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ヒロイン ④

ジュリェッタ目線もう少しお付き合い下さい。



 今日は、近くの森でワイドウルフの討伐をして時間を潰しギルドへ行く。


 良かった、まだ、ワイドウルフ討伐の依頼が残ってた。昨日、ミハイロビッチのサインを届ける時にまだあったから残ってると思ったんだよね。やっぱり、主人公ついてるね!


 受付のお姉さんに先程剥がした依頼書と、ワイドウルフ、冒険者カードをお父さんに渡して貰う。大事だからもう一度言うね。お父さんに渡して貰う!


「ワイドウルフ討伐、依頼達成です。ワイドウルフはどうなさいますか?」


「全て買取で頼むよ。」


「はい。ワイドウルフ全て買取ですね。依頼達成料は銅貨50枚買取料は銀貨3枚で、合わせて銀貨3枚と銅貨50枚です。」


 やっぱり、昨日、お姉さんの手元の買取表チラッと見たんだよね。依頼料はワイルドボアより安いけど、本体の買取が高い。但し、皮に傷がない事。だから、お父さんに剣じゃ無くて、拳で首の骨を折って貰ったんだよね。


「あっ、リフリード様が通られるみたいですよ」


 沿道がキャーキャーと騒がしい。私達も沿道に出ると馬に乗ったリフリードが目の前を通って行く。茶色の髪に緑色の瞳。可愛い顔立ち。


 まずは、彼がターゲットね!


 沿道のリフリードにロックオンし、フィリップ伯爵領のギルドを目指す。


 待ってなさい。リフリード、絶対攻略してみせるんだから!


 フリップ伯爵領も平和そのもの、こっちは牧草地帯が広がり、沢山の家畜が放牧されている。特に羊が目に付いた。後は、木が等間隔に植えてある。


 フルーツでも取れるのかな?


 早速、ギルドへ行く。いつも通り、依頼が貼り出されている所へ行き依頼を物色する。リマンド領より魔獣討伐の依頼が多い。畜産が盛んな為、魔獣に狙われやすいのかな?

 

 魔獣討伐の依頼に混じって、“牙狼“の言っていた上級魔道士の募集の紙を発見した。依頼主はギルドになっている。その紙を剥がしポケットに入れる。


 還元率の良さそうないくつかの依頼の中から一つを選び、お父さんに受注カウンターへ持って行って貰う。ついでに装備のことも尋ねた。


「装備?何が欲しいの?」


 20歳くらいの受付のお姉さんは尋ねてきた。


「お父さんの剣とか、防具とか、後、私の服も!」


「剣はあまりお勧めの店はないわ。剣ならルーキン領で買う方がいいわよ。冒険者用の服ならいい所があるわ。この通りを真っ直ぐに行った処にドレスの生地を作っている工房があって、その隣の店よ」


 お父さんの顔を見る。買うか?って顔で返って来た。レベル上げの為にダンジョンへ潜る予定だしな…。それよりも先に剣かな?要らないと首を振る。依頼書は手に入ったしここに用はない。取り敢えず依頼をこなし、レベル上げとお金を稼いでルーキン領へと急ぐ。


 ルーキン…。


 名前に違和感を覚える。なんだろう、モブキャラでいたかな?あー!もう、ちゃんと攻略キャラ以外も名前見てたら良かった!!


 ルーキン領でも、いつも通りまずギルドへ行く。受付のお姉さんにダンジョンについて尋ねた。


「ダンジョンへ潜られるんですね。ギルドカードをお願いします。えーっと、ダフィートさんはC級冒険者ですね。ジュリェッタさんはD級…。ジュリェッタさんは年齢が達していないので申し訳ございませんがダンジョンには参加できません。」


 えーっ、まさかの年齢制限。お父さん一人で潜って貰うにしても何かあったら心配だし…。まさか、竜討伐の前に死んじゃうってことは無いとは思うけど…。


 どうしよう、かと言って他のダンジョンだとミハイロビッチにリフリードを紹介することは不可能になるし…。お父さんのレベル上げも急務なんだよね…。


「ジュリェッタ、このダンジョンは今は諦めよう。また、ジュリェッタが大きくなってから挑戦すれば良いだろ」


 あー!もう、それじゃ遅いの!って言ってもお父さん分かんないし!


「おーい!ジュリェッタちゃんとおっさん!」


 声の方を見ると”牙狼”さん達がいた。


「おっさん達もこのダンジョンに挑戦するのか?」


「その予定だったが、ジュリェッタの年齢が足りないらしくてな」


「このダンジョン、年齢制限なんてあったのね。で、これからどうするの?」


 お姉さんが、私の頭を撫でながら聞いて来た。距離感近い人達ね。


「お姉さん達は、ダンジョンからの帰還?」


「そう!でももう一度潜ろうと思って!これから、装備と食糧の調達よ!」


 もう一度、潜ろうってことは良い身入りか、レベルが上がりやすいかのどっちかよね。


「何かいい魔物か何かいたの?」


「見入りは余りだな、それより、レベルを効率的に上げられる。」


 そっか、レベル上げか…。あっ、いいこと思いついた!


