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事件

 兄様と先に家に帰って、湯あみをして髪の手入れをユリとリサにして貰っていると、急にバタバタという足音が家の中に響きます。


「いったい何かあったのかしら?リサ、見てきて頂戴。」


 いつもは静かな屋敷の中が騒然とし、普段は冷静沈着なセルロスの旦那様という取り乱した声が聞こえます。


「はい、お嬢様。」


 リサは慌てて、部屋を出て行きました。ユリが手早くマリアンヌの身支度を整えます。


「お嬢様、念の為、直ぐに外へ出られるようにこちらのワンピースに袖をお通し下さい。」


 緊張したユリの言葉に嫌な予感が致しますわ。


 身支度が終わったその時、ドアをノックする音と共にフリードリッヒの切羽詰まった声がした。


「マリー、ドアを開けても大丈夫かな?」


「あ、はい。」


 マリアンヌが返事をすると直ぐにドアが開き、蒼白のフリードリッヒとリサが入って来た。


「マリー、落ち着いて聞いてほしい。」


「はい。」


 何か事件が起こったのでしょうか。鼓動が早くなるのを感じつつ、兄様の言葉を待つ。


「宰相と、奥様の乗っている馬車が襲われた。」


「え」


「まず、お二人ともご無事だ。奥様の怪我は擦り傷程度、宰相は腕を折られた。ルーキン伯爵が左腕を損傷、今、ハンソン様とクロウが敵を追っている。城からも兵を出すそうだ。」


 お父様とお母様が無事でよかったですわ。


 マリアンヌはそのまま床へとへたり込んだ。フリードリッヒはマリアンヌを抱き上げると、そのままソファーへ下ろし座らせ、自分も近くの椅子に腰を下ろすと言葉を続ける。


「護衛をしていたルーキン伯爵のキズが思いのほか深い。今、城に駐在していたミハイルに来て貰って客室で治癒魔法をかけて貰っている。あのルーキン伯爵にそこまでの傷を負わせるとなると、かなりの手練れだと考えていい。」


「良かった。皆、生きているんですよね。」


 マリアンヌの目から涙が溢れた、フリードリッヒは椅子から立ち上がるとマリアンヌの前で膝をつき、優しくハンカチでそれを押さえる。


「ああ、奥様と宰相閣下に会いに行くかい?奥様は気を失われて、ベッドで寝てらっしゃるが、宰相はサロンでセルロスと一緒にいらっしゃるはずだよ」


「ええ、お母様のお顔を見に行きます。お父様の所へも。」


「わかった、付き添うよ。」


 マリアンヌが立ち上がると、フリードリッヒはその肩を抱き支えるように外へでる。ユリがフリードリッヒとすれ違うとき、キリと睨み付けぼそっと釘を刺した。


「フリードリッヒ様、今はお嬢様が気が動転されています。それ以上はなさりませんように、宜しいですね。」


「わかってるよ、ユリを敵に回したくはないからね。それに、流石にこの状況だ。」


 フリードリッヒは軽く手を上げ、マリアンヌと共にリマンド夫人の部屋へ向かった。


「マリー、流石に夫人の部屋に俺は入れない。入口で待ってるから行っておいで。」


 兄様に促されて部屋へ入ると、お母様付きの侍女が、控えていました。


「お嬢様、此方へどうぞ。」


 ベットの天蓋をめくり中へ促してくれます。お母様は、手の甲を少し擦り剥いたのか、そこにガーゼが当ててありました。


 傷が残ったら大変だわ、治して差し上げましょう。


 傷の部分に手を翳しヒールを唱える。


 これで大丈夫ですわ。お母様、さぞかし怖かったでしょう。お可哀想に…。


 天蓋から出て、侍女にお母様を頼む旨を伝えて部屋をでると、ドアの横の壁に兄様が目を瞑り腕を組んでもたれていました。長い白銀のまつ毛がはっきりと見てとれ、そして、いつもきっちりと纏めてらっしゃる髪が、乱れて色っぽくなんだかドキドキ致しますわ。不謹慎ですわね、両親が襲われた後ですのに…。


