第18話:アリアと夜空
アリアは、ぼんやりと天井を見上げていた。
そして、今日1日の事を思い起こして、物思いに沈んでいた。
(俺は、これからどうするべきか)
今日1日の行動で、随分とアリアとお屋敷の使用人達との関係は改善したとアリアは、考えた。
しかし、それは1日だけのことであり、明日はまた彼女達がアリアを信じてくれるとは限らなかった。
(当分は、身近な問題から解決していくか。まずは、アリアが壊した信頼を取り戻すことが重要だな。一度、失った信頼を取り戻すのは簡単ではないけど、時間はまだあるはずだからな)
アリアは、ベッドから出ると窓から外を眺めた。空には月が浮かんでいて、雲一つない孤独なものであった。
それを少し間1人眺めると、姿見の前に移動した。
赤と青の左右で瞳の色が違う12歳の少女が、こちらを見つめる姿が映っていた。
(ゲームの設定では、アリアは学園の1学年で15歳だったはず。でも、今は12歳。後、2年以上はあるはず)
アリアは、再び窓の外を眺めた。アリアの脳裏に、昼間見た光景が蘇った。
草木が若葉色をしていたことと、気温がそれほど高くなく昼と夜の寒暖差が低いことから、春ではなく夏に近いのではないかとアリアは推測した。それに春に比べると少しじっとりと湿度が高い気もした。
しかし、これが日本と同じ気候であればという条件付きの仮説ではあるが、とアリアは付け加えた。
(仮説の立証は、シオンに訊くか。“だいぶ温かくなってきましたね、シオン。もうすぐ夏ですかね”とでも訊けば怪しまれないだろう)
アリアは、学園入学までの時間が、後どれくらい残っているのかを正確に知っておきたかった。
(アリアが殺されるのが1学年の最終学期後だから、15歳で死ぬことになる。後3年で死ぬのか)
アリアの身体がブルっと震えた。しかし、頭を振ってその恐怖を追い払った。
(俺が殺されると決まった訳じゃない。それに後3年ある。ゲームのアリアと同じ道を辿らなければ、恨まれることもないから殺されることもない)
よしっとアリアは頬を両手で軽く押した。それから、これからの課題を考えていった。
(アリアの信頼回復は、ただ愛想を良くしておけばいいとして、問題は語学と魔法についてだな)
文字が読み書き出来ないことが日中の授業で判明した。また、魔力がほとんど失われていて、魔法も碌に使えないことも魔力測定で判明していた。
「問題は、語学と魔法か」
アリアは、部屋の中を少し歩き回った後に、ベッドの上に倒れ込んだ。
ベッドの上で頭の後ろで手を組み、足を組んで仰向けの楽な姿勢を取った。
「小6か中1で英語を初めて学ぶ感じか。あの時は確か、単語をひたすら覚えて、英文を書きまくったっけか。また、それでいくか」
必死こいて勉強したような気がする、あまりいい思い出の無い小学校6年生と中学校1年生の記憶を思い出して、苦々しい顔を浮かべた。
「根性だな!効率なんて知らねぇ、前世でなんとか30過ぎまで生きてこれたんだ!こっちでも、やってやろうじゃねえか!!」
アリアは、誰にともなく天井に向かって強く宣言した。
しかし、本当に良い思い出のない寂しい小学校高学年と中学時代を思い出したせいで、アリアは憂鬱な気持ちになり、ただベッドの上で寝転がった。
(ほんとに、つまらない学生生活だったな。教室になんて居られなかったし、保健室か図書館しか居場所がなかったからな。頑張ったよな、うん)
少し辛い表情を浮かべたアリアだったが、すぐに表情を和らげた。
(まぁ、高校時代はやっと良い学友に出会えて、楽しくバカやって過ごせたから良かっけどな。帰りにクレープやアイス食べて帰ったり、休日に買い物行ったりして、やっと楽しいと思えたよね!)
久々に、学友達と連絡を取るのも面白いかと考えたアリアであったが、今の自分の状況を思い出して、寂しげに笑った。
(もう、会えないんだったな)
そして、空に浮かぶ星達とは違う輝きの月を眺めた。
「こっちでも出来るといいな」
アリアは、ぽつりと新しい夜空に向かって呟いた。




