おばあちゃんをおろしてみた
オードリーさんの「イタコ」というネタを参考にして書いた作品です。
神林…親戚のうさんくさいお兄さん(お姉さんでも可)。イタコができるらしい。
旭…中学生。男女問わず。神林に何だかんだ懐いてるが割と扱いは辛辣。
旭:神林さんと会うのも久しぶりだね。
神林:そうだねぇ。旭も大きくなったなぁ。
旭;そうですね、身長も5cm伸びました。
神林;ここも大きくなったねぇ。
旭;どこ見てんの神林さん…
神林:ごめんごめん。おこづかいあげるから許してよ。
旭:いくらくれるの?
神林:3000円。
旭:微妙な額だなぁ…
神林;もらえるだけ喜びなさい。
旭:はーい。
神林:そういえば、もうすぐ旭のおばあちゃんの一周忌か。
旭:どうしたの、藪から棒に。
神林;いや、旭、おばあちゃん子だったから寂しくないかなぁって。
旭:あぁ、まぁね。料理とかもうちょっと教わっておけばよかったなって思うよ。
神林:だよなぁ…。うぅん。
旭:なに?
神林:いや、旭をおばあちゃんに会わせてあげる方法は無いものかとね。
旭;えー
神林:なんだよ、これでも真面目に考えてるのに
旭;非現実的だなぁ
神林;そう言うなよ。うーん、この灰皿で殴ったら楽だけど…
旭:物騒!やめて、いくらなんでも嫌すぎる。
神林:だよなぁ…。あ、そうだ。
旭:なんか思いついたの?
神林:すっかり忘れてた。自分はイタコができるということを。
旭:イタコって…あの、なんだ。山奥とかに居る幽体を憑依させられる人?
神林:そうそう、それ。
旭:神林さんって頭いいけど何か変だよね。ずるい。
神林:なんだその褒めてるんだか貶してるんだか分からない評価は
旭:だって事実じゃん
神林;まぁ、それもそうか。
旭:で、イタコ本当にできるの?
神林:あぁ、できるよ
旭:じゃあやってみてよ
神林:わかった、まずは今おりられるか聞いてみよう
旭:許可いるんだ
神林:そりゃいるよ。(すごい大きな声で)旭のおばあちゃーん!
旭:声でっか!ハウっちゃうからやめよ!?
神林:ハウる?
旭:(リスナーに向けて)ごめんね、耳痛くなかった?
神林:誰に聞いてるの、旭
旭:あ、ごめんごめん。こっちの話。
神林:旭が変な事言うから返事聞きそびれた
旭:しっかりしてよ神林さん
神林:じゃあもう一回聞いてみる
旭:はーい
神林:(大声で)せーの!(囁き声で)旭のおばあちゃーん
旭:声ちっちゃ!それはそれで聞き取れないから!ボリューム下げた人が聞きそびれちゃうよ。
神林:ボリューム?
旭:ごめん、なんでもない。そんなちっちゃい声じゃおばあちゃんに届かないんじゃない?
神林:それもそうか。旭のおばあちゃーん!
旭:やっとマトモな音量になった
神林:あ、大丈夫だって
旭:気安いなぁ。まぁ一応親戚だからいいんだけど…
神林:じゃあ、旭のおばあちゃん。今からお腹出すからへそから入ってね。
旭:へそ!?
神林;うん、へそ。
旭;幽体ってへそから入れるもんなの!?
神林;入れるよ。ほら、へこんでるじゃん。人体でぬるんって入れそうな場所他にある?
旭:いや、うーん、なんていうか…お経とか読んでスッと入ってもらうもんじゃないんだ…
神林:おばあちゃーん、今からお腹出しますねー。よいしょっと
旭:ちょっと待った!
神林:ん、今度は何?
旭:神林さん、おへそがっつり出てますけど!
神林:うん、服めくったからね。
旭:そうじゃなくて、神林さんがっつり出べそじゃん。それじゃ入れないじゃん!
神林:あぁ、そういうこと?大丈夫、旭のおばあちゃんスリムだったから
旭:そういう問題なの!?
神林:だーいじょうぶだって。はい、おばあちゃん、入ってきてくださーい。
旭:大丈夫かなぁ…
神林:うぉおっ!おぅっ、おっ、うぉっ!
旭:大丈夫じゃなさそうだなぁ…
神林:うぉおーっ!あっ、うぁっ、おばあちゃん、そこはダメ!
旭:なにが!?あぁ、もう!しっかりしろ!(叩く)
神林:ぶへっ!