「マリー、もういいの?」


「はい、お母様は大丈夫そうです。侍女も居ますし。お顔を見たら安心致しました。」


 フリードリッヒはマリアンヌの少し落ち着いた様子に安心したようにほっと息を吐き、笑顔を浮かべる。


「では、宰相の所へ行こうか。」


「はい」


 サロンへ急ぐと、お父様とセルロスが話されています。


「これで、今回の敵はルーキン伯爵の線は消えたな。まさか、瀕死になってまでカモフラージュをすまい。」


 折れた腕を固定して、氷の入った袋で冷やしながら侯爵はセルロスに言う。


「では、誰が…。」


 セルロスは私と一緒で、ルーキン伯爵が犯人だと思っていたのね。私も、セルロスと同じ気持ちですわ。


「ジュリェッタ嬢なら知っているかもしれませんね。」


 フリードリッヒがセルロスの疑問に答えた。


「ああ、そうだな、彼女なら知っているかもしれない。何せ、私が何者かに殺されると忠告してくれた人物だ。だが彼女に聞くのは最終手段だ、後が何かと面倒だからな。後、私とルーキン伯爵、両方が邪魔な人物も怪しい。」


 両方が邪魔な人物?


「お嬢様の婚約者が正式に決まってない今、分家に旦那様を亡き者にして得をする当主はおりません。現在、この家を乗っ取る為に1番命を狙われるのはフリードリッヒ様です。」


 セルロスはフリードリッヒに目を向ける。フリードリッヒは、そうなんだよなぁ〜と、小さくぼやき天井を仰ぎ見みたあと頬杖をつく。


「宰相、今夜は城から真っ直ぐにお帰りになられましたか?」


 フリードリッヒは少し考えて、リマンド侯爵に質問した。


「いや、アーシェア国の大使館に寄った。」


 アーシェア国、この国の友好国でお母様の叔母様の嫁ぎ先ですわね。でもどうして?お約束でもしてらっしゃったのかしら?そんなこと伺っていませんわ。


「前々からお約束でも?」


 兄様も疑問に思われたのですね、セルロスもこのことを知らなかったのでしょう、訝しげにしていますわ。


「いやぁ、夜会で大使にお会いしてね、妻の従姉妹がお忍びで大使館に来ていると聞いてね。それで、その足で会いに行ったのだよ。」


 アーシェア国の方が関わっている?でも、アーシェア国との関係は良好なはずですわ。


「では、お忍びでその方がいらしていることを知っている人物、もしくは、護衛の中に裏切り者がいる。また、その両方か…。」


 フリードリッヒはそう言うと考え込んでしまった。


「アーシェア国となると親類がいる者も多いので、選定が難しいですね。入国審査も自国民と同じですし…。」


 セルロスもそう言うと黙り込む。


「あの、お父様。腕は大丈夫ですか?私が治癒魔法を…。」


 いい終わる前に、兄様に口を塞がれる。


「マリー、ありがとう、心配してくれて。君が治癒魔法を使えるミハイル殿を呼びに行かなくても大丈夫だよ。彼はルーキン伯爵の治療が落ち着いたら来てくれることになっているからね。」


 リマンド侯爵は『呼びに』を強調して、そうマリアンヌに笑いながら告げると、フリードリッヒはほっとしたように軽く息を吐きマリアンヌの口から手をそっと離した。


 あっ、今は沢山の方がいらしてるんでした。


「ごめんなさい、お父様。」


「私を心配の余りに取り乱したんだね。だが、お前はこの侯爵家の娘だ、わかっているね。魔法学園を卒業するまではまだ、一人前ではない。それまでは慎しみなさい、例え私が死んでも。」


