ヒロイン ③
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ということで、ギルドのお姉さんおすすめの店で食事をする。
「おすすめはなんだ?」
「グアンナのシチューとワイルドボアのステーキよ」
30歳くらいのウェイトレスが答えてくれる。
「お父さん、両方とも頼もう。後、サラダとパンも、喉渇いたからお水も欲しいな」
いつも通り、お父さんに助け船を出す。この店はお水は有料、グアンナのシチューもワイルドボアのステーキも両方たのんで、サラダとパンを付けても大丈夫な値段。
「よし、そうしよう。グアンナのシチューとワイルドボアのステーキ、それに、サラダとパン。水も頼む。」
「わかった。ちょっと待っててね。」
そう言ってウェイトレスは奥へとオーダーを伝えに行く。
食事を待っていると後ろの席の3人組の話が聞こえる。
「この侯爵領地を中心にここ一帯は治安がいい。だが、ルーキン伯爵領は少し厄介だ。」
「ルーキン伯爵領もこのリマンド侯爵家の下なんだろ?安心して大丈夫じゃないのか?」
ふ〜ん。どこでも厄介な貴族はいるのね。
3人組の話に耳を傾ける。
「いや、あそこは雰囲気が違うんだよ。ちっとばかり用心しても損はないと思うぜ。」
「そうか、だがあそこにはダンジョンがあるだろう。行けばレベル上げがしやすいんだがなぁ。リマンド侯爵家の傘下だからそこまで、搾取されることはないだろう?」
「そう言えは、フリップ伯爵家で魔道士探してるらしいぜ。」
「魔道士?何の依頼だ?」
「さあ、何でも上級魔道士が対象らしい」
「ヘェー、上級か。中々居ないな」
フリップ伯爵って、リフリードの家よね。上級魔道士…。確かまだ、リフリードは魔法を使えずに苦労しているはず。と言うことは、リフリードの家庭教師を探している?これを利用しない手はない!
思い切って、背後の冒険者のパーティーに話しかける。1人は騎士風のイケメン、20代かな?もう1人は魔法使いかな。こっちはお父さんと同じくらい、痩せ型で神経質そう。後、弓使いはナイスバディな20代後半?のお姉さんだった。
「フリップ伯爵家で魔道士を探してるって、本当ですか?」
上目遣いでなるべく可愛く見える角度を意識して聞く。この方が、大人には有効だ。弓使いのお姉さんが答えてくれた。
「そうよ、ほら、うちには魔法使いがいるでしょう?フリップ領のギルドで声を掛けられたのよ。でも、ウチのは上級じゃ無いからね。」
「違いねぇ、戦闘でなら上級とあまり変わんない働きをするが、それ以外だとな」
二人の言葉に憮然として、魔法使いが口を開く。
「冒険者なんだ、戦闘で使えたら十分だろ」
「違いねぇ。」
騎士風がギャハハと笑う。
「だから、ウチの案件じゃ無いわけよ。何?お嬢ちゃん、魔道士なの?」
お姉さんが色気たっぷりにそういった。
「いいえ、上級魔道士に興味があって!」
「そうよね。中々お目にかかれないもんね。基本上級ともなると由緒正しき貴族が堕ちぶれた場合か、よっぽど物好きな貴族の次男以下だからね」
「お嬢ちゃんも元貴族か?」
騎士風が聞いてきた。
「いや、オレの娘だ。平民だよ」
お父さんが冒険者達に答える。
「何だ。その髪だから、貴族の血が入ってると思ったよ。しかし、お父さんと似てないな?」
「うん。でも、私の本当のお父さんなんだよ。私、お母さん似なんだ」
「ヘェー、おっさん、めちゃくちゃ美人の嫁じゃねぇか。どこに居るんだ?」
騎士風は店内をキョロキョロしだした。
「お母さん、流行り病で死んじゃったんだ」
「わっ、すまねえ」
「ううん。お父さんがいるから大丈夫」
「そうか、俺たちはこれからフリップ領へ行く。もし困った事があったら頼ってくれ、オレ達は“牙狼“っていう。ギルドに聞いてくれれば話は付くぜ。これでも、B級冒険者のパーティーだからさ」
そう、騎士風が言うと、他の二人が頷いた。
「私、ジュリェッタと言います。」
「オレはダフィート。二人で冒険者をしながらあちこち旅している。牙狼だな、宜しく。」
「ジュリェッタちゃんに、ダフィートね。宜しくね。じゃぁ、私達はいくわね」
そう言って、3人は店から出て行った。
“牙狼“B級のパーティーの中でもかなり強いと有名。ここの店、上級の冒険者が集まる店なんだ。やっぱり、ギルドのお姉さんに恩を売っておいて良かった。
私達だと基本、下級のパーティーが集まる食事処を紹介される。お父さんがC級だとしても、私はD級だしその上子供だ。パーティーも親子で2名だしね。でも、上級の冒険者が集まる処と下級の冒険者が集まる処では情報に差が出る。情報屋も期待できそう。
欲しい情報を買い、一旦、ギルドへ戻りミハイロビッチの元へ向かう。追い剥ぎひとつ出ない平和な道のり。青々とした広大な麦畑に、のんびりと草を喰む牛や、羊の群れ、よく肥えた黒い土地には、野菜が植えてある。リマンド侯爵の力の凄さが窺える。
良い領土よね。欲しくなっちゃった!リフリードと結婚して侯爵夫人も悪くないかも!
