1.私を見つけて。
暴力描写出まーす!ご注意を!
「あーあ。今月もお金が無い。誰の所為かしら。」
今日もお母さんの機嫌が悪い。原因は、私。
「すみません。私の所為です。私が私立に進学したから。」
私が通っているのは私立の進学校。なんと学費は県内トップ。何でここにしちゃったんだろう。公立にしておけば良かった。もう遅いけど。
「そうねぇ。分かっているならさっさとどうにかして頂戴!」
「すみません。」
耳元で叫ばれた所為で耳鳴りがする。キ—――――ンって煩い。どうにかって、うちの学校ってバイト禁止だから私には稼ぐこともできないし、退学なんて有り得ない。だから、私にできるのは謝ることだけ。不出来な娘ですみません。
「いい成績とってはやく学費免除になりなさい!!」
「はい、頑張ります。」
そうは言っても、学費免除の特待生枠は九枠しかない。四百分の九とか無理だよ。ごめんなさい。
「あんたの所為でお金がないから今日はご飯抜きね。」
お母さん、多分お母さんが飲んでいるお酒もかなり高いと思うんだ。そんなこと口が裂けても言えないけど。
「分かりました。」
あーあ。今日もご飯抜きか。お腹が空いたなー。課題終わらせてさっさと寝よう。
「いつもぼそぼそ喋ってて気味が悪い。ふんっ。面白くない子。」
はい、すみません。不気味な娘ですみません。
空き缶と空き瓶が散乱する床は、足の踏み場も無い程散らかっている。
今度誰もいないときに掃除しよう。空き缶ならまだしも、瓶で殴られたら死んでしまう。
痛いのは嫌いだ。
雨が凄いけど、やっぱり今から逃げようか。否、無駄だ。私に逃げ場なんて無いのだから。
私は、いつまでこうやって過ごさなければいけないのだろうか。
私は課題を無心で終わらせた後、窓の外を黒く塗り潰すような土砂降りの雨を眺めていた。
みんなみんな、この雨に流されてしまえばいいのに。
お父さん、帰ってこなければいいなぁ。
雨に流されて消えてしまえばいい。お母さんも、お父さんも、私も。
バタンって、部屋の扉が乱暴に開かれる音が響く。嗚呼、お父さんが帰ってきた。
ガチャガチャいう音で思い出したのは、まだ瓶を仕舞っていなかったということ。最悪だ。骨折、しないといいなぁ。
ドアの向こうから入ってくる外の空気は、やっぱり冷たい。今外に逃げ出したら絶対風邪引くよなぁ。熱が出たまま体育するのはきついし、耐えよう。
大丈夫。慣れているのだから。
怖くて見ることができないけど、床を伝う振動が、足音が、大きくなってくる。足音が荒い。お父さん、今日も怒ってる。怖い。
「おい、お前。こんな所に隠れてんじゃねえよッ!」
頭に衝撃が走って、視界が揺れた。―――――殴られたんだ。
「うっ・・・・・すみませんでした。」
下を向いたまま謝る。
私の部屋なのに、ここに私の安息はないのだろうか。
「おいッお前は一体どこ見てんだ?!誰に謝ってんのかって訊いてんだよッ!」
肩を思いっきり蹴りつけられて、私は仰向けにひっくり返る。勢いで打ち付けた頭が痛くて涙が出そう。でもだめ。泣いてしまったら煩いってまた蹴られる。
「すみませんでした。お父さん。」
私はそっとお父さんを見上げて言った。けど、それも駄目だったみたい。
結局「なんだその目は?!」「生意気なんだよ?!」って蹴られて、お腹を踏まれて、すみませんって言いながら私は意識を手放した。
気付いた時にはもう、日が変わっていた。部屋にはもう、誰もいなかった。やっと訪れた平穏。でもなんだか、この家に居たくなくて、私は家から抜け出した。見つかったら最期、無事ではいられないだろう。
それでも、私はきっと抜け出したことを後悔しないって、そんな気がした。
訳も分からずがむしゃらに走って、走って、走り続けて。
辿り着いたのは神社だった。未だ降り止まない雨の中何度も転んだ所為で、私の体はびちょびちょのどろどろだ。
真っ暗な神社なんて怖すぎて、普段なら絶対に近づかないのに、今日は何故か居心地の良さを感じていた。明かりもなく、雨の所為で音もない、まるで世界には私一人しか居ないかの様な孤独感だけが、私に寄り添っていた。
家に居場所が無い、学校にも馴染めない、私は結局のところ出来損ないなんだ。
私はずっと独りぼっち。
――――――嗚呼誰か、私を見つけて。
ここなら涙を流しても、雨が隠してくれる。
その事に安心して泣いていた時、君と出会ったんだ。
虐待、駄目、絶対!
作者 「母は嫌味ばっかりで、父は暴力って、梓、大丈夫?!」
梓 「お母さんの嫌味は通常運転だけど、お父さんはお酒がなければ優しいんだよ。」
作者 「優しいってどんな風に?」
梓 「私に暴力を振るわないんだよ!」
作者 「・・・・え?それだけ?親子の会話とか・・・・」
梓 「親子の会話って何?」
作者 「・・・・・・・・・梓、幸せになってね・・・・。」
梓には幸せになって欲しい!早くヒーローを出そう!!