 魔法学園を卒業するまで、そのせいでお父様が死ぬことになっても、治癒魔法を決して使ってはならないと仰られるのですね。


 わかりませんわ、お父様。わかりたくもありません。なんの為に、兄様に犠牲になっていただいて習得したのです?人を治す力があるのに、目の前で大切な人が亡くなりかけているのに使ったらいけないなんて…。そのせいで、その大切な人を永遠にに無くすかもしれませんのに…。


 納得いきませんわ。


「どうしてですの?」


 お母様は常日頃、親しい人にマリアンヌは治癒魔法が使えるのよ。って、仰られているではありませんか。


「今日はもう遅いし、慌しい。明日の夕食後、私の書斎へ来なさい。ゆっくりその話をしょう。」


 リマンド侯爵はやれやれといった風に、溜息を吐くとマリアンヌにしっかりと言い聞かせるように話した。


「はい、お父様。」


「うむ。それで宜しい。セルロス、すまないがブランデーを用意してくれ。ついでに、ルーキン伯爵の様子も見てきて欲しい。」


 リマンド侯爵は腕の痛みに顔を顰めながら、セルロスに指示を出した。セルロスは軽く頭を下げると部屋から出て行った。


「宰相、敵の数は如何程でしたか?武器は何でしたでしょうか?」


 先程まで、黙っていたフリードリッヒが何か思い付いたように口を開く。


「武器か、確か剣。短い物を両手に持っていたと思う。後は、暗器。どう見ても騎士には見えなかった。手練れの冒険者崩れを雇ったか、いや、暗器を使えるとなるとそれ専用の訓練が必要だ。人数は、5名程度だった気がする。何せ、血生臭いことには慣れていないもので、私も気が動転してしまってね、正確に状況を覚えていないんだよ。面目無いね。」


 少しバツの悪そうな表情をしつつ、折れていない方の腕を立てて、蟀谷に人差し指を当てながら思い出すようにリマンド侯爵はぽつぽつと言葉を紡ぐ。剣を持たない人間の筈なのに、その正確さにフリードリッヒは驚きを隠せないのか、やや興奮気味だ。


「流石です、宰相。驚きました。襲われた状況でそこまで観察されているとは!暗器と短い短剣を2本操っていたとなると…クロウと同じく、暗部の可能がございます。暗部…。主人のいる者か、或いは依頼を受注してこなす組織か…。短剣二刀流であれば自国民の可能性が高い筈です。また、冒険者の中には暗器は別ですが、短剣を2本使う者は多数おります。」


「そうか、組織であれば探すのは困難だな。スラム街を根城にしているのはわかっているが、あそこを虱潰しに当たるのは無理だ。よしんば見つかっても、黒幕には辿り着けまい。」


 リマンド侯爵はお手上げだと言う風に、力無く笑うと背凭れに身体を預けた。


 スラム街…。ユリに教えて貰った所かしら?


「あの、スラム街とは地図のぼやけた部分でしょうか?」


「ああ、そうだよ。あそこには、訳有りの人が集まり暮らしているんだ。解っているは思うけど、決して近づいてはいけないよ。」


 諭すように兄様が教えて下さいました。それを聞いていたリマンド侯爵は苦笑いをした。


「フリードリッヒ、はっきりと教えていいぞ。あそこに住まう住人は私を憎んでいる者が多い。マリアンヌ、お前が足を踏み入れれば間違いなく殺されるだろう。何があっても近づいてはいけない、いいね。」


 お父様が恨まれている?どうしてですの?日に2度、炊き出しをしているではありませんか、地税を払わずとも取り立ても行っておりませんし、塀の中の安全な所で暮らせていますのに?感謝されど憎まれるなんて!