途中、生えている薬草を摘みながらのんびり進んでいると思ったより早くミハイロビッチの住む小屋に着いた。地図で確認して、ドアを叩く。ドアが開いて、水色の髪の神経質そうな美青年が顔を出した。
「はい。ああ、ギルドからの荷物か」
流石、攻略対象者、カッコイイわー!憂い顔がよく似合う。戦国武将のゲームでいうと、上杉謙信的なキャラよね。なんだろう、ゲームだと良いけど実際はっていう。天才肌?その上、ケチだしね。
「ああ、ギルドから依頼を受けて来た。荷物を確認してくれ」
ミハイロビッチは箱を開け神経質そうに中身を確認している。全てあったのだろう、納得したように箱から顔を上げた。
「馬は?」
「家の横の木に繋いである。コレにサインをくれ」
「ああ、馬を見てからだ。」
そう言うと、小屋から外へ出て馬を確認している。馬を馬小屋へ繋ぎ直し、ダフィートが持っている紙にサインをした。
今がチャンスよジュリェッタ!
「あの、ミハイロビッチさん」
ミハイロビッチは今、気が付いたと言わんばかりの顔でジュリェッタを見た。
「何?」
「良かったら、魔法教えて欲しいなぁと思って!あっ、勿論、ただとは言わないわよ。ねぇ、お父さん?」
ジュリェッタは慌てて、ダフィートを見る。
大丈夫、お父さんは反対しない。だって、あんなに高い魔導書を買ってくれるんだもん。
ミハイロビッチは無言でダフィートを見た。
「ああ、オレからも頼むよ。ジュリェッタは魔法がつかえるんだが師がいなくてな、独学なんだ。オレはこの通りからっきしだし」
「お父さん?」
「お父さんよ」
「本当の?」
「うん。そう、私お母さん似だから、お母さんはもう死んじゃったけどね」
「で、報酬は?」
「冒険者だから、そこまで高い金は払えない。だから、払った金額分でいい、娘に魔法を教えてくれ」
私は慌てて付け加える。確か、ミハイロビッチは薬草の採取が苦手なのよね。
「後、薬草でどう?ほら」
此処までの道のりで摘んできた薬草を出す。ミハイロビッチはそれを見て顔色を変えた。作戦成功ね!
良かった、食い付いてる。もう一押し!
「珍しい薬草が見つかったらすぐに持ってくるわ」
「わかった。代金と薬草分教えよう。」
「ありがとう」
薬草を渡し、1時間程、魔法の基礎を教えて貰う。それだけで数段違う。
「今日はこれまでだ。代金と薬草がある時は来ればいい。基本的にはここにいる」
「ありがとう」
ミハイロビッチと別れてギルドへ戻った。ギルド職員にサインを渡し、代金を貰い宿へと泊まる。やはり、代金の割に宿の質がいい。
宿の下で夕食を取る。
「良かったな、魔法習えて。」
「うん。お父さんのおかげだよ」
お父さんは我が事のように嬉しそうだ。やっぱり、いいお父さんだ、絶対私が守ってあげるからね。
「どうする?お金が出来たら、いっときはあの魔道士の元に通う為に、ここいらに留まるか?」
「そうだね、フリップ伯爵領に行ってみたい。あと、ルーキン伯爵領のダンジョンも。両方ここから近いし!」
まずは、リフリードとミハイロビッチを引き合わせなきゃね。その為には、まずは、フリップ伯爵領のギルドで依頼書を見る必要がある。そして、ルーキン伯爵、使えそうな気がするんだよね。前世のカンかな?
「そうだな。ジュリェッタが魔法を習う金も稼がにゃならんしな。いっちょ、ダンジョンにでも潜るか」
「お父さんの新しい剣も買おうよ!」
今の剣じゃ、絶対に竜にやられちゃうよ。あっ、防具も揃えなきゃ!お金かせがなきゃね!
今日は実入りが多かったので、お米やら、肉、スクランブルエッグに野菜の炒め物が乗ったのを二人分頼んだ。お父さんはエールも頼んだ。
幸せだわ!
次回、本日22時頃投稿します。
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