プロローグ
梓視点!
「ねぇ、知ってる?この学校ってでるらしいよ。」
良く晴れた日の教室。暖かな日差しに眠気が襲ってくる。
「何が?」
「ユーレイ。」
教室でいつも喋っているクラスメイト達は、毎日同じ人と話しているというのに会話のネタは尽きないのだろうか。
「・・・・・・うっそだー。」
「いやいや、ホントなんだって!先輩が見たって言ってたし。それもかなりイケメンだったって!」
「マジで?!私も見たい!!・・・・でも、何のユーレイなの?」
“イケメン” の4文字に絶対に釣られるところ、いついかなる時もブレなくてすごいと思う。・・・・・見習いたいとは思わないけど。
「噂で聞いたんだけど、そのユーレイ、ずっと昔に病死したうちの生徒なんだって。」
「へぇ~そうなんだー。今度肝試しとかやっちゃう?・・・・・あ、次の週末さー・・・・」
飽きるの早過ぎ。もうちょっと興味を持っても良いんじゃないかな?・・・・私も人のこと言えないけど。
教室で騒ぐ女子の声をBGMに、私は数学の課題を進めていく。私が学校でするのは、勉強と食事だけ。私には、学校で人とまともな会話をした記憶がない。
教室を見渡すと、楽しそうに何かを話しているいくつもの集団が見える。それらのどこにも、私の居場所は無い。つまり、私には友達が居ない。
別に虐められているとか、そういう事実はない。ただ、私が失敗してしまっただけ。
人の輪からはみ出てしまった私には、勉強と食事しかすることがなかった。
嗚呼、毎日毎日退屈だ。
出だしを失敗してしまった所為で、私は10月になった今でも学校に馴染めていない。
それでも、今の私にとって最も居心地が良いのはこの教室だ。
だからきっと、私は虐められたとしても学校を休みはしないだろう。
面白みも無く、ただただ回り続ける日々。私は、家にも学校にも居場所が無い。息を殺し、存在感を消して生きる毎日には、もう疲れてしまった。
三崎 梓 15歳。変わり映えしない日々を惰性で生きている。
私の夢は、誰にも頼らず一人で生きること。高校を卒業したら、一人暮らしがしたい。
ここにきて気付いた新事実。
まさかの
梓がまだ一言も喋ってない?!
ということ。