「納得のいかない顔だね。フリードリッヒ、そのわけを今度ゆっくりマリーに教えてやってはくれないかい?オブラートに包む必要はない。事実を客観的に教えてやってくれ。」


 リマンド侯爵はやれやれといった感じで、困惑しているマリアンヌを一暼すると、フリードリッヒにそう言った。フリードリッヒは真剣な表情で答える。


「畏まりました。」


「さて、襲ってきた連中から割り出せないとなると…。手掛かりは、アーシェア国と裏組織に通じる人物、後は、暗部を抱えた者の線も捨てがたいな。こちらの護衛は全て、ルーキン伯爵家の者だった。その中に、この条件に当て嵌まる人物と繋がりのある者…。」


 セルロスがワゴンにブランデーとグラス、氷と、チーズ、紅茶のセット、それにサンドイッチを乗せて入って来た。リマンド侯爵の前にブランデーを注いだグラスとチーズの盛り合わせを置く。


「旦那様、ブランデーでございます。ルーキン伯爵を切った剣に毒が塗ってあったらしく、一命は取り留めましたが、お命は時間の問題だと…。もう少ししたら、ミハイル様がこちらへいらっしゃいます。」


「そうか、ご苦労。しかし、毒が塗ってあったとは…。ミハイルの治癒魔法で治らぬとなると、かなり強い毒だな。」


 もし、ジュリェッタ嬢からこのことを聞いていなければ、斬られたのはお父様だったはず。ジュリェッタ嬢に感謝しなければなりませんわね。


 リマンド侯爵のブランデーの準備を終えると、セルロスは紅茶をカップに注ぎ、サンドイッチと共にフリードリッヒとマリアンヌの前に置いた。


「お嬢様、フリードリッヒ様、小腹が空かれたかと思い、サンドイッチをご用意させて頂きました。どうぞ、お召し上がりください」


 一人の女性が頭に浮かんだ、沢山の男性を従えていた肉感的な女性。確か、一度アーシェア国に嫁がれた人物。そう…。


「クシュナ夫人。お父様、クシュナ夫人です。」


 突然声を張り上げたマリアンヌに驚きつつ、リマンド侯爵はブランデーを口に含んでから口を開いた。


「クシュナ夫人か、彼女ならアーシェア国の王族の動向がわかるな。だが、ルーキン伯爵の愛妾だろ?大事な金蔓を殺そうとするかね?それに、私が彼女から殺される理由がない。」


 確かに、そうですわよね。沢山貢いでらっしゃるんでしたっけ。


「それが、最近はルーキン伯爵とクシュナ夫人の関係が余り良くないようです。」


「ほぉ、セルロス一体どういうことだい?」


「はい、先日、お嬢様からの依頼でルーキン家を訪れたのですが、ルーキン家は伯爵の散財で火の車のようで、もうルーキン家よりお金を引き出せないと感じたクシュナ夫人がルーキン伯爵に別れ話をされていた様子でした。かなり、お二人とも興奮なさっていらっしゃいました。」


 フリードリッヒは驚いた様子だ。


「金の成る木であるダンジョンを領地に持っているのに、火の車?嘘だろ…。」


 兄様、食い付く所はそこですか…。


「ほぉ、セバスからルーキン伯爵が彼方此方でツケを払ってないと聞いていたがそれ程までとは…。フリードリッヒが言う通り、ダンジョンは金の成る木だ。管理さえすれば、冒険者達が金を運んで来てくれる。領民を使わずとも、冒険者が採掘、討伐して金を産んでくれる。ダンジョンが領地内にあれば、カネの管理が下手でもお金には困らない筈だが…。女性の欲とは凄まじいな。フリードリッヒ、リマンド家に婿養子に入ったら覚悟して欲しい。」


 お父様、遠い目をされています。今、クシュナ夫人とお母様を重ねて考えられましたわね。お母様、いったいどれだけお金を使ってらっしゃるんですか?


「婿養子にして頂けるのであれば、喜んで尽力致します。」


 フリードリッヒは一瞬固まったが、力強く侯爵に宣言した。セルロスは執事の顔も忘れて心底呆れた様子でポツリと漏らした。


「アーシェア国から追い出され、スミス家から縁を切られる理由がわかった気が致します。」


 セルロス、貴方もクシュナ夫人とお母様を重ねてたわね、お母様がお使いのお金はアーシェア国の王室から追い出されるほどなの?アーシェア国、豊かな国ですわよ?


