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ヒロイン ①

ジュリェッタ目線です。

 ジュリェッタは産まれた時から、前世の記憶があった。


 粗末な小屋に優しそうで美人の女性の横に寝かされた自分。がっしりとした身体付きの熊みたいな男の人が、泣き笑いしている。これが、この世界での最初の記憶。


 貧乏だけど温かい家庭、お父さんはお母さんと私が大好きで、ウサギとか猪とか山から取って来てそれを食べたり、売ったりしていた。お母さんは、身体が弱くて力仕事などできずにいつも家にいる。それでも、目一杯私を愛してくれた。仲の良い両親、貧しくも温かい家庭。


 優しいけど少し抜けたお父さん、しっかりもののお母さん。とっても幸せだった。でも、私が8歳の時にお母さんが死んだ。流行り病だった。貧乏だった為、医者に診せるお金も無くって、元々、身体の弱かったお母さんは自力で治すことが出来なかった。


 それから、お父さんと冒険者ギルドに登録して、2人でレベル上げしながら諸国を周る生活。私は平民には珍しく魔法が使える。お父さんが、


「お母さんに似たんだね。」


 って言って喜んでくれた。お母さんも魔法が使えたから。


 魔法が上手になると、お父さんがすっごく喜んでくれるから目一杯練習した。魔法学の本、すっごく高いのにかなり無理して買ってくれるから何度も何度も頑張っで読んだ。計算は前世の記憶があったから楽だった。こっちでは、掛け算ができるだけで才女扱いされてビックリした。


 そういえば、学校なんて存在しないもんね。お父さん曰く、貴族の一部の人間だけが行くんだって!後は、親から読み書き、簡単な計算を習うらしい。でも、その親も殆どの人が読み書き計算が出来ないそうだ。そういう、お父さんも読み書き計算できないもんね。うちは、お母さんが出来たからお母さんが生きている間に、私はお母さんに習った。


 前世では、シングルマザーの母と2人で暮らしていた。貧乏なのは今と一緒。たまに帰って来ない母親。母はスナックで働いていた。朝方帰って来てはそのまま寝る生活。派手な化粧に酒とタバコの匂い。ちょこちょこ変わるお父さん代わりのおじさん。


 学校サボっても気が付きもしない。その内、学校に行かなくなり、夜の街を友達とうろうろするようになった。年上の彼氏が出来て楽しかった。そのうちに家に帰らなくなった。


 彼氏のバイクの背後にノーヘルで乗ってて、警察に追いかけられてトラックに轢かれ死亡。


 現生ではシングルファザーの父と2人。でも、今の方が数段幸せだ。お母さんが亡くなってもお父さんは私を愛してくれている。そして、お父さんは亡くなったお母さんを今でも愛している。何より、私のことを大切にしてくれて、心配してくれる。シャワーもない、野宿だって当たり前で前世よりひどい生活。それでもお父さんさえいれば幸せだった。


 私がここがゲームの世界だって気が付いたのは、リマンド侯爵領の冒険者ギルドに立ち寄ったとき、冒険者ギルドで見かけたリマンド侯爵領夫妻。侯爵の方は、ぶっちゃけ、顔が地味過ぎて気が付かなかったんだよね。問題は、夫人の方、悪役令嬢そっくりの美人!ビックリしたよ、だって、暇つぶしにしていたスマホゲームと一緒の顔なんだもん。頭下げるの忘れてて、お父さんに慌てて、頭、手で押されて下げさせられたよ。


 で、道具屋で地図買って、見てみると地名が一緒なの!ビックリでしょう?道具屋のおじさんにここの領主の御嬢様の名前聞いたら、なんと、マリアンヌって!悪役令嬢の名前と一緒なの!


 いゃぁ、驚いたのなんのって、で、一番驚いたのが自分の名前!ジュリェッタ!このゲームのヒロインの名前と同じ!今まで何の疑問も湧かなかったんだけどね。


 普通、ジュリェッタって貴族の御嬢様によく使われる名前だから平民では珍しいし、チートだよ!この人生チート!神様からのプレゼントだね。お母さん死んじゃったのは辛かったけど、この世界の主人公だよ!


 その上、ヒロインも元冒険者でお父さんと一緒に旅してたの!これも同じ!で、ドラゴンを倒して貴族になって魔法学園に入った所からゲームがスタートするのよ。でも、待って、ゲームでお父さん出てこないよね?確か、ドラゴン討伐でドラゴンを倒したけど、パーティーでなんとかって人がひとりだけ生き残って、ジュリェッタはどこぞの貴族の養女として迎えられるのよね?


 あれ、ヤバいじゃん!お父さん死んじゃうじゃん!それは、悲しすぎるよ!お父さん大好きなのに!どうにか阻止しなきゃ!