旭:なにやってんの神林さん
神林;あぁ、もう。旭が叩くからおばあちゃんどっか行っちゃったよ。
旭:ふざけてるだけでしょ
神林;そんなことないって
旭:いーや、絶対ふざけてた
神林:ごめん、ちょっとふざけた
旭:真面目にやってよ!
神林:わかった、真面目にやる
旭:はぁ…全くこの人は…
神林;旭のおばあちゃーん、入ってきてくださーい
旭:大丈夫かなぁ…
神林:ぐあっ、おっ、うぁうっ!
旭:オットセイみたいになってる…
神林:だ、大丈夫。拒絶反応がちょっと起こってるだけだよ
旭;拒絶反応とかあるんだ
神林:うんっ!がっ、うぉっ、よいしょっ!
旭:か、神林さん頑張れ!
神林:うぉっ!うぉっうぉっ!ぺしんぺしん!
旭:完全にオットセイだ!(叩く)
神林:ぶげっ!
旭:おばあちゃんおろしてるのに何でオットセイが出てきちゃうんだ!
神林:おっかしいなぁ、おばあちゃんってオットセイに似てた?
旭:全然似てないよ!
神林:だよねぇ。
旭:しっかりしてよ、神林さん
神林;わかった、次こそは
旭:大丈夫かなぁ
神林:入ってきてくださーい!
旭:とりあえず見守ってみよう
神林:うぉーっ!おっ、うぉー!
旭:きょ、拒絶反応すごいなぁ…
神林:うっー、ぐっ、あ、旭や
旭:おばあちゃん!?
神林:元気でやってるかい?
旭:う、うん、やってるよ!
神林:あぁ、料理を知りたいんだってねぇ
旭;聞いてたの?
神林:じゃあ教えてあげようねぇ。おばあちゃん得意のビーフストロノガノフ
旭:おばあちゃんじゃない!(叩く)
神林:もへっ!
旭:神林さん、さっきの違う人だ!
神林:あれー?上手くいったと思ったんだけどな
旭:うちのおばあちゃんはビーフストロノガノフなんて舌噛みそうな名前の料理つくらない!
神林:そうかぁ。じゃあアレはムッシュ坂本さんだったかなぁ…
旭:誰だそれは!
神林;伝説の洋風料理シェフ
旭:そんなすごい人おろしちゃったの!?しかもへそから入らせたの!?
神林:その辺をたまたま浮遊していたのかもしれない
旭:ご、ごめんなさいムッシュ坂本さん…
神林;せっかくだからビーフストロノガノフの作り方聞いておく?
旭:いや、申し訳ないからいいよ…
神林:よし、じゃあ気を取り直しておばあちゃんをおろそう
旭:ちょっと待った!
神林:ん?
旭:さっきから拒絶反応で苦戦してるんだよね
神林:うん
旭:じゃあ、神林さんが1回魂抜いてみて、その状態に入ってもらえばいいんじゃない?
神林:ほぅ
旭:できる?
神林:多分いける
旭:よし、やってみよう
神林:よいしょっと…
旭:へそをつまんでるだけな気がするけど…
神林:いや、ここから引きずり出そう
旭:引きずり出すって
神林:ほっ、ふぁっ、んっ…
旭:いけそう?
神林:もうちょい
旭:大丈夫かなぁ…
神林;(指パッチン。できなければ手を叩く)
旭:そんな音するの!?
神林:うあー
旭:あっ、早く呼ばなくちゃ。おばあちゃーん!
神林:ん…うぉっ…旭や
旭:おばあちゃん!?
神林:おばあちゃんだよ。お料理してるんだってね。えらいねぇ。
旭:うん、おばあちゃんの作る春巻きのつくりかた聞いておけばよかったなって…
神林:それならおばあちゃんの本棚の手帖に作り方が書いてあるよ
旭:ほんと!?
神林:あぁ、本当さね。あとで探しに行ってごらん
旭:ありがとう、おばあちゃん!
神林:じゃあ、おばあちゃんはそろそろ行くね
旭:うん、おばあちゃん大好き!
神林:ありがとうねぇ。じゃあね、旭
旭:よかった、上手くいった
神林:んあー
旭:神林さん!魂戻していいよ!!
神林:ずぉっ!
旭:うわぁ?
神林:あ、旭、上手くいった?
旭:うん、上手くいった!おばあちゃんの本棚の手帖に作り方載ってるって!
神林:そりゃあ、よかった
旭:神林さん、ありがとう。
神林;どういたしまして。さてと、梅昆布茶でも飲むかねぇ
旭:え、梅昆布茶?って、おばあちゃんの好きだったやつ…?
(Fin)