃご愁傷様」

澤田の件は解決したので雪穂はもう特に気にしてはいないのだが、問題はあの戦いがどういう形で処理されたのかだ。澤田と自分が戦ったことが明るみに出てしまえば、自分の処遇も危ないだろう。

そう考えると冷や汗が出てくる雪穂だったが、正直今気にすることでもないので、まずは目の前のことに集中しようと、背後のドアを閉める。


ギィという音を立てながら、雪穂が歩を進めると同時にドアが閉まる。

「…ここの建物結構古いの?」

「ざっと80年くらいの歴史はある。だからちょいちょいドアとか建付け悪いところあるんだよ。ドア開かなくて開かずの間になってる所あるぞ」

「直しなよ」

「直せねえんだよ色々事情あって」

「マジ?」

などと喋りながら進んでいくと、伊織とよく似ている顔立ちの少年が、雪穂の方を柱に隠れながら見ていた。


「…あの子誰?なんか伊織くんと似てるけど」

「妹だよ。おーい夜空ー、怖くないからそっちに出て来ていいぞー」

「………ほんと?」

「ほんと。このお姉さんちょっと目つき悪いし柄悪いけど、悪いやつじゃねえから」

いつの間にやら人のことを好き勝手言いやがってと内面で不満を漏らしながら、夜空と呼ばれた少年…改め少女の方を見る。

伊織と顔立ちはよく似ているが、どこかおどおどとした雰囲気で、短めの髪と男装とあいまってややチグハグな印象を受ける。

「…あの、伊織から聞いていたと思いますけど、桐野夜空、って言います。あなたが雪穂さん、ですか?」


「なんだ伊織くんから聞いてたんじゃん。そうだよあたしが八坂雪穂だよ。つーか柄と目つきの悪さは伊織くんも大概でしょうが」

そのまま伊織の方を睨むと、彼は無言でひっそり舌を出すのみで答えた。

「(この野郎………!ほんとこいつ口開かなければ可愛いんだけどって思ったけど、口開かなくてもクソ生意気だわ)」

「あ、あんまり新入りの人いじめちゃダメだよ……」

「いじめてねーもん」

なおも態度を変えない伊織を、夜空が慌てて制止しようとする。その様子をひっそりと見ていたのか、一人の青年が雪穂たちの前に現れる。


「…あ、尊さん。どうしたの?」

「広間がやけに騒がしかったもので。もしかして伊織が呼んだのか?」

「ん、そうだけど」

一体何のために呼ばれたのか雪穂もいまいち理解出来ていなかったが、

「もしかして、夜空ちゃんとかここの人紹介するために呼んだ?」

「そりゃ新入りだしなお前。今日はたまたま全員揃う日だし、それに知らないやつらと連携は取れねえだろ?それに。お前はまだ儀式具の使い方だってちゃんとはわかってねえし」

勝手に自分の身体が動くようになっていたとはいえ、まだまだあれの使い方に雪穂はまだ慣れていない。いずれにせよ、ちゃんとした説明は受けるべきだと、雪穂は考える。


教会のドアが開かれる。すると、雪穂よりは少し年上だろう男女がそこにいた。

「こんにちはー。あれ?知らない子がいるな」

「はろはろ~~!何々~?この子もしかして新しい新入り~?」

男性の方は少し疲れた顔で、やや姿勢を傾けているがかなり背が高く、

女性の方は耳にピアスの穴を開け、髪を金髪に染めている。

「言われての通り、新入りだ。名前を……なんて言ったか?」

「えっ尊さん覚えてないの?八坂雪穂。ちなみに今年で16になる高校1年生」


「16ってことは高校生?オレは天道雄介。大学通いながら悪魔祓いしてる。半分アルバイトだからここに来ることは少ないかもしれないけど、もし仕事で一緒になった時はよろしくね」

雪穂の方が名乗ると、男女の方も続けて名乗り始める。

「アタシ?アタシは四ノ宮一華。にしても可愛い子が入ってきて華が増えたなぁ~!同じく、もしお仕事一緒になったらよろしくね。先輩が手取り足取り教えてあげるから」

「よ…よろしく」

雄介の方のいやに爽やかな笑顔もそうだが、一華の方が自分をずっと見て来ているのが、雪穂にとってはなんだか居心地の悪さを感じた。そんなに新入りのことが気になっているのだろうか?


「気を付けた方がいいぞ、その人。男女問わずカワイイ子が好き~!とか言って絡んでくるから」

「イオリンってば人聞き悪いぞ~?それにカワイイ子が好きなのは誰だってそうじゃん?」

「う、うん。なんか…ここの人って全体的になんていうかその……」

変な人が多い、とまで言いかけて、流石にそれは失礼だろうと言葉を引っ込めて。

「個性的な人が多いね?」

何とか言葉を濁したが、言った後にこれは濁しきれてないなと後悔する。

「気にしなくていい。そのくらい癖の強いやつの方が、悪魔との戦いにも有利だって話もあるからな」

「…いや恰好だけ見たらあんたが一番癖強いんだけど」


「というわけで。雪穂、君に渡したいものがあるのだが……その話は神父が来てからでもいいだろうか」

「いいけど…渡したいものって何?」

もう既にペンダントを貰っているというのに、これ以上必要なものがあるのだろうか。雪穂は少し疑問を抱く。


「君だけの儀式具だよ」

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