昔と今とこれからと
庭の花壇を掘り起こす。
出てきたのは金属製の箱。
その箱についた土を払い、ゆっくり開けると手紙が入っていた。
『数年後の私へ。今どうしていますか』
昔の自分から手紙が届く。
青臭いこと、未熟なこと、夢にあふれた思いが書きつづられていた。
「数年前の私へ。今私はこういう状況です」
私はペンをしたためる。
今のことを。数年前から何があったのかを。家族や友人のことを。
「あの時の夢をかなえようと日々努力しています」
そうまとめあげ、手紙を書き終える。
そして手紙をもう一通取り出すと、再びペンをとる。
「数年後の私へ」
未来への思いをつづり、手紙に封をする。
「これでよしっと」
再び金属製の箱を庭の花壇に埋め、土をかぶせる。
本当は嫌なことがあった。
親に相談しても聞き流されて、友人に相談しようとしても連絡しても旅行中。
だからこうして、昔の自分と交流してみた。
あの頃の自分が考えていたこと、今の自分とどう変わったかを照らし合わせる。
(元気はもらえたかな)
踏み出せそうな気がして、一歩前に出る。
『どうしたの?』
携帯が鳴り友人から連絡がきた。
『ちょっといろいろあったんだけど大丈夫になったよ』
『なんだそりゃ』
友人とメッセージがつらつらと流れる。
(うん。大丈夫)
私はそう言い聞かせて部屋に戻る。
空には中秋の名月が浮かんでいた。