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新たな婚約?

マリアンヌ視点に戻ります。


 ドアをノックする音が聞こえる。マリアンヌは読みかけの本にしおりを挟み本を閉じる。


「はい、どうぞ。」


「失礼致します、お嬢様」


 ユリがリサを伴って、マリアンヌの自室に入って来た。


「どうしたの?ユリ」


 マリアンヌはソファーに座ったまま、顔だけユリの方を向く。


「フリップ伯爵様がいらっしゃいましたので、旦那様がお嬢様もご一緒される様に、とのことです」


 マリアンヌはソファーから立ち上がり、ドレッサーの前へ移動すると、さっと、ユリが引いてくれた椅子に座った。


「わかったわ。おじ様を長らくお待たせする訳にはいかないわね、急いで準備して」


 お父様が私をお呼びになるということは、リフリード様の件でいらしたのね。緊張してきたわ。


「はい、お嬢様。お洋服はそのままで宜しいかと思います。髪はサイドアップにして、薄く化粧をし、水色のワンピースをお召しですので、ピンクの口紅にいたしましょう。リボンはワンピースと同じ色の物をご用意致しますね」


「それで良いわ、宜しくね」


 返事を聞くとユリは化粧を始め、リサは衣装部屋へリボンを取りに行く。2人がかりでさっさと準備を済ませてしまう。


 相変わらず卒の無い動きだわ。私、ユリが結婚して出て行ったらやっていけるのかしら?ユリはもうお嫁に行っていてもよい歳なのよね。


「準備が整いました」


 マリアンヌは2人にお礼を言って、父とフリップ伯爵の居るサロンへ急ぐ。


 セバスに促され、サロンを通り過ぎ奥の客間へ入ると、ソファーに座る3人の白銀の髪の男性が目に付く。一人は父親、優しそう以外全く特徴が無い。父の向かいに座っているのは、父の再従兄弟で兄のような存在であるフリップ伯爵、彼も父と同じモーブ色の瞳の優しそうな人物。しかし、その顔は誰もが見惚れる中性的な美丈夫。その隣りには、フリップ伯爵を若く凛々しくしたような人物が座っている。


 フリップ伯爵のお隣りにいらっしゃるのはどなたかしら?髪と目の色からして、お父様の親族であることは間違いないんだけれど…。しかし、この二人と一緒だとお父様、存在感が全くありませんわね。


「おじ様、お久しぶりです。マリアンヌです」


 フリップ伯爵に向けて、笑顔でカーテシーをする。


「マリアンヌ嬢、この前は本当にすまなかったね、リフリードがとんでもないことをしてしまって。君にはいくら謝っても謝りきれない。本来なら、リフリードを連れて来て謝らせるべきなのだが、いろいろ事情があって連れて来れなくてね。本当に申し訳ない。」


 悲痛な面持ちでフリップ伯爵はゆっくり椅子から立ち上がり、マリアンヌに深々と頭を下げた。


 おじ様、顔色が悪いわね。私が落ち込んでたらとても心配なさるわ。


 マリアンヌはなるべく明るく努めて笑顔で答える。


「おじ様に謝っていただく必要はございませんわ。悪いのはリフリード様です。頭をお上げになって下さいませ。」


 顔を上げたフリップ伯爵は心無しか、ホッとした表情で隣に座っていた人物に目配せした。彼は立ち上がりマリアンヌの正面に立った。


「マリアンヌ、ありがとう。そう言って貰えると助かるよ。ああ、紹介しよう、フリードリッヒだ。覚えているかい?昔、よく一緒に遊んでただろう?王都に用事があって行って来たんだよ。で、フリードリッヒがちょうど休暇だったので一緒に帰ってきたんだ」


 なる程、父から呼び出されて来たのでは無く。王都へ用事で行き、たまたまそれと休暇の被ったフリードリッヒ様と同じ馬車で帰る途中、せっかくだからと家に寄ったという形ですのね。それで関係のないリフリード様は連れては来れないと、大人の事情ですか。何かあるわね。


 フリードリッヒ様とお会いするのは何年振りかしら?王都の騎士学校に入られる前に会ったのが最後ですから…9年振り?おじ様に似てとても美しいお顔ですこと、背も高いわね、私、肩位かしら?騎士をされているだけあってしっかりとした身体付き、リフリード様は何処ぞの御令嬢みたいなのよね。


「久しぶりだね、マリー。凄く美人になっていてビックリしたよ、僕の可愛い妹。」


 フリードリッヒはさっと跪き、マリアンヌの手の甲に唇を軽く当てる。そのスマートな動きにマリアンヌの頬は瞬く間に赤く色付き、居た堪れなくなり俯く。


「あははは。マリーにレディ扱いは早かったかな?」


 そんなマリアンヌの顔を覗き込むと、フリードリッヒは凄く楽しそうに笑う。


「ひどいですわ、フリードリッヒ様」

 

 照れ隠しにぷうっと頬を膨らませ、マリアンヌはフリードリッヒを睨め付ける。そんな様子さえも、さも楽しそうにフリードリッヒはニコニコと笑っている。


「えらく他人行儀じゃないか、マリー。昔みたいに兄様と呼んでくれないのかい?」


「そんな意地悪な人、兄様なんて呼びません!」


 酷いなぁ、マリーは。なんて言ってるけど、全然反省して無いじゃない。目に涙を溜めて、お腹かかえて笑ってるし。


 かっこいいって思った、私のトキメキを返してよ!手の甲へのキスだって絶対からかっただけだわ。あー、もう、どうしたらいいの!おじ様にお父様もいらっしゃるのよ。


「まぁ、皆んな座ったらどうかね。セバス、お茶を入れ直してくれ。」


 リマンド侯爵が苦笑いを浮かべながらその場を仕切り直し、三人はソファーへ腰を下ろした。


「マリー、君を此処へ呼んだのはわかっているとは思うが婚約者の件だ。」


 真剣な表情をして、リマンド侯爵は隣りに座るマリアンヌの顔を見る。


「はい。お父様」


「リフリードとの婚約を継続することはできない。しかし、リフリードがお前にしたことを公にすることも難しい。従って、リフリードが侯爵となる勉強が上手くいかず、このままではと、リフリードとの婚約を解消してフリードリッヒと新たに婚約する予定とした」