「ねえ、牙狼さん達良かったらお父さんと一緒に潜ってよ」


「そんなことしたら、ジュリェッタ一人になっちまうじゃないか!危ないだろ?」


 お父さんはオロオロしだした。


「大丈夫だよー。リマンド領の先生の処にでも行ってるから、牙狼さん達と別れたら迎えに来てよ!勿論、牙狼さん達がいいならだけどね」


 ここは目一杯上目遣いで媚びとく所よね。折角可愛く産まれたんだから!


 目一杯可愛く牙狼さんを見る。


「おっさん、ギルドカード見せて」


 騎士風がお父さんのカードを見ると横から、後の二人も覗き込んできた。


「おっさん、Cランクなんだ。子供連れで中々やるな!それも、ひとりでは手の出ない大物が多いじゃないか」


「あら、ほんと」


 お姉さんが横からギルドカードを覗き込む。


「いいぜ、これなら我らと一緒でも足手纏いにはならないだろう。」


「しかし、治安が良いとはいえ、リマンド領までひとりは…」


「なら、ルーキン伯爵と一緒に行ったらいいよ」


 ルーキン伯爵と?どういうこと?


 訳がわからないという顔で騎士風を見てたのだろう。


 魔法使いが答えてくれた。


「全く、お前はいつも言葉足らずだなぁ、明日、ルーキン伯爵がフリップ領に行くんだ。それで、荷物運びの依頼がギルドに来てたから、その一行に着いて行ったらいいって、言いたかったらしい。それには、ギルド職員も同行するから安全だぞ」


 へー、お目当てのルーキン伯爵だ、どんな人物か見られるね。


「そうか、ギルド職員も同行するのか。よし、一丁頼んで来るか」


「俺たちは、装備と食糧を買いに行くがおっさん達はどうする?」


「一緒に行ってもいいか?初めてのダンジョンだからどれくらい準備したらいいか知りたい」


「いいぜ。じゃあ、ギルドを出て、真っ直ぐ行った所に、オレンジの看板がある。その店の中に居るよ」


「おう」


 私はお父さんともう一度ギルドの受付へと戻った。お父さんがギルドの職員に尋ねる。


「ルーキン伯爵に同行する時に、このジュリェッタも一緒に連れて行って貰いたいんだが…」


「ちょっとお待ち下さい。担当の者を呼んできますね」


 そう言うと、お姉さんは奥からヒゲモジャの年配の男性を連れて来た。


「はぁ、伯爵一行に同行?ん?おー!ダフィート!それにジュリェッタじゃないか!」


 中から出てきたヒゲモジャの男はダフィートとジュリェッタをみると破顔し、ダフィートに抱き付いた。


「ゲラス?ゲラスか?なんだ、お前が責任者かよ。なら、話は早い。ジュリェッタをリマンド領の入口のシナノの森の入口まで同行させて欲しい。」


 ゲラスおじさん、お父さんの昔からの友達。お母さんが死んで冒険者になった時にお世話になった人。


「本当はダメだが、俺の連れってことにするぜ」


 翌朝、私はお父さんと別れてゲラスおじさんとルーキン伯爵の元へ向かった。

 

 ルーキン伯爵家の家紋。


 あっ、ゲームのジュリェッタの家紋と一緒!


 思い出した、ジュリェッタは、ルーキン伯爵家に養子として迎えられるんだった。と、いうことは、このルーキン伯爵はもしお父さんが死んだら私のお父さんになる人。


 少し、足が震えた。ゲームの世界のはずなのに、赤ちゃんの頃からのお父さんの死というスタートのせいで、全てがなんだかなんとも言い表せ無い嫌な感じがする。


「どうした?ジュリェッタ?」


「大丈夫。お父さんと離れたから少し寂しかっただけ」


 無理矢理笑う。こんな所で挫けちゃだめ、お父さんを助けなきゃ!


「そうか、ならいいが。オレはルーキン伯爵に挨拶してくる。」


「私も着いて行っちゃダメかな?邪魔しないし、おじさんの後ろでじっとしとくから」


 ゲラスは少し悩んだが了承した。馬車をノックするとルーキン伯爵が馬車から降りて来て、冒険者達を一暼し、ゲラスに目を向ける。


「ルーキン伯爵、準備は出来ました。」


 ゲラスは片膝を突きルーキン伯爵へ挨拶した。ルーキン伯爵は軽く頷く。視線がジュリェッタを捕らえた。むさ苦しい冒険者の中に一輪の花。水色の髪にピンクアイ。儚げな貴族を思わせる顔。


「ゲラス、あの娘は?」


「申し訳ございません、知り合いの娘でしてリマンド領まで一緒に連れて行きたいのですが」


「怒ってはおらん。どこの令嬢だ?」


「令嬢ではございません。冒険者の娘です。あの娘の父も母も平民です」


「ほお、そうか。おい、娘、名前を何という?」


「ジュリェッタです」


 黒い髪に鋭い目は、ピンクアイ。彫りの深い顔立ち。怒っているわけではないようだがその瞳を向けられるとまるで、蛇に睨まれたカエルだ。


 怖い


「流石に、むさ苦しい冒険者の中に、若い娘をひとり入れて置くわけには行くまい。一緒に馬車に乗りなさい」


「いえ、滅相もない」


「なに、とって食おうってわけではない。馬車には、私の妻も乗っている。安心なさい。」


 固まるジュリェッタにルーキン伯爵はそう告げた。促され馬車に乗り込むとそこには妖艶でグラマラスな美しい女性が座っていた。


 良かった、本当に奥様がいらっしゃったんだ。



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