孤児院 ① リンダ視点
今日はお嬢様の孤児院への慰問の日です。甘味とバターを控えた素朴なクッキーと、白い綿の布、本を数冊お土産に用意致しました。
「お嬢様、今日は孤児院へ行かれるんですよね?」
今日もフリードリッヒ様が護衛なさるのかしら?
「ええ、そうよ。」
一応、確認しておきましょう、今日は、私も慰問にご一緒させていただけるみたいだし。
「あのー、護衛は?」
お嬢様は安心してというように言われます。
「大丈夫よ。セルロスが城に依頼してくれているわ。」
嘘、フリードリッヒ様ではないの?
「えっ、城に依頼されたんですか?」
「ええ、十数名用意してくれているはずですわ。」
最悪、フリードリッヒ様も居ないのに、何を好き好んで治安の悪い場所にある、それも平民の孤児の相手をしに行かなければならないの?どうせ、お供するならスミス侯爵家とか、城とかがいいなぁ。
「リンダ、早くクッキーを袋に詰めて。」
一瞬考えごとをしていたら、ユリさんから叱られてしまいました。この人、横や後ろにも目があるんじゃないかしら?
「ユリ、スミス夫人に手紙を書いたの。」
お嬢様が一通の手紙をユリさんに渡しています。これは、スミス家へお使いに行けるチャンス。
「では、これは…。」
リンダは勢い良く手を上げた。
「はい、私が届けます。ちゃんとスミス侯爵夫人へ直接お渡ししますのでご安心ください。」
「そう、では、お願いしますね。お嬢様、準備が整いました。本日はリサがお供致します。私は本日は、店舗へ行ってまいります。」
やったー!孤児院に行かなくて良くなった。リサさん子供の相手頑張ってね。私は、スミス家へ行くわ。お茶とお菓子でないかなぁ。
「ユリ、リンダ宜しくね。」
「はい!」
ユリが礼をしている横でリンダは元気いっぱい返事をした。
ドアをノックする音がして、フリードリッヒが入ってくる。今日は近衛騎士の制服姿です。これから、城でお仕事かしら?
はぁ、眼福。
いつ見ても素敵。
今日はまだ屋敷にいらっしゃったんですね、屋敷にいらっしゃっても大抵、宰相閣下の執務室にいらっしゃるから、なかなかお顔を見る機会がありません。ユリさんやリサさんとはフランクに話されているんですけど、私には声を掛けてくれません。もう少ししたら、仲良くなれるのかしら?
「マリー、城から護衛が来た。準備はできた?」
「はい。」
「荷物は?」
フリードリッヒ様と話すチャンス!
「後はこのクッキーだけです。」
先程詰めていたクッキーの入ったカゴを持つと、フリードリッヒ様が手を出してきました。
「わかった。貸して。」
「はい。」
ああ、私の手からクッキーの入ったカゴを受け取られた。
ふふ、幸せ。
こんなことの積み重ねで仲良くなれるのよねきっと!
「さ、マリー、リサ、行こうか。」
私も馬車までお見送りしょう。ユリさんもそうされるでしょうし。
お嬢様とフリードリッヒ様の後に続き、リサさんと一緒に馬車の停めてある玄関まで行きます。
「リサさん、フリードリッヒ様付きの侍女はいらっしゃいますか?」
もし、いらっしゃるなら私もそちらへ移動したいな。
「いらっしゃいません。強いて言うならお付きのフロイトさんが身の回りの世話をしてますよ。」
残念、フリードリッヒ様付きの侍女は無理か。
「フロイトさんって?」
「フリードリッヒ様の乳兄弟です。」
フリードリッヒ様の乳兄弟って、フロイトさんていうんだ。
「フロイトさんてどんな人ですか?私、会ったことないですよね?」
フロイトさんか、仲良くなるとフリードリッヒ様のこと教えて貰えるかな?乳兄弟ならフリードリッヒ様と幼い頃からのお付き合いのはずよ。
「会ったことあるわよ。先程も、マリアンヌお嬢様の部屋の前にいらっしゃったわよ?リンダさんがお嬢様の部屋からでるとき、ドアを開けていて下さってましたよ?」
えっ、そんな方いらっしゃいました?確かに、ドアを自分で開けた記憶はないわね。
玄関には、十数名の近衛騎士がいらっしゃいました。
アレ?
城の護衛って、近衛騎士なの?第一部隊とかじゃないの?近衛騎士って美形揃いで有名なのよね。そんな美形集団に護衛して貰える機会はないわ。もしかして、孤児院の慰問、お嬢様に付いていくべきだった?
フリードリッヒ様のエスコートで馬車に乗り込むお嬢様。
ああ、私もフリードリッヒ様にエスコートされて馬車に乗りたい。
あれ?フリードリッヒ様も何故ご一緒に馬車に乗られるの?
続いて、リサさんも同じ馬車へ乗ってます。
えっ、もしかして、今日は私もフリードリッヒ様と同じ馬車に乗れるチャンスだったの?
リンダがショックを受けている間に、馬車は馬に乗った近衛騎士を従えてリマンド邸から出て行った。