 クシュナ夫人より、お母様が心配になってきました。お父様、絶対にお母様より先に死なないで下さいませ、リマンド家が破産してしまいます。


 リマンド侯爵は笑みを引っ込め、真剣な顔になり話し始める。


「冗談はこれくらいにして、それが確かなら、クシュナ夫人にルーキン伯爵を殺す動機は無きにしもあらずだな、ただ、それだけでこの暗殺計画を起こすとは思えんが…。共犯がいれば話は別だが…。クロウとハンソンが帰ってくればわかるかも知れんな…。おっ、ミハイル、ご苦労だった。ルーキン伯爵の容体はどうだ?」


 ミハイルがルーキン伯爵の治療を終えて、サロンへやって来た。


「はい、それが…。傷の方は完治したのですが、完全に毒が回っておりまして…、もう少し早く治療を行っていればどうにかなったかも知れませんが…。」


 ミハイルの顔は苦渋に満ちて、言葉も歯切れが悪い。手を尽くしたのだろう、そのいでたちから疲れがみてとれる。


「いや、ご苦労。そうか、完治はせぬか。」


 リマンド侯爵の表情も暗い。


「申し訳ございません、私の力不足です。治癒魔法を日々かけて毒が身体を蝕む速度を抑え、上手くいって一年かと…。」


 ミハイル様が無理なら、陛下にお頼みすれば。皇后陛下でもいいわ。それに、ミハイル様のお兄様方やソコロフ侯爵だって治癒魔法を使えるじゃないですか、もしかしたら治るかも知れませんわ。


「お父様、陛下にお願いされては?」


「それはできない。皇后陛下も同様だ。知ってるとは思うが、この国は陛下ご夫妻の加護で安全を保っている。故に、個人に治癒魔法を使い、加護を弱めるわけにはいかない。ソコロフ卿とて同じだ、帰らずの森の警護にあたっておる。彼とて簡単には帰還できぬ、ミハイルの兄達がダンジョンに潜っておる今は特にだ、その側で暮らす者達に被害が出るからな。辺境を守っておるヴルグランデ侯爵家の者も然りじゃ。」


 リマンド侯爵は首を静かに横へ振った。


 目の前が真っ暗になった。


 ミハイル様のお兄様たち、今、ダンジョンに潜られているのですね。では、連絡の取りようがございませんわ。何か手はないのでしょうか…。


「マリー、これはどうしようもないことなんだ。1人の貴族の為に国中の国民の安全を脅かすことはできないからね。城にミハイルがいる。これだけでも、幸運なことなんだよ。」


 フリードリッヒは諭すように宥めるようにマリアンヌに話しかける。


「宰相閣下、骨折の手当てを致します。」


 ミハイルがリマンド侯爵へそう告げると、セルロスがさっさとリマンド侯爵の横に椅子を用意する。


「ありがとう。だが、魔力の方は大丈夫かね?だいぶ使ったのではないか?」


 心配するリマンド侯爵にミハイルは笑顔で答える。


「お気遣いありがとうございます。ですが、大丈夫です。骨折を治すくらいなら。だだ、流石に疲れました。今日はこちらへ泊めて頂けませんか?明日、もう一度、ルーキン伯爵に治癒魔法をかけたいですし。」


「勿論だ、夜も遅い。泊まって行きなさい。セルロス、部屋の用意を」


 セルロスは一礼をするとサロンから出て行った。ミハイルは椅子に座り、侯爵の腕に治癒魔法をかけると先程までの腫れは引き、腕はもとどおりになった。


「ありがとう、素晴らしい腕前だ。ああ、丁度セルロスが戻って来た。セルロスに部屋を案内して貰ってくれ。マリー、フリードリッヒ、君たちももう休みなさい。」


 マリアンヌはベッドに入った途端に、疲れていたのか眠ってしまった。


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