フリードリッヒ ①
フリードリッヒ視点です。
ドアをノックする音と共に、手紙をお持ちいたしましたと声が掛かる。手紙を受け取ったミハイルは、ニヤニヤと笑いながらパラパラ宛名を確認している。
ミハイルは騎士学校時代からの同期だ。おちゃらけているがこれでも侯爵家の四男。フリードリッヒと同じく家督を継げない。それで騎士となったわけだ。
「ちぇっ、フリードリッヒ、全部お前宛じゃないか」
「ありがとう…。俺宛てなら早く渡せよ!」
ミハイルは、差し出し人の名前を一生懸命みている。
「皇太子付きのポリーナちゃんだろ、これは皇后の衣装係のエリザヴェータちゃんに、こっちはえーっと、うわぁ、美人のアナスタシアちゃんにー」
「さっさと返せよ。まったく、人のプライバシーを」
フリードリッヒは、ミハイルの手からパッと手紙の束を奪い取る。
「モテるねー。1人くらい紹介しろよ」
「この前、庭園で声かけてたよな、その子はどうなったんだよ?」
「あの子は、婚約者がいるんだとよ」
「それは残念」
フリードリッヒは、手紙の束に目を落とす。ミハイルが読み上げた女性達からのに、母親からのものと何通かのDM。そして、珍しい父からの手紙。それらを仕分けする。
ミハイルが羨ましがった手紙は後回しだな。珍しい父の手紙が気になるな。
一番最初に、父親の手紙の封をきる。
手紙の内容はリフリードとマリアンヌの婚約破棄のこと、それは一方的にリフリードが悪いという内容だ。この手紙が着いた後位に王都へ行くので、可能な限り長い休暇の申請をしておくように。近衛兵隊長にも手紙を書いたのでスムーズに行くと思う。
と、いった内容の手紙だった。
どうして婚約破棄になったのか、これからどうするのかは書いて無い。
詳しくは父に会ってからだな。
「おい、何かあったのか?お前、凄く怖い顔しているぞ」
「いや、父からの手紙だ。近々来るから、休みを取っておけと書いてあるだけだよ。」
「お前、父親と仲悪かったのか?」
フリードリッヒは苦笑いをした。
そう見えるよなー。寄宿舎は同室と言う事は知っている。書いてあるということは、むしろ『言え』と言うことだよな。よし。
「いや、むしろ関係はいいよ。ただ、弟が不手際で婚約破棄されたらしい」
「それ、重大じゃないか。確か、お前の弟さんの婚約者って、宰相のお嬢さんだろ」
これで、少しずつ広がるな。詳細は伏せたから、理由は皆が好きに想像するだろう。これが、親父の戦略か。
「そうなんだ」
今すぐ、近衛兵隊長に休暇を貰いに行くべきだな。
近衛兵隊長の執務室へ急ぐ。長い廊下の向こうから、フリップ伯爵と近衛兵隊長が話しながら向かって来る。
親父、早いな。それだけ状況は思わしくないと言うことか。
「父上」
「久しぶりだな、フリードリッヒ。息災であったか?近衛兵隊長には私から休暇を貰っておいたよ。急いで、領地へ戻らねば。お前も一緒に来てくれ」
「わかりました。では、直ぐ準備をしてきます。」
「いや、休暇が沢山溜まっていたから、まとめて取れるようにしたよ」
「近衛兵隊長、ありがとうございます。」
「庭園の東に馬車を停めている」
「準備が出来次第、馬車へ向かいます」
急いで寄宿舎へ戻り、帰宅の準備をしなければならないな。あまり、親父を待たせる訳にはいかない。
長くなりそうなので区切ります。