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デート フリードリッヒ 

「デート」のフリードリッヒ視点です。


ブックマーク、評価、誤字脱字訂正ありがとうございます^ ^


侍女のユリ 別で書いています。宜しかったら是非!

https://ncode.syosetu.com/n4203gk/1/

 知り合いの店にマリーを連れて行く。今日は、女将さんに頼んで、定休日に店を開けてもらった。流石に今の格好のマリーを連れて市井の洋服店には入れない。


 店に着くとマリーが嬉しそうに声を上げた。


「わぁー、可愛い」


 これだけで、この店に来たかいがあった。


「気に入ってくれたみたいで良かった、前、同僚が奥さんの誕生日プレゼントを買う時に付き合わされた店なんだ。その時、いつかマリーと来たいと思ってたんだ。」


 この店は、若い婦女子に人気らしい。よく、婚約者や嫁の居る騎士団員がプレゼントを買うのに利用している。俺もよく買い物に付き合わされて、ちょくちょくここに来ることになる。


 外で食事した帰りに、寄っていいか?って聞かれると流石に断れないしな。


「ありがとうございます、私、この店気に入りましたわ。」


 同僚が真剣に服を選んでいる気持ちが今ならわかる。これも、あの花柄もマリーに似合いそうだな。


「マリー、どんな服が好き?この水色のワンピースも似合うし、こっちの、小さな花柄のもいいな」


「実は、私、市井の流行がわからないんですの。」


 困ったようにマリーが呟いた。

 

 そうだよな。深窓の御令嬢だもんな…。市民の服なんてこんな間近で見る機会があるはずがない。


「じゃあ、俺が選んでもいいかな?」


「はい、宜しくお願いします。」


 いろいろ手に取りマリーに当ててみる。ふと、水色のコットン生地に小さな赤い薔薇の刺繍がスカートの裾の所に一周ぐるりと施してあるワンピースが目に付く。首元は白い丸襟で前開きの包み鈕になっており、腰には後ろに結ぶワンピースと同じ生地のリボンがあり、このリボンで締めてウエストを調整する造りだ。


「よし、これにしょう。これを着てみてくれ。女将さん、これ試着していいかな?」


「いいよ、奥の部屋を使って。」


 マリーが、ユリを伴ってこの店の女将さんに案内された奥の部屋に入って行くと女将さんが声をかけてきた。


「しかし、えらく、別嬪さん連れてるじゃないか。そりゃ、そこら辺の子がいくら騒いでも靡かないわけだね。しかし、相当いいとこのお嬢様だろ。この店に侍女付きで来た娘は初めてだよ。大丈夫なのかい?」


「わかってるよ。身分不相応なのは、でも、恋い焦がれた相手をやっとモノにできるチャンスなんだ。幸いにも、彼女の両親は前向きに考えてくれてるからね。後は、他の周りと。一番重要な彼女の気持ちかな?」


「じゃあ、頑張り所だね。私から、さっきのワンピースにあうこの靴をあげるよ。この前の礼だよ。しっかり気張んな」


 女将さんは、カウンターの下から木の箱を出すとその中から、水色の生地に真っ赤な薔薇の刺繍の入った靴を出すと、さっきの曇った顔から一変、ニカッと笑いフリードリッヒの背中を豪快にバシッと叩いた。


「ありがとう」


 フリードリッヒは、肩を押さえて苦笑いをうかべる。


「しかし、鉄仮面だっけ?あんたの二つ名、それが彼女といると、まぁ、そこらの娘達に見せてやりたいよ。全くなんだいずっと、ニヤニヤしてまるで別人だね。」


「仕方ない、ずっと、彼女が産まれた時から彼女にしか興味がないんだから。」


 女将さんは、呆れるように重症だわこれはと溜息を吐いた。


 ユリが奥の部屋から出て来て、入り口近くに陳列してあった青いリボンを手に取る。


「女将さん、これ下さい。後日、リマンド侯爵家まで請求書をお願い致します。」


「わかったよ。リマンド侯爵家に請求すればいいんだね、何だか高級な店の店主になった気持ちだよ」


 女将さんは冗談ぽく言う。


「女将さん。頼んでた通り、この侍女と裏手に停めてある馬車の御者を待たせて欲しいんだ。」


「いいわよ、それくらい。」


「ありがとう御座います。フリードリッヒ様にいわれてお菓子とお茶をお持ち致しましたので、後で入れさせていただきますね」


 女将さんは口を大きく開き手を当て目を見開く。お菓子など一生平民の口に入るものではない高級品だ。それも、侍女にお茶を入れて貰えるなんてそんな機会があるのは、大きな商会の会長とその代理くらいだ。


「お菓子かい?それも侯爵家の?そんな上等なもの頂いていいのかい?それも侍女様にお茶を入れて貰えるなんて、何だかお貴族様にでもなった気分だよ」


 夢のようだ、一生に一度あるかないかの贅沢だよと目を丸くしたまま飛び上がらんばかりだ。


「そんなに喜んでいただけたら、私も嬉しいです。では、お嬢様の所へ行きますね。」


 ユリは女将さんの反応に嬉しそうにニコニコして足早に奥の部屋へ戻って行った。


「本当にあのリマンド侯爵家の御嬢様なのかい?」


 女将さんは今日は驚いてばかりで心臓に悪いよと椅子にへたり込んだ。


「ああ、この国一番の御令嬢だ」


 うっとりと呟くフリードリッヒとは逆に、女将さんは疲れた様子で背凭れに身体を預けた。


「ははは、あんたと知り合わなきゃ、言葉を交わすことなんて一生無い相手だよ。そりゃ、ビックリする程お綺麗なはずだわ…。しかし、リマンド侯爵家に請求書って、どうやって書けばいいんだい。宰相閣下様の御自宅だろ?」


「さっきの侍女に聞いて、お茶しながら書いて持って行って貰えばいいよ」


「そうするよ、彼女いい人そうだしね」


 女将さんは、がはははと豪快に笑った。

広告の下の⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎で評価して頂けると嬉しいです。


本日18時ごろもう一度、投稿します。

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