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声の主、出張ってまいりました(^ ^)

基本イメージはオカンですww

「アンタ‥‥誰、だ?」

仁王立ちの少女。

その姿は確かに睦月なんだが………。

なんだ?

明らかにさっきと表情が、言葉使いが、雰囲気が変わっていた。


ほにゃりと柔らかな笑顔はキリッと引き締まり、少し拙い喋り方も滑らかに。

胸を張って仁王立ち?

しかも何言ってんだ?ロリータ?おさわり禁止?


「10歳未満の子供に向ける顔じゃなかったからね?テンパって爆発したのかもしれないけど、自覚して?完全子供をたらしこもうとする変態の図だったからね?さっき」

冷たい視線がグサグサ刺さる。

その痛みに、さっきまでの自分の行動がフィードバックして頭を抱えた。


え?何やってんだ?俺!


「いや、待て、違う。そんなつもりじゃ!普通にバンド組もうって誘おうとしただけで、変な下心は露程も!!」


慌てて言い訳しようとすると睦月の姿を借りた誰かがフンっと鼻で笑って腕組みをした。

「うっさい小童(こわっぱ)!正座!!」

ビシッと言われて、思わず正座をして姿勢を正す。


「正気に戻ったようで結構。言っとくけど、私はいつでもみてますからね!また悪さしようとしたら、今度はこんなものじゃ済ましませんから!」


上から目線で宣言された瞬間。

フニャリと強気な表情が崩れて、睦月がへたり込んだ。


「え〜〜先生、なんで〜〜?外に出れたの?睦月の体、勝手に動いてたんだけど〜〜?」

いつもの幼い喋り方に戻った睦月に目を瞬く。

その間も睦月の独り言は続く。


「睦月のピンチって思ったらできた?訳わかんないよ〜〜。確かにびっくりしたけど。

………………実は睦月が小さい頃も寝てる時なら動かせたの?

あ、もしかして起きたらお洋服とか綺麗になってたのそれ?ご飯作ってあったときも?先生だったの?」


徐々に不思議顔が納得したような嬉しそうな顔になっていくのを眺めながらも、どうにか情報を整理しようとする。


「睦月の中に誰かもう1人?………二重人格ってやつ?」

虐待された子供が自分を守るためにもう1人の自分を作り出す。時にそれは明確な人格を持ち、中には作り出した本人すら知らない知識を披露する事もあったりするらしい。

なんかのドキュメント番組でやってたっけ?


「先生は先生だよ。睦月に歌を教えてくれたり、助けてくれるの」

俺の呟きを拾った睦月が少し照れたように笑う。

「今までこんな風になった事なかったから、誰も信じてくれなかったけど。

小さい頃に何度か話したら「嘘つき」って言われちゃって。

だから、カズにもさっき誤魔化しちゃったの。ごめんね?」


こてんと小首を傾げ、少し困ったように眉を下げて謝る睦月があざと可愛い。

じゃ、無く。


「ごめん、睦月。ちゃんと教えて?先生ってなに?さっきの人は誰だ?」

改めて聞けば、睦月は少し考え込むように黙り込んだ後、言葉を選ぶようにゆっくりと話し出した。


お腹が空いて1人きり寂しかったこと。

不意に聞こえてきた声。

「歌うこと」を教えてくれて、いつでも側にいてくれた存在。


「先生がいたから、『歌』を知って。先生がいたから、睦月は睦月になったの」


ポツリと最後に呟いた言葉は、あまりに真っ直ぐで、それでいてとても寂しく響いて。

本当は両親から無条件に与えられるはずの愛情とか庇護とか、そういうものを得ることができなかった子供(むつき)が生きていくために必要な存在だったんだって思った。


そう思えば、『先生』って睦月の呼ぶその存在を否定なんてできるはずもない。

「大事な人、なんだな?」

そう言うと、睦月はすごく嬉しそうな顔でコクリと頷いた。


その顔を見れば、俺に他に言える言葉なんてなにも無く。

「じゃ、俺のこともよろしく言っといてくれる?」

そう言った俺に、睦月は「先生もよろしくって!」と満面の笑みを浮かべた。







読んでくださり、ありがとうございました。

20時遅刻しました。

予約投稿してるつもりが、やってなかった(汗

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