 言葉に引っかかりを感じる。予定って、何かあるのね。


「リフリード様の件、リフリード様以外の誰かが関わっているかもしれないということですか?」


「ああ、リフリードとジュリェッタ嬢が恋仲なのが引っかかる。出会う接点が無い」


「どこかの舞踏会で出逢われたのでは?」


15歳になれば皆社交界デビューをはたすし、何ら不思議では無いのだけど…。


「それが、ジュリェッタ嬢はまだ社交界デビューを済ませていらっしゃらないのです。最近、貴族の娘になられましたので、淑女教育が終わっておらず、今、陛下より下賜された家庭教師について、勉強なさっている最中でございます。」


 セバスがお茶をサーブしながら答えて、お父様も頷いている。


「でしたら、王都の何処かで出逢われたのかしら?」


 その問いにフリップ伯爵が答える。


「それも無いな、リフリードは侯爵になる勉強が押していた為、今年は王都へは行っていない。」


 じゃぁ、一体何処で…。


 不思議だろう?とお父様がニヤリと笑った。


「それで、フリードリッヒお兄様との婚約を考えている。ということなのですね。」


「そう言う事だ。リフリードとの婚約破棄となれば、確実にフリップ伯爵がダメージを被る。それで得をする人物が怪しいのだが心当たりが多過ぎてね。そればかりか、フリップ伯爵が失脚すると私もダメージを被る。ということは、私に対する策かも知れない。そうなると、怪しい人物が膨大だ」


 かなり恨まれてるからねぇ〜。なんてのほほんと呑気に言ってらっしゃいますけど、それ、かなり危険ってことですからね、お父様。


「リフリードにとっては不名誉なことだが」


 と、いいながら、リマンド侯爵はクッキーを頬張る。


「自業自得だ。私に何の相談もせず、しかも私の留守中にマリアンヌ嬢を呼び出し婚約破棄を告げるとは、親として恥ずかしい限りだ」


 フリップ伯爵は苦虫を噛み潰した様な顔をして言い放った。そんな父の顔を見て、フリードリッヒが口を開いた。


「で、そんな重大な事件を起こした本人は、今どうしているんだ?」


「本邸の自室で監禁中だ」


 フリップ伯爵は力強く言い捨てた。


「でも、ずっとそのままって訳にもいかないだろ?親父。分かっていると思うけど。リフリードは侯爵に成れない。ってことは、下級文官か騎士になるしかない。文官になるにしても、騎士になるにしても学校へ行かなければならない。学校へ行くには試験を受けなければならない。使い捨ての騎士とは違って文官なんて狭き門だぜ。まっ、騎士は兵士からの叩き上げの人もいるけど、こっちは、俺たち貴族の息子達に勤まるほど甘くないからね」


「そうだな、リフリードとそのことについても話さなければならないな」


 フリップ伯爵は力なく頷いた。フリードリッヒは、今度は侯爵に向き直ると、先程とは打って変わって真剣な顔をした。


「閣下、私は家に帰らずこのままこちらに滞在し、貴方の仕事を手伝えば宜しいのですね」


「ああ、頼むよ。話が早くて助かる。部屋は用意してある。マリー、このままフリードリッヒと婚約するかい?リフリードよりフリードリッヒの方が良いと言ってたし」

 

 相変わらずのほほんと、リマンド侯爵はさらりと爆弾を落とす。


 今、それを言います?お父様!


「へーぇ。マリーはリフリードより僕の方が好きなんだ。嬉しいな」


 ほら、兄様がニヤニヤしてるじゃないですか、私の手に負えないんですけど、この方。お父様、ちゃんと責任を取って下さいまし!


「兄様は、もてますよね。想いあった方とかいらっしゃるのではありませんの?そんな方がいらっしゃったら、私と婚約なんて出来ませんわよね?」


 マリアンヌは慌てて、言葉を紡ぐ。


「うん、もてるよ。ほっといても寄って来るし、でも、想い合っている人は居ないな」


「では、想いの方は」


 もてることは否定しないんですのね。それも勝手に寄って来るとか…。そうですわよね、そのお顔ですものね。


 マリアンヌは淑女の顔も忘れてジト目になる。


「居るよ」


 サラリと答えられてしまい拍子抜けする。


「大丈夫ですの?私と婚約者の振りをされて、その方に誤解されてしまうのでは」


「う〜ん。どうだろう?向こうは僕が好きなことを知らないし。大丈夫じゃないのかな?それに、簡単に結婚だの、恋人だのになれる相手でもないしさ」


「そうですの」


 ということは、身分の高い御令嬢?騎士爵では結婚出来ない方なのかしら?もしかして、人妻?


「しかし、また、此処で暮らすことになるとは思わなかったよ。宜しくね、マリー」


 そう言えば、昔フリードリッヒお兄様はおば様と一緒にこの家に住んでらっしゃったのよね。よく遊んで下さったわ。懐かしいわね。

 

 

ユリは普通に可愛いですよ。決してモテないわけではありましせん。実家に仕送りしてるので、中々結婚に踏み切れないのです。

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