 えっと、ドラゴンが現れるまで、後2年はあるかな?今のうちに準備しなきゃ。まずは、私の魔法のレベル上げが必要だね。そういえば、ゲームでは鍛錬して治癒魔法が使えるようになるんだよね。


 まずは、ゲームの内容を思い出さなきゃ…。そんなにやり込んでないからな〜。

 

 メイン攻略者はジョゼフ殿下、金髪碧眼のザ王子様。悪役令嬢にコンプレックスを抱えている。子供の頃、悪役令嬢に先に魔法を使われて以来、自分に自信が持てない。


「ジョゼフ殿下、まだ治癒魔法をつかえませんの?」


 この言葉に深く傷ついて、後ろ向きな性格に、


「どうせ僕なんて」


 が口癖。攻略法はやればできるとひたすら励まし、一緒に魔法の鍛錬をする。ミハイロビッチを師として迎え、2人とも治癒魔法が使えるようになる。好感度が高ければ王族の森でのイベントで敵国のスパイに狙われる。レベルが一定以上で治癒魔法と風の魔法が使えることが条件でクリア。敵国のスパイを捕まえたことで認められ次の王を約束される。


ハッピーエンドは悪役令嬢と結婚させたい上皇陛下の説得。魅力、学力共に悪役令嬢を上回ることが条件。


ノーマルエンドは王と友達となり、王都で楽しく暮らす。


バッドエンドは敵国のスパイとして反逆罪で捕まる。




 リフリード。伯爵家の3男。可愛らしい見た目の年下キャラ。悪役令嬢の婚約者、次期侯爵になるため猛勉強中。魔法が使えず悩む。兄弟の中で自分だけ白銀の髪とモーブの瞳を持ってないことに劣等感を感じている。側室の子供であるフリードリッヒに強い対抗心を持つ。攻略方法はミハイロビッチの元、一緒に魔法の鍛錬をし、魔法を使えるようにする。ここで、ヒロインは治癒魔法が使えるようになる。

 ハッピーエンドは悪役令嬢を追い出して2人で侯爵家をつぐ。条件は悪役令嬢より、人望、魅力とも上回ること。


 ノーマルエンドは、二人で平民としてくらす。


 バッドエンドは侯爵家を奪おうとした罪人として捕まる。



 フリードリッヒ。伯爵家の次男。ジョゼフ殿下ルートのみ出会うことができる。ジョゼフ殿下の護衛として登場。根性のないジョゼフ殿下に苛々している。悪役令嬢の兄的存在。冷静かつクール。主人公がジョゼフ殿下に寄り添うと好感度が上がる。


 ハッピーエンドは、ジョゼフ殿下のノーマルエンドで、悪役令嬢がリフリードと結婚したときのみ発生。その時、好感度が高ければ、王都で騎士の妻として暮らす。裏エンド、2人で冒険者となって旅立つ。

 

 ミハイロビッチ、魔道士。ジョゼフ殿下ルートでも、リフリードルートでも出て来る。彼に出会うことでヒロインは治癒魔法を使うことが出来るようになる。


 ハッピーエンドは、彼の小屋で一緒に暮らす。


 ノーマルエンドは、師弟関係を維持し主人公は伯爵令嬢として暮らす。



 後は、留学で来ている王太子と、その従者。彼らは、学園入学後にしか会えない。

 

 今は関係ないわね。

 

 

 マリアンヌ、悪役令嬢。侯爵家の一人娘、きつい顔の美人。グラマラスな体型。性格もキツイ。大抵のことをサラッとこなし出来ない人を見下す。


「まずは嘆くより、ご自分で努力なさったら?」


 が口癖。侯爵家令嬢。魔法学園一の秀才。リフリードの婚約者。


 と、後はわかんないや。


 先ずは、ミハイロビッチに魔法を習わなきゃ。でも、攻略対象者も一緒の方が確実に治癒魔法が使えるようになるよね。ジョゼフ殿下は無理そうだから、リフリードと一緒に練習できるようにしないと!


 でも、ここがゲームの世界と同じってことはわかった!


 誰を攻略しよう。王女様とかがらじゃないよね、大変そうだし、ゲームの中ならいいけど現実的でないわ。だから、ジョゼフ殿下は無理ね。


 リフリードはどうかな?侯爵家継ぐって言っても、リフリードが継ぐわけだしね。どうにかなるかな?最悪、平民として暮らすってストーリーも選べるわけだし!


 そう考えるとフリードリッヒも捨てがたい!彼なら冒険者エンドもあるもんね。それにクールな美形!顔だけなら一番好きなキャラだし、一途そうだもんね。


 ミハイロビッチは魔法オタク。エンドは現実的だけど、性格がね…。ゲームならいいけど現実は遠慮したいわ、私、家に篭りっぱなしのオタクは好きになれないのよねー。


 よし、取り敢えず、リフリードとフリードリッヒの兄弟狙いでいってみるか。先ずは、ミハイロビッチとリフリードが本当に存在するか確かめなきゃね!


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― 新着の感想 ―
[一言] 主人公じゃ無い転生キャラはゲームとよく似た世界だと考えずにストーリー通りに進めようとして破滅することが多いがジュリエッタはどっちになるか >ハッピーエンドは悪役令嬢を追い出して2人で侯爵家…
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