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フリードリッヒ ③

フリードリッヒ視点

 フリップ伯爵とフリードリッヒを乗せている馬車が、フリップ領地へと差し掛る。


「リマンド領を通っているとき、城が見えて。そうだ、フリードリッヒも一緒に帰って来ていることだ、家へ帰る前にリマンド侯爵へ挨拶をしようと考える。その足でリマンド侯爵の城へ寄る。たまたま思い立ったのだから、敢えて、先触れはしない。わかるね」


「この訪問は、親父の気紛れで、リフリードの婚約破棄の件ではない。と言うことにするんですね。リフリードの婚約破棄は前々から決定していた。という事にするのですか?」


「ああ、リフリードの侯爵教育が上手く進まない。このままリフリードが侯爵になれば、他の分家にも迷惑がかかるというのが今回の婚約破棄の理由だ」


「数いる候補者のなかから、俺が婚約者に内定した。しかし、リフリードのこともある。その上もう大人だ。侯爵教育に余り時間が取れない。だから、長期休暇を取り侯爵に相応しいか試される。と考えたらいいですか?」


 フリップ伯爵は、フリードリッヒの顔を見て力強くうなずく。


「ああ、概ねその通りだ。さっしが良くて助かるよ。近衛兵隊長には、そのように伝えて休暇を要請しておいた」


 リマンド侯爵邸には、暫定婚約者として訪れるのか。では、婚約者予定の女性にチョーカーをプレゼントしてもなんら問題ないな。


 だいぶ前に、侍女長の護衛としてフール商会を訪れた際に見つけたチョーカーだ。紐の部分は黒く染められたヌメ革で出来ており、中央にピンクの薔薇のモチーフが付いている。マリーの白い首に似合うだろうと、渡す予定もないのについ、衝動的に購入してしまった品だ。

 

 機会があれば、お土産として渡せたらと一応荷物に入れて置いて正解だったな。


「フリードリッヒ、お前は機嫌がいいな。私は、マリアンヌ嬢に合わせる顔がない」


「親父はリフリードのことがあるからな。俺は、昔、過ごした場所だから懐かしいんだよ。マリー、大きくなってるよな」


「ああ、もう立派な淑女だ。リマンド侯爵夫人に似て美しくおなりだよ」


「会うのが楽しみだ」


 リマンド城に着くと、2人は執事のセバスにサロンへ案内された。


「フリードリッヒ御坊ちゃま、暫くぶりでございます。背も伸びられ、立派になられましたな」


「セバス、変わりはないか?相変わらず元気そうだが」


「はい。元気ですよ」


 セバスはフリードリッヒの先生だ。剣術、学問、マナー、魔法以外の全てを教えてくれた。フリードリッヒが、騎士学校へ優秀な成績で入学できたのもセバスのおかげだ。


 セバスには一生頭が上がらないな。


 ソファーに座って待つように促される。


 サロンは開かれた空間になっており、誰が来ているのか一目瞭然の造りになっている。会話さえ、しっかり聴き耳を立てれば聞くことができる。


 俺たちが、来ていることを見せた上で、敢えて、会話を聴かせると言うことか。言葉に気をつけるべきだな。


 この城には、父も含めた分家の貴族達、そして、その使者達が常に出入りしている。その者達へのアピールだ。


 程なくして、リマンド侯爵がサロンへ入って来た。


「久しいな、フリードリッヒ」


「ご無沙汰しております。リマンド侯も御健勝そうで」


「ああ。フリップ伯爵、何か用事でも?」


「いえ、用があり王都へ行きましたので、せっかくですから、息子がお世話になってる近衛兵隊長に挨拶をと城へ行ったおり、たまたま、フリードリッヒの休暇と被りまして。一緒に帰ってきたのです。城の近くで、フリードリッヒが懐かしいと言うので、では、ご挨拶しに行こうと」


「そうか、では、マリーも呼ぼう。妻は生憎、お茶会に出かけててね」


「奥の部屋の準備ができました。皆さまどうぞ。」


 セバスが皆をサロンの奥にある客間へ案内する。


「奥の部屋から丁度、ダリアが良く見えるんだ。素晴らしく咲いたのでな、是非楽しんで貰えたらと思ってな」


「お気遣いありがとうございます。それは、楽しみだ。な、フリードリッヒ」


「はい。」


 部屋へ入ると、皆がソファーへ腰を下ろし、侍女のサリーがお茶をサーブする間たわいの無い話をする。セバスはサリーへそっと、耳打ちした。


「ここは、もういいから、ユリにマリアンヌお嬢様を連れて来るよう伝えなさい」


 サリーはうなずくと、サッと一礼して部屋を後にした。


「私は、サロンの前でマリアンヌお嬢様をお待ち致します」


 セバスは、サリーを部屋から追い出し、自分もでる。この後、内密の話があるのを心得ている。


「わかった。たのむよ」


 侯爵は、セバスに向かって軽くうなずいた。


「さて、マリアンヌが準備をする間、本題と行こう。まず、フリードリッヒよく来てくれた。ありがとう」


「いいえ。お役に立てて光栄です。原因が弟ですから、兄として当然です」


 侯爵の礼にフリードリッヒが笑顔で答えると、そう言ってくれると助かるよと侯爵は笑った。


「リマンド侯、この度は、愚息がとんでもないことをやらかし申し訳ございません。愚息の気持ちの変化を察せなかったのが悔やまれます」


 フリップ伯爵は悲痛そうな面持ちで頭を下げる。


「リフリードがやったことは到底許すことはできないが、今は、リフリードを操った人物を見つけることが先決だ。伯爵が、失墜して喜ぶ人物。マリアンヌの婚約者となり得る人物。または、それを操れる者。その人物が、この侯爵家を乗っ取ろうとしていると考えても過言ではない。他の可能性もすてきれんがな」


 侯爵の言葉に、伯爵はリフリードを婚約者へ推したときのライバル達を思い出す。


「フォンテッド男爵、ルーキン伯爵、ティラー伯爵、ブラウン子爵、領地だけでも4名、マリアンヌ嬢との結婚可能な御子息を挙げるとキリがないですな」


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